中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

今一度考えたい受験校選びの重要性と、一貫校で過ごす6年の価値|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年2月17日 石渡真由美

2021年の中学入試も終わり、受験生は進学先が決まってホッと一息ついている頃でしょう。中学受験で第一志望校に進学できる子は、全体の2~3割程といわれます。第一志望校から合格を得られなかった場合は、第二志望以降の学校へ進むことになります。

「偏差値の高い学校がいい学校」とは限らない

では第一志望校に通えなかった子は「中学受験に失敗した」のでしょうか? いえ、そんなことはありません。きちんと納得して受験校を選択できていれば、たとえ第二、第三、第四志望の学校だとしても「いい学校に決まって良かったね」と考えるべきです。

なかには親の見栄やプライドで上位校しか受けさせない家庭があります。そうした家庭では「偏差値が高い学校がすなわちいい学校」と思い込み、それ以外の学校に受験する意味はないと、強気な受験をしたりします。偏差値に囚われすぎている家庭はまだまだあるのです。

わずか12歳の子どもが挑む中学受験です。最後の最後まで何が起こるかわかりません。塾や模試で「合格可能性が高い」とされていた学校が、まさかの不合格になることもよくあることです。

特に最上位校と呼ばれる学校は受験機会が1回しかないので、そのたった1回に3年間あるいは4年間の努力を賭けることになります。当然のことながら失敗してしまうこともあるでしょう。そういったケースを想定して、多くの塾では、受験校の偏差値に本人の持ち偏差値プラスマイナス10くらいの幅を持たせるようにアドバイスします。

しかし、それでも強気な受験をしてしまうご家庭はまだまだ多いように感じます。そして滑り止め校以外の学校に合格できずに受験を終え、お子さんが劣等感を持ったり、勉強嫌いになってしまったりすることがあるのです。そうなると辛い思いをするのは、お子さん本人です。

私は、お子さんに中学受験をさせようと思ったら、親に覚悟が必要だと思っています。

大手塾の広告には開成合格○人、麻布合格△人など華々しい結果が並び、そこに通わせれば、あたかも合格できるような錯覚に陥ってしまいます。しかし難関中の受験倍率は約3倍。3人のうち2人は不合格になる現実を、知っておかなければなりません。わが子が不合格になることも十分にありうると知ったうえで、覚悟を決めて挑んで欲しいと思います。そして、その一方できちんとリスクを考えて、受験校の幅を持たせるおくことを強くおすすめします。

そもそも「偏差値が高い学校がいい学校」とは限りません。「いい学校」の条件とはいったい何でしょう。お子さんにとって居心地のいい学校かどうかも「いい学校」の条件となりえます。居心地の良さは、お子さんの性格や適性、学力によって変わるものです。だからこそ受験校選びは、実際にその学校へ足を運び、「この学校にうちの子が通うようになったらどうだろう? 6年間楽しく過ごせそうかな? 伸びていきそうだろうか?」という視点で考えることが大切なのです。

あるいは近年のグローバリゼーションの考え方から、「英語教育に力を入れている学校」「留学制度が整備されている学校」などが「いい学校」の条件として挙げられるようです。こうした条件を整えているかどうかは偏差値の高低とはほぼ無関係で、いわゆる中堅校と呼ばれるような学校でも、文部科学省からSELHi(スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール)に認定されている学校もあります。

やり切った感が得られるように。入試は受験する順番も大事

行きたい学校をリストアップしたら、どういう順番で受けるかを熟慮する必要があります。

私は第二、第三志望の学校は、できるだけ早く合格をとるようにアドバイスしています。前述したとおり、中学受験で第一志望校に合格できる子は、全体の2~3割程しかいません。多くの子がそれ以外の学校へ進学することになります。

どんな学校でも、初めて合格を手に入れたときは、嬉しいものです。たとえば第三志望の学校で最初の合格がとれたとします。その子にとっては第三志望かもしれませんが、早い段階で合格をひとつもらったことは、大きな自信になります。モチベーションが上がれば、その後に続く第一、第二志望校の試験で「合格できるかもしれない!」と思い切って挑戦できます。

そして勢いに乗ったまま、実力以上の学校に合格できることもあります。または、思い切って挑戦してみたけれど、不合格だったという場合でも、「今ある力を出し切ったぞ」という満足感を得ることができます。

一方、第一志望校からスタートし、第二、第三志望校と偏差値の高い順で試験を受けていき、不合格が続いた場合、精神的に大きなダメージを受けます。その後、第三志望の学校で合格できたとしても、「私は第三志望の学校にしか受からなかった」という感覚が残り、受験に失敗したと思い込んでしまうのです。

両者は同じ第三志望校に進学することになりますが、入試で満足感を得られたか、挫折や失敗の感覚が残ったかによって、その後の勉強へのモチベーションも変わってきます。どちらが良いかといえば、もちろん前者でしょう。

親世代はマンガや映画のような「サクセスストーリー」をわが子に求めがちですが、残念ながら不屈の闘志を燃やして6年間を過ごしリベンジできる生徒はごくわずかです。挫折感だけが残りその後の学習に対する意欲が湧き上がって来ない、あるいは受験失敗がトラウマになってしまうことはできる限り避けるべきなのです。ですから、試験を受ける順番は慎重に検討すべきです。

中高6年間を思い切り楽しんで欲しい

第一志望校に合格することを目標に、一生懸命勉強してきた。でも第一志望の学校に進学することができなかった……。確かに辛いことです。しかし、中学受験でお子さんの人生が決まってしまうわけではありません。

親御さんがガッカリしすぎてしまうと、お子さんは親の気持ちを汲み取って、必要以上に責任を感じてしまいます。塾では少しでも偏差値の高い学校に合格した生徒を優遇しますから、受験がうまくいかなかった生徒の挫折感たるや、想像を絶するものがあります。そのまま中学校生活に突入し、学校生活を楽しめなくなってしまうようなことは避けるべき事でしょう。

第一志望校に通えなかったとしても、中高一貫校に進学するのなら、その6年間を大いに楽しめるようにして欲しいと思います。中高一貫校のメリットは、多感な時期を高校受験で中断されることなく、部活動に熱中したり、やりたいことを見つけてチャレンジできたりすることだと私は思うのです。

中学受験で思うような結果にならなかったからと、すぐに塾に通わせて大学受験でリベンジをさせようとする親御さんもいますが、私は反対です。中高の6年間、大学受験でリベンジすることを目標に勉強ばかりしていたら、もし大学受験で目標にしていた学校に合格できなかったときのショックは測り知れません。

私は中学に進学したら6年先の大学受験のことは一旦頭から外して、素敵な体験をたくさんして欲しいと願っています。部活に情熱を傾けるのもいいでしょう。恋愛も大いにしてほしいと思います。やりたいことをたくさんやった後に、自分の進みたい道を考える。そこから大学受験に向けて気持ちを入れ替えていけばいい。大事なのは中高6年間をどう過ごすかです。むしろ充実した中学高校生活を送った生徒ほど、大学受験やその後の人生においてうまくいく傾向が強いものです。

中学受験で第一志望校に合格した子も、第二、第三、第四志望校に進学することになった子も、その学校に入学したらみんな同じスタートです。「自分は第○志望の学校へ行くことになった……」といつまでも引きずっていては、楽しい学校生活を送ることはできません。気持ちを新たに、中高6年間を存分に楽しんで欲しいと願います。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

合わせて読みたい