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成績を伸ばすために、理科とどう向き合うか|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2019年11月26日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

子どもが理科に親しみ、力をつけていくためにはどうすれば良いのか? 今回は、理科学習の基本的な心構えを小川先生に伺いました。

「理科は暗記科目」という認識を改めることが必要

理科は学習領域が広く、しかも領域ごとに内容が大きく異なるので、「いろいろなことを覚えなければいけない」と考える保護者の方は多いようです。受験勉強は知識詰込み型になりがちで、植物ひとつとっても、春夏秋冬それぞれの季節に咲く花の名前をたくさん覚えるのが理科の学習だと思われています。

しかし前回お話したように、近年の理科の入試は、暗記力ではなく思考力を測る方向にシフトしています。入試で求められるのは、花の名前をたくさん知っていることではなく、なぜその季節にその花が咲くのかを考えることです。

朝顔は暖かい地方の原産で寒さに弱いため、冬を種子で越し、夏に花を咲かせます。アブラナは暑さに弱いので、春に咲いて夏は種子で乗り切ろうとします。植物のメカニズムをきちんと理解することが入試問題を解くカギになります。

暗記に頼る勉強法では、試験で足をすくわれることもあります。例えば、「音速は340m/秒」と覚えがちですが、「音速は気温が0度のとき毎秒331mで、気温が1度上がるごとに毎秒0.6mずつ増します。では、気温5度のときの音速は?」という問題が出たら、計算するしかありません。「340m/秒」と答えれば不正解です(音速が340m/秒になるのは、1気圧・気温15度の場合)。このように近年の入試問題は、問題文にさまざまな条件が書いてあり、内容を精読できれば、暗記に頼らず答えられるものも増えています。

もちろん入試に向けて必ず覚えなければいけないことはありますが、その量は思っているほど多くありません。子どもにとって暗記は理科が嫌いになる大きな原因です。いろいろなことを頭に詰め込むことから理科学習をスタートするとイヤになってしまい、その後いくら勉強しても内容がなかなか頭に入ってきません。

「あれもこれも覚えないと」と思う保護者の方は、試験で子どもに満点を取らせたい気持ちが強いのではないでしょうか? 満点を目指すのは悪いことではありませんが、教科書や参考書の内容を次々頭に叩き込む作業は、本当の理科学習とは言えません。

私は、入試ではわかる問題を確実に解いて合格点がとれれば良いと考えています。受験生の正答率が6割ぐらいの問題を確実に解いて得点を重ねることが大切です。正答率がすごく低い難問が解けなくても合格ラインに達することができます。

入試理科の勉強は、広く浅く知識を得るのではなく、範囲は多少狭くなってもいいので深く知ることが大事です。問題を解いていて、「これは絶対正しい」「これは絶対違う」と判断できれば得点力が上がります。まずは問題を解くときの柱となる、中心的なことを確実に覚えましょう。

子どもが好きな単元を見つける。実体験を通して力を伸ばす

理科には、植物、動物、人体、天体、気象、電気などいろいろな単元があります。成績を伸ばすためには、一度にたくさんの単元に力を入れるのではなく、子どもが一番好きなものを見つけて、まずその単元の理解を深めることがポイントです。力がついてきたら、次に興味がある単元に取り組み、それができたら次の単元へという感じで得意な単元を増やしていきましょう。

子どもは好奇心が旺盛ですし、自然や動物が嫌いという子はほとんどいません。そう考えると、子どもにとって理科は興味を持って取り組める科目のはずです。好きという気持ちをいかに伸ばすかが大事になります。

理科の成績を伸ばすためには、自然の中で遊ばせたり、動物園や植物園に出掛けたりして、さまざまな経験を積ませましょう。いろいろなものを見たり触れたりするなかで、子どもは「これは何だろう?」「なぜこうなっているのだろう?」と、たくさんの疑問を抱きます。そうした疑問が後の学びで解決すると、「こういうことだったんだ!」という達成感を感じます。この経験を繰り返すことで、「もっと知りたい!」という知的好奇心が育ち、理科を深く理解することにつながります。

講演会や体験イベントなどに出掛けて専門家の話を聞くことも、理科の正しい知識を得るのに大いにプラスになります。内容が全て理解できなかったとしても、見たり聞いたりしたことが子どもの記憶に残っていると、その後勉強したときに知識がつながっていきます。

近ごろは家庭での理科学習にインターネットを利用するケースが増えています。ネット上にはさまざまな情報があり、実験動画を見ることもできます。わからないことはなんでもネットで調べてわかったつもりになる、実際は体験していないのに動画を見て体験したと思ってしまう子どもがたくさんいます。ネットを見ることが全くダメではありませんが、実際の経験を通して得られるものとは違うことを認識しておくことも必要です。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。

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