連載 下剋上受験

中学受験組の卒業式|桜井信一コラム「下剋上受験」

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2015年10月01日 桜井信一

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桜井信一ブログ『父娘の記念受験』で過去に掲載されていた記事から、一部を編集して掲載しています。この記事の内容は 書かれたものです。

秋に運動会を実施する小学校が多いようで、今は運動会のことであたまがいっぱい。

でもよく考えると、6年生にとっては小学校生活もあと半年ないのです。

小学校の入学式のことを思い出すと、何だか不思議な気分。

「あっという間でしたね~」

成長を強く感じる時期だと思うのです。

さて、そんな卒業式。

中学受験組にとっては、受験結果を受けて卒業式を迎えることになります。

皆様は、先を予想するタイプでしょうか。
それとも、あえて考えないようにするタイプでしょうか。

卒業式の我が子はどうなっているのか。

考えると怖くなります。

最悪の事態だけは避けたい。

だから無謀な挑戦を避ける人も多いのでしょう。

出来ない単元は未解決のまま。
かといって具体的な策は無し。
もう努力くらいしか思いつかない。

こうして本当はごぼう抜きの条件が揃いまくっているのに、やはり同じ道になるんだと思います。

飛躍的に偏差値を伸ばした、ある保護者の方が仰りました。
「すぐに結果にあらわれないものですからずっときつかった」

「今はどうですか? もう一安心ですか?」

「いえいえ、まだ安心できません」

そうやってどこまでも安心できないのです。

さあ、あとわずかな期間を残して、中学受験の結果がでる。そして卒業式を迎える。

娘が言ってました。
「卒業式の日、わたしはどうなってるのかなあ」

不安そうなその顔に向けて私は言ったのです。
「みんなさようなら、私はちょっと違う世界へ行くからね、うっしっし」となるか、「これからも仲良くね」となるか、このわずかな期間が決めてくれる。自分で決めることが出来るということなんだ。

でもね、中学受験する子が多い小学校よりマシだぞ。

「まあ・・・・、そだね」と言いながら、まったく気休めになっていませんでした。

不安なのでしょう。

でも、卒業式は必ずやってくるのです。

よく覚えています。
久しぶりに髪の毛をちゃんと結んで、教室の中央付近で先生の最後の話を聞いていた透き通るような明るい顔を。

私はその顔を見て心の中で思いました。

「さあ始まる。この子の本当の人生が始まる」

まだ桜蔭不合格のキズが癒えていない私でも、その日だけはなぜか娘の将来が明るくなる気がしました。

敢えて考えないようにしてきたのかもしれません。

でも今は、大学生になった娘を強くイメージすることにしています。

そして、老いた私も何となくあたまに浮かぶ。

考えないようにしているのはただひとつ。

老いた妻の姿です。

2015.10.1 am 7:00

桜井信一

※記事の内容は執筆時点のものです

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