連載 学ぶ力を伸ばす「合格する親子の勉強」

親としてできること―― 子どもたちの未来が明るくなるように|学ぶ力を伸ばす「合格する親子の勉強」

専門家・プロ
2020年10月14日 松本亘正

子どもに「よい勉強習慣」を身につけさせたい。そのために親ができることとは――。中学受験専門塾 ジーニアス 代表、松本亘正氏の著書『合格する親子のすごい勉強』から、わが子の学ぶ力を伸ばすヒントを紹介します。

中学受験には、数えきれないほどのさまざまなドラマがあります。

ここでは、いくつかのエピソードを紹介します。

ある少年は中学受験に挑み、志望校に合格しました。両親は少年の希望を尊重して地元の国立中学ではなく、県外の寮がある学校へ進学させました。

学校のテストでは「満点を取れるんだから見直しして満点を取りなさい」とよく言われていましたが、本人には中学受験塾の成績で叱られた記憶はありません。

模試の算数で17点(100点満点の四谷大塚のテスト)というひどい点数をとったときも怒られませんでした。

12歳で寮生活をはじめ、その後上京して大学に通ったその少年にとって、短い期間ではありましたが両親の教育は貴重な財産となっています。

その少年とは、私のことです。

中学受験を振り返って「無理やりやらされた」と恨んでいる人と、「いい教育を受けさせてもらえた」と感謝する人がいます。

この違いは、合否の結果ではなく、近くにいる大人との関係性によるところが大きいように感じます。

親はもちろんのこと、塾の先生、学校の先生など、周囲の大人たちとどれだけいい関係を築けていたかによって、子どもにとって中学受験がいいものだったのか、つらいものだったのかが決まるのです。

中学でも高校でも大学でも、「子どもにいい教育を受けさせてあげたい」と思う親の思いは同じはずです。

せっかくなら、親子でいい関係を築き、感謝されるような中学受験を迎えたいですね。

*

ある男の子の話です。その子は学校の勉強に、ギリギリついていけるかどうかという状態でした。入塾して半年間、5年生の全国模試の偏差値は25。

自宅で宿題にも取り組めない……。でも塾は大好きで、授業にも積極的でした。

泣きながら家出をしたときも、なぜか塾を訪れました。

そんな子が、6年生になってようやく偏差値40台になり、第一志望の大学附属校に合格したのです。

1月の受験は全敗。そして本命校1回目の受験も不合格でした。

不合格だった本命校では、合格した子は合格証書をもらうため階段をのぼるというきまりがありました。一方、不合格だった子は、掲示板を見るだけで、そのまま帰らなければいけません。

そのとき、ずっと勉強のことを塾に任せて口を出さなかったおかあさんが「次は合格証書をもらうためにあの階段をのぼってほしいな。合格証書がほしいな」と言ったそうです。

このおかあさんの言葉が、その子のやる気を奮い立たせたのでしょう。

そして本命校への2回目の受験。その子はついに合格を勝ち取りました。

親の接し方やひと言が、合否を分けるのだということを、実感した出来事でした。

*

当塾では、中学受験の直前に、壮行会を開くことはしません。

いつもと同じように授業をして、いつもと同じように授業を終えます。そうやって自然体で受験に臨むことが結果につながると考えています。

本番に強い子を育てるのも私たちの役目です。

「気づいたらもう受験がはじまるのか~」
「あと2回で塾が終わりという感じがしない」

そういう言葉を耳にすることもあります。

受験で疲弊することなく、受験をひとつのイベントぐらいにとらえ、そしてきっちり合格させる――。それが私たちの本来の仕事だと思っています。

当塾は4年生前半までは完全に先着順で受け入れています。学校の授業についていくことさえできていれば十分です。3年間あれば、中学受験に向けて責任をもって指導していく覚悟を持っています。実際、いまでは9割近くの生徒が、4年生のうちから通塾しています。

3年間という付き合いは長く、勉強面での課題を見つけることだけではなく、精神面でもサポートすることができます。

学級崩壊がきっかけで小学校に行くのがつらいと思っている子。
友達関係がうまくいかず、小学校に居場所を見つけられなくなった子。
どうしても勉強に向かう気が起きず、気分が落ち込んでしまった子。

こういった子どもたちの相談を受けることもあります。

家庭、学校が大切なのはもちろんのことですが、子どもたちにとって、私たちの塾が「第三の場」になれたらと思っています。

卒業後、学校の様子や試験結果を報告しにきてくれる生徒が多いのもうれしいことです。2017年3月には、卒業生のおかあさまから次のようなメールをいただきました。

このたび、大学受験が無事終了しました。一橋大学商学部に合格し、また私立大学も受験した全学部で合格できました。ジーニアスで学習習慣や勉強の楽しさを教えていただき、吉祥女子中学校で熱心な先生方のもと、6年間過ごせたのがこの結果につながったと思っています。吉祥女子は勉強もきちんと見てくださいますが、決してそれだけではなく、部活も行事も一生懸命取り組みます。先生方も温かく熱心な方ばかりでした。娘に「合うのでは?」と言っていただいた吉祥女子に入学してよかったと心から思っています。

こんなふうに、大学合格の連絡までいただけるたびに、とても感慨深い気持ちになります。

これからの子どもたちは、「大学入試改革」という大きな変革期を迎えます。

知識を問う問題から、思考力や記述力を問う問題へと大学受験が変わっていきます。

それによって、中学や高校で学習する内容も、中学受験や高校受験の内容も、変わっていきます。

知識を知っているだけではなく、自分の頭で考え、問題を解決していく力が求められていくというこれからの時代。一生モノの学力や勉強習慣を小学生のうちに身につけておけば、怖いものはありません。子どもたちの未来が明るくなるように、親としてできることをしていきたいですね。

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※記事の内容は執筆時点のものです

この記事の著者
松本亘正 専門家・プロ

まつもとひろまさ|中学受験専門塾ジーニアス運営会社代表|ラ・サール中学高校を卒業後、慶應義塾大学在学中に中学受験専門塾ジーニアスを開校。現在は東中野・自由が丘・日吉・芝浦港南など、6校を展開している。「伸びない子はひとりもいない」をモットーに、少人数制で家族のように一人ひとりに寄り添う指導を徹底、毎年超難関校に合格者を輩出している。生徒は口コミと紹介だけで9割を超える。これまでののべ指導人数は2200名以上。第一志望校への合格率は一般的に25%といわれるなか、ジーニアスは約60%超の第一志望校合格率を誇る。中学受験だけでなく、高・大受験時、就職試験時、社会人になっても活きる勉強の仕方や考える力の育成などに、多くの支持が集まっている。

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