中学受験 塾に行くだけの子|桜井信一コラム「下剋上受験」
6年生にとってこの夏は非常に重要ですね。無駄な通塾にならないようにうまく夏を過ごしてほしいと思います。
今夜は「塾に行くだけの子」ということについてお話しさせていただきます。
いきなりですが、私の本の一部から。
■「下剋上受験」99ページより
平日の夜電車にのっていると、小学生が視界に入ってきた。今までも当たり前のようにいただろう小学生は、私とは無縁の存在だった。
重そうなカバンを背負い、塾帰りでくたくたのようだ。そんな小学生を見て、横にいた妻が言うのだ。
「疲れてはいるけど、別に嫌そうじゃないよね。無理矢理勉強させられているっていう感じじゃないかな。でも楽しそうでもないなあ」
別に嫌々通っているわけではない。無理矢理通わされているわけでもない。かといって楽しそうでもない。まるで、当然会社に通うサラリーマンのようではないか。私たちは同じ感想を持った。
はて、どうして結果に差が出るのだろう。単純に不思議だ。
このように、まさに「塾に行くだけの子」をよくみかけます。以前は全然視界に入りませんでしたが、今はそんなことはありません。
パッとしない成績なんだろうなあ。何年生かなあ。うまくやれば今からでも難関中に行けるのになあ。もう諦めているんだろうなあ。というよりも今日は塾に行く日だから行っているだけなんだろうなあ。
そんなことを思うと、その場で掴まえて説得してやろうかなあなんて何度思ったかわかりません。
勝手な想像が私のあたまの中を駆け巡る。
小3か小4のころ、お母さんが塾に行ってはどうかと言い出し、少し夢の話も添えられていたので話に乗ったのが始まりだった。
しかし、ダラダラ通ううちにお母さんはイライラし始め、今度は塾をやめてはどうかと言い出した。
少なくともこの子は、この塾に行けば自動的に成績が上がると思ったと思うのです。
それは普通の小学生の普通の発想だと思うのです。
静かな夏の夜、私がそーっと耳をすますと何やらよそ様の家の声が聞こえてくるようです。
「お母さんは頑張ってくれるならお金なんて惜しくない。ダラダラ行くからもったいないと言っているの。頑張って成績が上がらないなら文句は言わない。頑張らないから怒っているのよ。無駄なお金だと。寝てはゲームし、塾に行く時間だって自分からじゃないでしょ。もう頑張らないなら諦めてもいいと思うのよ」
子どもの耳にタコを発見。
しかも、その子の耳を横からよく見てみると、なんと向う側まで突き抜けている。
”ちくわ”と同じ形状。
これじゃ、お母さんのチャチな脅しも通用しない。言っても言っても無駄な言葉の繰り返し。
実はお母さんたちってこういうことに慣れていませんか? ご主人でもう懲り懲りなのでは? 家にふたりも”ちくわ”がいるからもうストレスでいっぱい?
さて、ここでちょっと考えてみましょう。
要するにお母さんの不満を冷静に考えると、「塾を有効利用していない」ということに尽きると思うのです。
そんなとき塾を有効利用している子を見かけると、うちだけがずいぶん損をしているような気がしてきてイライラするのは当然だと思うのです。
うちも同じお金を払っているのに、うちだけが成績が伸びない、本人のやる気も継続しない、時間とお金だけが消えていく、それなのに本人は平気な顔をしている……。
えっ? キレそうになるからやめてくれって?
なるほど~、ではこの際、完全にキレていただきましょう。
無駄なことをしているのはお子さんだけではないのでは? お母さんも無駄なことをしていませんか? そのお化粧品っていくらするのですか? そんな小さな容器で8千円もするそうじゃないですか?
いや、頑張っているのならいいんです。
その体型はどういうことですか? 腹筋はもうやめたのですか? 太ももを気にしていたのはどうなったのですか? もう頑張らないのですか? それなのにそんなに高いお化粧品?
ほほーー! (-。-)y-゜゜゜
ウエストってそんなに簡単に細くならないですよね。腹筋ってなかなか続かないですよね。ジムに行ったからって、家に帰ってスイーツ食べてたら意味ないですよね。
子どもだって同じです。
成績ってそんなに簡単にあがらない。反復練習ってなかなか続かない。家に帰ればついついゲームをしたくなる。
えっ? お化粧は最低限のマナーですって?
なるほど、みんながしているのに自分だけしないわけにいかないですよね。
子どもも同じです。みんなが塾に行っているのに自分だけやめる勇気なんてない。
子どもたちは、カッコいい男、カッコいい女になるために通塾を始めた。しかし、そんなに簡単にカッコよくはなれなかった。
だけどせめて現状維持でいたい。そうじゃないと怖い。頑張れないのは認めるけれど、現状維持でいたいのです。
お母さんも同じ。
もう頑張れないでしょ? でも現状維持ではいたい。
じゃ、なぜお母さんは頑張れないのでしょうか。
ここに答えがあるのではないかと桜井総研は思うのです。
ちょっと頑張り始めたころを思い出して想像してください。
腹筋を始めたあの日。数日後にご主人がさりげなく言い出した。
「おい、なんかおまえ細くなったような気がするな?」
このひとことがあれば頑張れたのでは?
だけどご主人は妻のウエストがミリ細くなったことにまったく気づいてくれなかった。
今年こそ太ももを細くしようと決めたあの日。ママ友がふと自分をみて言い出した。
「最近、パンツがやけに似合ってない? ずるい~」
このひとことがあればスイーツを断つことができたのでは?
だけど誰も気づいてくれなかった。微妙にパンツがはきやすくなったことに誰も気づいてくれなかった。
結局、「美」を完全に諦めることはできなかった。有効利用していない化粧品代だけが残ったわけです。
もし、腹筋をもう少し続けていたら。もし、太ももを細くするところまで辿り着いていたら。
その化粧品はかなり有効利用できたはず。
さらに「美」を追求し、次のステップへ進んだと思うのです。
子どもたちも同じだと思いませんか?
2ミリほどできるようになった微妙な差に気づいてあげれば、
短時間で解くことができたことに気づいてくれれば、
最終目標だけでなく、その途中経過にさりげなく気づいてくれる人がいたら、
頑張り続けることができたと思うのです。
そして、さらに次のステップへ進んだと思うのです。
できる子って何が違うのだろう……。
そんなことばかり考え、それと比較して我が子を情けなく思っていませんでしたか?
継続できない原因を考えること。
自分が挫折した理由を考えること。
どんな条件がそろえば継続できたかをイメージすること。
ここに答えがあると思うのです。
私には反省があり過ぎた。
挫折がありすぎた。
挫折ばかり繰り返す自分は病気なのだろうかと悩んだ。
その原因を考え、挫折を誰かにせいにする。そして、その誰かになってあげる決心をする。
こうすると、我が子は徹底的に頑張るのです。カッコいい大人になろうと頑張り続けるのです。
途中経過のその微妙な差に気づいてやること。それが翌日の頑張りを生むのです。その翌日の頑張りに気づいてやること。それがまたその翌日の頑張りにつながるのです。
こうして1日ずつ夏の日を繰り返し、だましだまし夏を乗り切るのです。
そして秋を迎えた頃、明らかに変ってきた我が子にびっくりしてあげるのです。すると冬がきます。
ご主人が、お母さんのウエストの2ミリに気づかなかったのは当然のこと。お母さんが、我が子の2ミリに気づかなかったのも当然のこと。
だからチャンスなのです。
どうせみんな頑張れないのです。
ご主人ですらできなかったこの役目を、塾の先生に任せてやってくれると思いますか。
お母さんしかいないじゃないですか。
ここはお母さんの役目であり、愛情を持つ者にしかできないと思いませんか。
中卒の子の成績が劇的に上がるヒミツ。
実は、挫折した数の多さを武器に、その原因を考えた。そして、可愛くて仕方ない娘の学力を伸ばしてやりたいと思うとき、2ミリずつ気づいてやろうと考えた。
もしかして、挫折した経験は使えるんじゃないかと思ったのです。
2014.7.27 am 0:00
桜井信一
※記事の内容は執筆時点のものです
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