連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

子どものやる気を引き出すほめ方とは|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年3月07日 石渡真由美

「子どもはほめて伸ばしましょう」という教育法が世の中に浸透しています。でも、私は「ほめて伸ばす教育法」にはいささか懐疑的です。

なんでもほめると、現状がわかりにくくなる危険性がある

実際、「ほめて伸ばす教育」を実践した結果、成績が上がったというお子さんもいるでしょう。人はほめられると喜びを感じ、それが次なる目標へのモチベーションアップにつながります。

しかし、ほめられる状態が長く続くと、人はそれに慣れてしまい、効果が薄くなってしまう危険性があります。また、「今の自分の本当の実力がどのくらいなのか」も把握しづらくなってしまいます。

確かに「ほめて伸ばす教育」は、幼少期には効果があります。小学校4年生くらいまでは、学習内容も比較的簡単でわかりやすいものが多いので、「ほめ」が効果を発揮して、学力もグングン伸びていきやすいでしょう。

しかし、5年生くらいになってくると中学受験の学習内容は格段に難しくなり、多くの子ども達は壁にぶつかります。すると、子ども達のほめられる機会はグンと減り、モチベーションが上がりにくくなって伸び悩んでしまうのです。

幼少期の頃、ほめられ続けて育った子は、その現実を受け止め切れず、自分のプライドを守ろうとして、難題から目を背けてしまうのです。こうした子ども達は困難に立ち向かっていくことができません。

「ほめ」をむやみに続けてしまうことで、本当に伸びてほしい小学校高学年にかえって伸びるチャンスを子ども達から奪ってしまいかねないのです。

人が成長するためには、「今、自分は何ができて、何ができないのか」を客観視することが不可欠です。この「自分が理解していないことを理解する」能力のことを「メタ認知能力」といいます。

本当はできていないのに、これまで周りからちやほやされ、自分はなんでもできると勘違いしている子どもは、自らの弱点に気づくことはできませんし、それを克服するための努力もしないものです。

そういう子は、人のアドバイスを聞こうとせず、地道に頑張ることを嫌がります。そのため、本来なら大きく伸びていく小学校高学年の時期に、伸び悩んでしまうのです。

ほめるときは具体的に伝えることが大事

では、「ほめない方がよいのか」といえば、それも違います。大切なのは「量とタイミング」です。ほめすぎはよくありませんが、まったくほめないのは子どものやる気を低下させます。

よく親御さんは、お子さんの成績が上がると「すごいじゃない!」とほめます。しかし、そうやって結果だけを見てほめると、成績が下がったときに、子どもを否定することになります。すると、子どもは「お母さんは成績がいい時の私だけが好きなのだ」と思い込んでしまいます。

そうならないためには、結果を評価するのではなく、そこに至るまでの努力や途中経過を認めてあげることが大事です。たとえば「前回から今回のテストまでの1ヶ月間、計算問題集を頑張ってやったね」とか「漢字練習をしっかりやっていたから今回は前回よりもできているね」といった具合です。

また同じ「ほめる」でも、結果に対して漠然と「今回はよかったね」とほめるのではなく、「今回は問1〜問2まで全部正解だったね。落ちついて計算できた証拠だね。朝の計算練習を頑張った成果が出てよかったね」といったように、具体的にほめてあげましょう。

そうやって、今のわが子を認め、それがうまくいったときにほめてあげると子ども達の心にも響き、「次も頑張ろう」という気持ちになるものです。

ほめることが見つからないときは?

では、ほめることが見つからないときはどうしたらいいのでしょう? 例えばテストで計算ミスが多発し、前回よりも点数が下がってしまったとき、ついそこを指摘したくなります。

しかし、そんなときでも、まずはひとつ良いところを見つけて、ほめてから指摘に入るのがいいと思います。そのほうが話を聞こうという姿勢になるからです。そして、最後に軽くほめて気持ちを前向きにさせてあげるといいですね。

「計算問題は前回よりミスが1問減ってよかったね。でも、このミスは全部くり下がりのミスだね。慌てるとつい、くり下がりを間違えるクセがあるから、気をつけた方がいいよ。お母さんは○○が毎日頑張って勉強しているのをちゃんと知っているから、うっかりミスで悔しい思いをしてほしくないの」

といった感じです。

このように、「ほめる」→「指摘する」→「ほめる」とサンドイッチ方式で伝えてあげれば、相手に嫌な思いをさせることなく、伝えたいことを伝えることができます。つまり、「ほめる」にも「指摘する」にも効果的な伝え方をしてあげることが大事なのです。

具体的にほめたり指摘したりすることで子ども達の「メタ認知能力」は向上します。その方がただ漫然とほめたり叱ったりするよりもずっと、子ども達の成績アップにつながりやすいのです。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。