連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験から、子が得るもの、親が得るもの|親子のための、「探究」する中学受験

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2019年8月08日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

人生で一度きりの「中学受験」。子どもたちがこの体験をすることにはどのような意味があるのでしょうか。この体験からどんなことが得られるのでしょうか。また、わが子が中学受験を体験することで親が得るものとは何でしょうか。大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に聞きました。

知的好奇心と中学生活の充実をかなえるもの

中学受験で得られるもの、わかりやすいポイントは3点あると思います。

ひとつめは、知的好奇心の充足。中学受験のための学習内容は、学校のカリキュラムと比べるとはるかに幅広い言葉や分野を扱っています。学校の勉強のその先を見せてくれるというイメージでしょうか。知識欲の強い子や、学校の教科書では物足りないという子たちにとっては、好奇心を充足させてくれるものになるわけです。運動が苦手というタイプの子に勉強面からの自信を与えてくれる場合もありますね。

こうした点は中学受験のいいところ。ただ、あくまで個人の性格や成長段階によるので、誰でもこのパターンになるわけではないと、しっかり理解しておくべきです。

ふたつめは、中学校の先取り学習ができること。中学受験の知識は算数を除いて中学校での学習内容がベースになっているので、「受験勉強=中学校の先取り学習」になり得る点です。中学生活は勉強と部活の両立に加え、内申点なども高校進学のために重要視しなくてはならず「大変だ」という声が多いですが、たとえ公立中学に進学するとしても、中学受験の勉強をしておくことで、学習や生活に余裕を持てるという点もメリットですね。

「受験算数」が地頭をきたえる

三つ目のポイントは算数の力を強化できること。

「受験算数」という教科は特殊で、中学受験をしないと触れることがほとんどないのですが、ニュートン算だとか、つるかめ算だとか、受験で出合う特殊算は地頭をきたえるにはよいツールです。公式を暗記してパターンに当てはめて解くような方法では考える力はつきませんが、パズルのようにその場にある情報だけでいかに解くか、よりよい解法は何か、自分で考えて探ることで本質的に考える力がつくからです。

また、解き方のバリエーションに触れ、多くの道があると知ることは、受験算数を学ぶ大きなメリットだと思います。この先社会に出てからも、目の前にある情報から解き方を見つけ出すという力は重要です。マニュアルに沿うのではなく、自分で試行錯誤して工夫しながら答えを導く「問題解決力」をきたえるという点で、受験算数から得られるものは多いといえるでしょう。

親も子も、自己アップデートできる

ここまで中学受験のメリットを述べてきましたが、「中学受験をしたほうがいい」と言いたいわけではありません。

最適な道は、人それぞれです。子どもの個性や成長度合、家庭環境などは人によって違うので、中学受験をしたほうがいいかどうかも人による。そこは理解していただきたい点です。

中学受験をしなくても、たとえばピアノやスポーツに打ち込んでいるとか、昆虫を集めるのか好きだとか、何でもいいのですが、子どもが「楽しい」と感じられるとりくみから探究的に学べていれば、受験をしようがしまいが、子どもにとって非常に意味のあることです。

探究的に学ぶとはどういうことか。一言でいえば、何かを経験したときに「振り返りができるか」なんです。振り返りがしっかりできると、たとえばうまくいかないことがあっても「なぜできなかったのだろう」「どこを改善すればうまくいくだろう」と次につながる思考ができ、どんどんアップデートしていける。自分で考え、工夫して進んで行く力がつくわけです。

受験勉強も同じです。

学校では出合わない問題が楽しい

できなかったところを振り返り、改善策を探究する

できるようになって嬉しい! 成長実感を持てる

こんなサイクルができれば、テストの点数に関わらず、受験勉強はとても意味のある体験になります。

わが子は「探究的な学び体験」ができているだろうか、その視点を保護者のみなさまにはぜひ持っていただきたい。そうした意識を持って大人が接することで、子どもの力はもっと伸びます。偏差値に一喜一憂することから脱することもできます。親子ともに、中学受験を通して「アップデートする自己」を得てほしいと思います。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

中学受験を考えた時に読む本先生、この「問題」教えられますか?

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