中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

成績が順調に伸びる子と不安定な子の決定的な違いとは|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年7月21日 石渡真由美

同じ時期に塾に通い始めたのに、成績がグングン伸びる子と、不安定な子、まったく成績が伸びない子がいます。その違いは何なのでしょうか? 伸びていく子の特徴を3つのポイントに沿って解説します。

順調に伸びていく子は、メタ認知能力が高く、弱点を捉えている

遊びたい盛りの小学生を勉強に向かわせるのに苦労している親御さんは少なくないと思います。一般的に中学受験は、精神年齢が高い子の方が有利と言われています。精神年齢が大人に近いほうが感情に流されにくく、「遊びたいけど、受験勉強も大事。やらなきゃ!」などと自分を律することができるからです。

こういった精神年齢が高い子は、メタ認知能力も高い傾向にあります。メタ認知とは、見たり、聞いたり、覚えたり、理解したり、考えたりといった認知的活動を、一段階高いところから自分で客観的にモニタリングすることです。メタ認知能力が高いと、自分の学習状況を振り返ったり、評価したりできます。自分の得意・苦手を細かく把握していて、次のテストで点を上げるにはどうしたらいいかを考え、学習計画や勉強のやり方を調整できるのです。

では、メタ認知能力が低い子と高い子とでは具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

たとえば算数に課題を抱えている子がいるとしましょう。メタ認知能力が低い子の場合は自分の状況について「自分は算数が苦手」などと、ざっくりした捉え方をします。しかしひとくちに算数といっても、中学受験で学習する算数の単元はさまざまあるわけです。冷静に点検していくと、「算数全般が苦手」というよりは特定の単元が苦手なだけであったり、部分的にできていないだけだったりすることがあります。あるいは、途中まではできているのに、計算間違いなどによって最終的な解答を間違えたことを、過度に悲観的に捉え「自分はとにかく算数が苦手」と思い込んでいるだけの場合もあります。

ではメタ認知が高い子の場合はどのように考えるのでしょうか。たとえば「自分は『旅人算』の“出会う旅人算”と“追いつく旅人算”はできるんだけど、“池の周りを逆向きに回って途中で出会う旅人算“が苦手」といったように、自分の状況を詳しく捉えることができます。苦手を明確に把握しているから、そこが理解できるようになれば、点が上がることがわかっているのです。そのうえで対策を考えたり、先生からアドバイスをもらったりして、練習を積めば成績を伸ばすことができます。「算数が苦手」「算数は嫌い」などのように大雑把にとらえている生徒は、自分は何が理解できていて、何が理解できていないのかがわからず、適確な対策をとることも、質問してアドバイスをもらうことも難しくなります。自分で自分の弱さを知っているというのは、伸びていくための道筋を獲得するうえでとても重要なのです。

では、どのようにすればメタ認知能力を伸ばしていけばいいのでしょう。ご家庭でできる重要なポイントは、普段の生活からお子さん過度に子ども扱いしないことです。「小学生だからこんなこと言ってもしかたないだろう」「この子にはまだ無理」と決めつけず、できるだけ大人の対応・対話を心がけましょう。そうすることで、少しずつ子どもの精神年齢が上がり、それにともなってメタ認知能力も向上していきます。

学習のルーティンが出来上がっているか

中学受験対策に日々の学習は欠かせません。成績が順調に伸びていく子は、学習のルーティンが出来上がっているケースがほとんどです。“当たり前のように”勉強する習慣がついているわけです。他方、成績が不安定な子や、伸びていかない子は、ルーティンが出来ておらず、毎日のようにお母さんから「勉強しなさい!」「宿題は終わったの?」などと小言を言われます。小言を言われてやる気がアップする子など皆無でしょう。自分から勉強が始められない状態が続けば続くほど、中学受験はおろか、高校受験や大学受験でも苦労することになります。

学習のルーティンを身に付けるにはやはり予定・計画が大切です。「何時から何時まで○○について□分勉強して、そのあと…」といったように、やるべきことは予定に組んで可視化しましょう。「今日は苦手科目を一日のどこかで1時間半くらい勉強する」といったような大雑把な予定では、なかなかうまくいかないものです。かっちりした計画が決まっていないと、遊びやゲームを中断できず、いたずらに時間が過ぎていくだけです。自分を律することがまだできない小学生こそ、学習スケジュールはきちんと立てておくべきなのです。

ここで親御さんに気をつけていただきたいのが、「予定を決めたんだから、やって当前」と思わないことです。いきなり完璧にできるわけではありませんから、予定通りにできたらそれはきちんと称えてあげることです。「明日も頑張ろうかな!」「明日もやるぞ!」という気持ちの良い状態、達成感のある状態にさせることが大事です。そういったことをくり返すことで、学習習慣が身に付くようになります。ルーティン化されると、親御さんの負担も小言も随分少なくなるでしょう。

受験生の親の役割は子どもに自信を与えること

大手進学塾に通うと、成績順でクラスや座席が決まります。こうした競争の世界では「悔しい」という感情にきちんと向き合えるかが重要です。

成績が順調に伸びている子は、自分の成績が上がれば喜び、下がれば悔しがります。そして「なぜ今回は成績が下がってしまったのだろう?」と分析をします。間違えたところを見直し、解説を読んで理解し、「次は間違えないようにしよう!」と修正していきます。そうできるのは、「悔しい」という気持ちにきちんと向き合っているからです。

成績が不安定な子の場合は、成績が良いときと悪い時の両方を経験していることになります。そのときによくあるのが、「今回はたまたま悪かっただけ」と結果を軽視しがちなことです。あるいは得意な教科は頑張るけれど、苦手な教科はあまりやらたがらないといった具合に、“やる気”にムラがあったりします。中学受験は4科の総合点で合否が決まるので、できるだけ苦手が少ないほうがよいのです。

成績が低迷している子は、勉強に対する自信をなくしていて、「どうせ僕なんて……」などとはなからあきらめてしまう傾向があります。成績が悪い状態が続くと、どうしても劣等感から目を背けたくなり、次第に頑張ること自体をやめてしまいます。そうなりはじめると、成績は上がっていきません。

自信をなくしている子には、成功体験をさせることが先決です。たとえば、次の模試に向けて保護者の方も目いっぱい子どもに時間を使ってなんとか頑張らせ、少しでも成績を上げるなどといった取り組みが必要です。「やったら良くなった」という経験をさせて、それを称える。子どももやってできたことを自覚する。こうした経験を積んでいくことで、自信を取り戻していきます。

このように考えると、子どもの成績アップには、自己肯定感を下げないことが大事だとわかります。成績が順調な子は「自分ならできる」「どうにかできそうだ」という自信があります。自信があるから、目標に向かって多少苦しくとも頑張ることができるのです。

子どもの自己肯定感を高めるには、親御さんは基本的にポジティブな声かけを心がけることです。子どものミスに対して「何でこんな問題を間違えたの!」と責め立てるスタイルが中心だとなかなか伸びていきません。完璧でなくてもOKです。途中までできているところでもよいので、やってできている点に気づいたら、お子さんを称えてあげましょう。そのうえで、できなかったところは「どうしたらよかったと思う?」などと聞いてみるのです。うまく答えられなかったらヒントをあげ、できるだけ本人に気づかせるようにナビゲートする。そうすることで、メタ認知能力が鍛えられます。

そして子どもの成績(結果)については、親御さんも「算数がダメ」「国語がダメ」などと言ったように、大雑把な否定の言葉を言わないことです。どんな成績でも、まずはできているところを確認し、子どもの頑張りを認めてあげましょう。そしてできていない部分はできるだけ細かな分析をして、具体的なアドバイスをしてあげてください。中学受験における親の役割は、子どもの結果に対して叱咤することではなく、途中途中のいいところを見つけて、認めて、子どもに自覚させていくことです。

成績が順調に伸びていく子の特徴

  • 自分はどこが弱いかきちんと知っている(メタ認知能力が高い)
  • 学習のルーティンが出来ている
  • 「悔しい」感情ときちんと向き合える

成績が不安定な子の特徴

  • 単元により得意不得意の差が大きい
  • やる気にムラがある
  • 学習のルーティンが出来上がってない

成績が伸びていかない子の特徴

  • メタ認知能力が低い
  • 劣等感から目を背けがち
  • 自己肯定感が低い

これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。