中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

【タイプ別】都立中合格に欠かせない「親の伴走」とは?|公立中高一貫校合格への道#2

2023年4月19日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは! 公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。
 
書籍『公立中高一貫校合格バイブル』(実務教育出版)や『公立中高一貫校受検にまつわる50の壁』(YELL books)でもたびたび紹介してきましたが、都立中受検には想像以上に保護者の「伴走(ばんそう)」が求められます。

たとえば、記述問題を添削したり、作文で何を聞かれてもいいように親子の会話を通して「ネタ」を探したり、適性検査に頻出の社会課題について資料を集めたり、報告書(公立中高一貫校受検の出願時に必要な書類で、小学校の成績を報告するためのものです。この成績が点数化され、適性検査の得点と合わせて、合否が決定されます) を意識して非受検学年のうちから学校での様子にも気を配ったり……と、保護者が動かないといけないことは多々あります。

塾は強力な味方ですが、倍率の高さからも分かるように、「塾に行けば安心」ということはまずありません。

塾のカリキュラム、お子さんの実力、志望校に必要なレベルを客観的に分析しながら適切なタイミングで学習のテコ入れをするのも、保護者の方の役割です。

とはいえ、これから受検を検討している方にとっては、一体どこまで干渉すべきなのか、どんなサポートが理想なのか、本当にそこまで必要なのか、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

もちろんお子さんの性格によっても必要なフォローは様々ですし、また、合格したご家庭の実例を見ても、伴走の中身は様々です。

何が正解なのか考えれば考えるほど、答えが出ない難題です。

ということで今回は、お子さんのタイプを大きく3つに分け、「向いている伴走」について、紹介していきたいと思います。

1.必要伴走レベル【高】:すべてはその日の気分次第!タイプ

まず紹介するのは、最も干渉を必要とするタイプからです。

経験上、男の子に多いタイプで、ご機嫌なときはサクサク課題を進めていくのですが、ちょっとでも気分が乗らないときや、他に心惹かれるものがあるときには、机に向かわせるのも一苦労です。

丁寧さよりも速度を優先するので、「やっつけ仕事」で目の前の課題を終わらせたり、見直しや検算が後回しになりがちで、ケアレスミスが減らなかったりします。

調子がいいと、「頑張る!」「絶対合格する!」とは言うものの、その発言と日々の努力がなかなか一致しない期間も長く、保護者の方は関われば関わるほど、「本当にこのまま受検させるべきなのか」と頭を抱える方もいらっしゃいます。

中学受験(受検)向きのタイプではないのでは、と考える方も多いですが、中学受験(受検)生の大半は、このタイプです。気分良く勉強してもらうのは日々骨が折れますが、気分が乗りさえすれば勢いよく進められますし、自信がある分野では驚くような高得点を出すこともあり、ラストスパートにも強いです。

このようなタイプの子に向いているのは、自己肯定感を高めつつ、ラストスパートに間に合うレベルまで引き上げるようなサポートです。

あの手この手で気分を盛り立てつつ机に向かってもらっていても、常に保護者主導で学習させ続けると、反抗期も始まって「やらされている」感が募り、親子バトルが激化する火種を抱えることになります。自分で「受検したい!」と言ってはじめた受検だったとしても、それを棚に上げた発言が飛び出すこともしばしばあります。

保護者の方にとって大切なのは、あくまでも、「自分で決めたことを取り組んでいる」「自分で計画し、実践している」という感覚を持ってもらうこと。これにより、少しずつ自分ゴトであるという意識を本人に持ってもらいましょう。

まずは保護者の方が本番までの細かなスケジュールや日々の取り組みなどの戦略立てをしたうえで、その中で、取り組む順序を決めさせたり、何曜日の何時に何を何ページずつ取り組むのか本人に計画を立てさせたりと、そういった細部を決めてもらってください。

たとえると、本人は自分で運転しているつもりでも、大きな流れや進む方向は、保護者の方が後ろから操作している、というイメージでしょうか。

さらに大切なのは、いざラストスパートが始まる時期に、逆算して間に合う立ち位置を、保護者の方が常に意識しておくことです。 時期別の最低限必要なスコア、取り組み時間、内容などについてはまた別の記事で紹介しますが、春から9月頃までの模試を平均して、おおむね平均~平均の少し上(偏差値50~55)あたりを維持していれば、現実的なスケジュールで最後の追い込みに入ることができます。

適性検査型の対策は作文も含めて一朝一夕で伸びるものではないので、ずば抜けて理系が得意な子でない限りは、最低でも2ヶ月はラストスパートの期間が必要です。

「いよいよ本気モードに……!」というタイミングがきたとしても、その時点で課題が山積みであれば、都立中の狭き門をくぐるのは難しくなってしまいます。

眼の色が変わる時期というのは必ず訪れるので、そこから一気に追い上げて合格ラインに到達できるよう、模試を利用して常に立ち位置を把握し、苦手を潰し続ける必要があります。

学習を継続させるためには気分良く取り組んでくれることが最優先ですし、量を増やすような負荷はあまりかけられないタイプではあるのですが、そうはいっても本番は待ってくれません。褒めて褒めて自信を育てつつ、苦手と向き合う時間はしっかり持たせるという、メリハリをつけたサポートが向いています。

2.必要伴走レベル【中】:精神的支柱があれば強いタイプ

続いて紹介するのは、優等生タイプのお子さんのケースです。

成績トップで目立つようなタイプではありませんが、学校の先生からの信頼も厚く、決めたことはコツコツと自力で継続できる子です。

低・中学年からの学習習慣の積み重ねもあり、勉強方法にもこだわりがあることが多く、学力の素地が既に仕上がっているため、新六年生の春から良い順位を取って好調なスタートを切ることが期待できます。

ですが、自然と周囲の期待にそえるような行動や活躍ができる子だからこそ、「置いて行かれる」という経験はあまりないこともあって、模試でとんでもなく低い点数を取ったり、自分より後から対策を始めた子達に抜かされたりすると、ガクンとペースを崩してしまうことがあります。

黙々と学習できる子ですが、その内側には負けん気やプライドもしっかりあるので、それがポキっと折れたとき、数ヶ月単位のスランプを経験することも本当に多いです。

適性検査は、問題との相性次第で偏差値はプラスマイナス20くらいの変動は日常茶飯事です。まずはこのことを、保護者の方がしっかり認識なさってください。努力型の暗記だけで何とかなるものではないので、学校のテストでは負けたことがないような子に抜かされてしまうことも、まま起こります。

ふるわない成績をとってしまったときは、適性型の模試におけるアップダウンは「普通」であることをくり返し伝えましょう。保護者の方は動揺せず、ポジティブな言葉をかけ続けてあげてください。そうすることで、落ち込み期が長引くことを防ぐことができます。

とにかくお子さんの視野が狭くならないよう、保護者の方が誘導して、息抜きとして受検以外のことに目を向けさせることも有効です。

このようなタイプの子は、塾の先生からスランプに気付かれないケースも多いです。落ち込んでいることや停滞していることをアピールするのが上手ではなく、心配をかけさせないよう無意識に我慢をしてしまいがちだからです。

表面にはあまり出ていなくても知らず知らずのうちにストレスをため込んでしまうのです。保護者の方が一番の理解者であり、味方であることを、表情や態度で伝え続けてください。

これまでの学力の「貯金」が、要領や地頭の良い子達に適性検査ではカンタンにひっくり返されるという感覚は、真面目な子にとって、かなりのプレッシャーと恐怖を感じるものです。

ですが、公立中高一貫校が求める生徒は、天才型だけではありません。自主的に、そして素直に努力を継続できる、まさにこのタイプの子が求められているのです。

心労を自分の内に溜め込みやすいタイプではありますが、結局、コツコツ取り組めた子が最後は安定した点を取るのです。定期的に心を休める場を作りつつ、「一緒に課題を乗り越えていく」というサポートが向いています。

3.必要伴走レベル【低】:親は裏方徹底!程よい距離で伸びるタイプ

最後に紹介するのは、独自路線で突き進むタイプのサポートです。けっして多い訳ではありませんが、都立中を目指す子の1~2割は、この「我が道を行く」タイプの子だと感じています。

自分のやり方がしっかりあり、その取り組み方を尊重してくれるような先生や馬の合う先生と出会わない限り、集団タイプの塾では伸び悩んだり行き渋りが起きたりしやすいです。

特定の分野がずば抜けてよく出来る一方で、そのリードを相殺するほどの苦手な分野もあることが多いです。そのため、実力が正しく評価されないことも多く、保護者の方の干渉も嫌がる傾向にあって、孤軍奮闘になりがちです。

また、長年夢中になっている何かしらの分野があり、習い事や趣味、ゲームなど、大人顔負けの知識やスキルを持っている子が多いようです。ただし、受検勉強で壁を感じると現実逃避するかのように、その世界にますますのめり込むこともあります。

保護者が何か手伝おうにも、自分で学習計画を立てたり分析したりできてしまうので、干渉する隙が無いタイプの子がいたり、難問でも感覚的に「解けてしまう」こともあって、本人がサポートの必要性を感じておらず親はお手上げ……というタイプの子がいたりもします。

本人が心から納得しない限り、人から提案された方法や課題に取り組むことには気が進まないことが多いため、「この人には付いていこう」と思える先生を見つけることが、合格には一番の近道になります。自分の得意をしっかり認めてくれる先生だと認識すれば、水を得た魚のように、誰よりも熱心に取り組むようになるからです。

とはいえ、限られた時間の中で良き先生探しに奔走する余裕も機会もあまり無いですし、そもそも受検生になって割と早い段階で塾を辞めてしまうケースも多いので、ほぼ家庭学習のみで合格を目指す「親塾」になりがちです。その場合、保護者は「相談したときは的確な指示をくれる」という存在として、基本はスタンバイをしておくような関わり方が向いています。

積極的にアレもコレもと干渉するのではなく、淡々と事務的に、分析担当として必要なときに必要な教材や解決策を提供できるようなサポートが必要です。

たとえば、まずは本人が課題を感じている分野について定期的に話し合い、苦手解消に役立つ教材を保護者が情報収集して購入し提供する、というふうに、ピンポイントで本人が必要だと感じているところだけカバーするようにしてください。

抵抗なく自身の課題を親に話してくれるような二人三脚体制に慣れてきたら、今度は、日々の取り組みを分析して、親から見て「ちょっと仕上がっていないな」と感じる分野の対策になる教材を用意し、そっと取り組みメニューに入れておいてください。

このタイプの子は、客観的なアドバイスだったとしても受け入れがたく感じて反発してしまいがちです。「自分が必要性を感じたから取り組む」という流れを尊重しないと、聞く耳を持ってくれなくなることもあります。

しっかりしているように見えても、意固地になっているだけのこともありますし、ずば抜けた得意分野があるからこそ自信もあり、苦手分野からとことん目をそむけるのもこのタイプの子です。

積極的な干渉はできなくても、裏側で保護者の方が得意・不得意をしっかり見極めておくことは有効です。得意をさらに伸ばすための応用演習教材と、苦手をせめて平均レベルに持っていく補強教材の2種類を、本人のモチベーションを見ながら押し付けない程度に用意しておくといいですよ。

このタイプの子は、本番が近づいてくると自分の実力を俯瞰して、「やりたくない」という気持ちと、「そうは言ってもやらなきゃ」という気持ちの間で、損得勘定の天秤がしっかり働き始めます。そうなると、用意しておいた教材に自分から取り組み始めてくれますから、効率の良い教材をいかに揃えられるか、という鑑識眼も、保護者の方に求められます。

さいごに

さて、今回はお子さんのタイプ別伴走パターンをご紹介しました。

いっぽうで、保護者の方も、それぞれ得意なサポートがあると思います。付かず離れずで必要なところだけ関わるのが上手な方もいれば、スケジュールから丸付けまで密に管理するのが向いている方もいれば、感情面に寄り添うサポートが得意な方、お子さんの現状分析と課題解決のためのトライ&エラーが得意な方……と、保護者の方にもさまざまな強みがあり、タイプがあると日々感じています。

ですが、保護者の方が得意なサポートと、お子さんに合うサポートが、必ずしも一致するわけではなく、関わり過ぎて成長の機会を逃したり、バトルの種を増やしたりすることも多々あります。どう関わるのが正解か……と考えると本当に難しい問題です。

ただし、親子がそれぞれどのようなタイプであったとしても、公立中高一貫校を受ける以上、添削や分析、教材探し、現状の立ち位置把握と戦略決めなど、目には見えない水面下での伴走は必要です。

やるべきことは膨大です。長く携わっている私自身も、サロンメンバーさんから頂いた受検体験記を読むたびに、そのサポート内容に尊敬を通り越して驚愕することもあります……。

受けたお子さん以上に保護者の方が「二度目はもう無理」と口をそろえておっしゃいますが、先輩保護者に共通して言えるのは、「この一年が勝負」と割り切って、仕事や家事、その他諸々の優先順位を調整して、都立中受検生の伴走者になりきっていた、ということです。

塾も上手に活用しながら、あくまでも主役はお子さんとご自身であることは忘れず、親子にとって一番いい走り方が見つかるよう、応援しています!

 

※記事の内容は執筆時点のものです

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ケイティ

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  • この記事の著者

公立中高一貫校合格アドバイザー。1988年兵庫県生まれ。
2007年からの講師経験を活かし、現在は独立して適性検査対策情報をWebやセミナーで伝えている。中学受験(受検)によって親子関係に溝が出来たり、進学後に不登校になったりするケースを多数見てきた経験から、合格だけをゴールにせず、より良い学習人生を歩むためのサポートを保護者と一緒に考え続け、主宰するオンラインサロンには全国から親子が参加している。1期から3期まで700組以上の親子を送り出し、現在2024年度以降の受検に向けて全国の親子と奮闘中。
著書に、『公立中高一貫校合格バイブル(受検500日前から本番まで「いつ」「何を」するべきか)』(実務教育出版)『公立中高一貫校受検にまつわる50の壁』(YELL books)『合格力アップ!公立中高一貫校頻出ジャンル別はじめての適性検査「算数分野」問題集』『(同タイトル)「社会分野」問題集』(実務教育出版)。

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