連載 中学受験との向き合い方

コロナ禍で子供の勉強とどう向き合うのか ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2020年6月03日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

緊急事態宣言が全国的に解除され、徐々に日常に近い生活を取り戻そうとする動きが広まっています。しかし、まだ学校の授業も、塾のカリキュラムも流動的な状況です。わが子の将来を案じる親御さんが多いかもしれません。誰も経験したことのない状況下で、子供の自宅学習を親はどこまで管理すべきなのか、これから中学受験とどう向き合うのか。ここで一度、考えてみましょう。

親は学校や塾の先生の代わり?

このコロナ禍の影響で、子供の自宅学習をフォローしていた方が多いと思います。親はどこまでフォローすべきなのでしょうか。まず意識してほしいのは、親御さんは学校や塾の先生の代わりをしなくてもいいということ。そのうえで大切になってくるのは、観察・記録・対話です。

親目線の気づきを子供に伝える

まずは、さまざまな科目・単元の勉強をしているときに、お子さんがどんな目つき・顔つきで取り組んでいるのか、どれくらい集中しているのかを、観察してほしいです。そのうえで「漢字の勉強では、漢字の成り立ちを自主的に漢和辞典で調べている様子だった」「計算問題はウトウトしながらやっていた」という形で、簡単に記録を残してみてください。

そして、できれば毎日、難しければ週に一度、それを踏まえて親子で対話の時間を設けましょう。その際は記録をもとに不出来を責めるのではなく、対等な立場で語り合うことが大事です。

「漢字の練習に取り組んでいるときはイキイキしているね」「計算問題に取り組んでいるときは眠そうに見えたよ」といったように、「私は○○なように見えた」という親視点の気づきを子供に伝えましょう。

そうすると子供たちからは「漢字の成り立ちを考えていると、なんだか楽しくなってくるんだよね」「数字を見ていると、なんだか退屈な気分になってきちゃうんだ……」といったリアクションが返ってくるはずです。

言葉にすることで、意識を共有してお互いにわかりあえているという安心感を育むことができますし、本人も気づかなかった興味・関心、あるいは苦手意識を意識するきっかけにもなります。

子供の苦手意識が見えてきたときは

観察・記録・対話のなかで子供の苦手意識が見えてきたときは、角度を変えてアプローチしてみてはいかがでしょう。たとえば、お子さんが鎌倉時代の歴史に苦手意識を持っている場合。「お父さん、鎌倉時代の話は大河ドラマで見たことがあるんだけどね……」という語り出しで、子供が興味を持てるような豆知識を披露してもいいですし、一緒にドラマを見てみるのもいいかもしれません。部分的な知識と知識のつながりや、「当時」と「今」のつながりが感じられると「わかる」のきっかけになる場合があります。

もうひとつ、おすすめしたいのは、子供にその日学んだ内容を教えてもらうこと。「今日はどんな勉強したの? お母さんに教えてよ」というように、ときには子供の生徒になってみましょう。そうすると、子供は相手にわかってもらえるように語り直す、伝え直すことになるので、とてもいいエクササイズになります。

「なるほど。つまり2分の1って半分ってことだもんね。包丁で半分に切ったリンゴも2分の1ってことだよね」などと語ることができれば、知識を日常生活にリンクさせたり、持っていない知識を引き出したりするチャンスにもなります。

一日のスタートを自分ではじめる

学校がお休みでもそうでなくても、親御さんにぜひやってほしいことがあります。それは、子供に生活の自律を促すことです。たとえば朝、親に起こされるのではなく、「自分の一日は自分ではじめるんだ」というトレーニングがあります。

子供だって夜更かしをしたい日や、のんびりと昼まで寝ていたい日があったりもするでしょう。それでも目覚まし時計を自分でかけて、決まった時間に起きるように促してあげてください。学校はもちろん、塾でも、会社でも始まりの時間は定められていることが多いものです。ここでトレーニングを積んでおけば、将来にも活きてくるでしょう。

大切なことは、「自分のことは自分でどうにかできる」という自分ごと意識と自己効力感です。新型コロナウィルスと共存する時代においても、「『気を緩めるな』と言われるから、気を緩められない」ではなく、「気は緩め、身体も緩め、行動は律する」という分別と自律こそが、長期的に実行可能で有効な戦略です。この訓練はすぐにはうまくいかないかもしれません。しかし、じっくりと取り組んでほしいと思います。

カリキュラムの遅れ、中学受験をすることの不安とどう向き合うか

緊急事態宣言の間は、学校のみならず、多くの塾が休校となりました。この間、消化されるはずだったカリキュラムはどこで埋め合わせしてもらえるのか、今年の入試は大丈夫だろうか ―― このような不安を抱えている親御さんも多いでしょう。こうした不安とどう向き合うべきなのでしょうか。

「もう終わったこと」と「まだはじまっていないこと」を考えすぎない

もう済んでしまった授業、コロナの影響でおこなわれなかった授業に関しては、深く考えすぎる必要はありません。また、これからの中学受験がどうなるのかという点は、親御さんだけでなく、受験関係者にとっても、そもそも各中学校の入学試験担当者にとっても、明確なことはわからないのです。考えても仕方がないことは考えすぎないのが一番です。

ただし「○○になったらどうしよう」という不安で終わるのではなく、「○○になったらこうしよう」というように、シミュレーションをしておくのは悪いことではありません。情報に踊らされるのではなく、正しい情報をもとに備えをしてほしいですね。

そのうえで目を向けてほしいのは、今日、今週、今月、何をするかということです。以前、目標設定に関する記事でも解説したように、「具体的な行動で示せる」「必ず実現できる」「どこまで進んだか測定できる」「期限を示す」というポイントに気をつけながら、目標をつくって邁進するのです。霧が濃くて先が見えない今だからこそ、足元をしっかり踏みしめて着実に前進してほしいですね。そうすれば、今までできなかったことができるようになっていることに、きっと気づけるはずです。

自分を律する機会が多い2020年

人は不安が大きくなると、自暴自棄になったり他人と衝突したりと、精神的に不健康な状態になります。不安を必要以上に大きくしないために、少しでも毎日を気持ちよく爽やかに過ごしていただきたい。そのためには、今できることを着実にこなし、抜けるところで息を抜き、気分転換を怠らないことが大切です。

中学受験生たちは例年以上に自分を律する機会が増えています。つまり、成長できる機会がたくさん転がっているということです。将来、2020年を親子で振り返って、「苦しいときでも、本当によく頑張っていたね」と語り合うことができたら素晴らしいと思いませんか。この一年の経験は子供だけでなく、親にとっても財産になるかもしれません。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。「一家にひとり、一課にひとりのコミュニティ・カウンセラー」を育てることを目標としている。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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