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てこの原理とは? 計算方法や、問題を解くための「王道アプローチ」を紹介

2021年9月14日 ゆずぱ

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中学受験理科の物理分野で登場する、てこの原理。難しそうなイメージのある単元ですが、「回転しようとする力(=力のモーメント)」の計算を確実におこない、「つりあいの式」を正しく立てることで攻略できます。この記事では、てこの原理の基本となる「回転しようとする力」の計算方法を解説するだけでなく、実際に問題を解くために知っておきたい「王道アプローチ」、そして簡単な例題をもとに基礎知識も確認していくので、てこの原理に苦手意識を持っている子はぜひ読んでみてください。

「てこの原理」とは

そもそも「てこの原理」とは、物理の原理のひとつ。「小さな力で大きな力を生み出すことができる原理」のことを指します。ただし、これだけだと少しイメージしづらいかと思うので、まずは公園にあるシーソーをイメージしてみましょう。

片方に100kgのおもりが乗ったシーソーを思い浮かべてみてください。この場合、まずは支点を中心として左右が同じ長さのシーソーであれば、もう片方に100kgのおもりを乗せると「つりあった状態」になります。

一方で、おもりを乗せる位置を支点から遠く離れた場所にすると、25kgといった小さなおもりでも「つりあった状態」にすることができてしまいます

では、どうして小さなおもりでもつりあうのでしょうか? それはシーソーにおもりを乗せることによって起こる力、つまり「回転しようとする力」が支点を中心に発生することに関係しています。この力は「モーメント」と呼ばれ、簡単に計算できます。

「回転しようとする力」を計算しよう

「回転しようとする力(モーメント)」は、シンプルなかけ算で計算可能です。

まず、左に置かれた500gのおもりに注目してください。このおもりは支点から50cm離れた場所に乗っているので、「500g×50cm」と計算できます。右の300gのおもりも同様に、「300g×100cm」と計算します。

ここで大切なのが、回転しようとする力の“方向”を考えることです。上の図を見ると、500gのおもりは「反時計回り」に回転しようとする力、そして300gのおもりは「時計回り」に回転しようとする力がかかっていますね。そしてそれぞれを計算すると、反時計回りに回転しようとする力(500g×50cm)のほうが大きいことがわかります。

3種類の「てこ」

「てこの原理」の基本を、シーソーをイメージしながら紹介してきました。しかし実は、てこには大きく分けると3種類のパターンが存在します。

3種類のてこ

  • シーソー型
  • せんぬき型
  • ホッチキス型

では、「誰かから100kgのモノを持ち上げてほしい!」というお願いをされた場合を想定して、それぞれのパターンを使った解決方法を見ていきましょう。

[1]シーソー型

ひとつ目は、ここまで紹介してきた「シーソー型」です。シーソー型の場合、支点から遠く離れた場所におもりを置けば置くほど、100kgよりも小さな力でおもりを持ち上げることができます。

[2]せんぬき型

ふたつ目は「せんぬき型」です。上の図を見ると、シーソー型と違い、力点も作用点も同じ側、つまり「支点の右側」にありますね。でも、考え方はシーソー型と同じ。まずは、支点からの距離に着目します。この場合には、支点から遠く離れた場所に下からの力が加わるほど、100kgよりも小さな力でおもりを持ち上げることができます。

[3]ホッチキス型

最後は「ホッチキス型」です。一見するとせんぬき型と似ていますが、ホッチキス型の場合には力点が支点に近い場所にあります。この場合、100kgのおもりを持ち上げるためには、下側から100kgより“大きな力”が必要となります。

シーソー型も、せんぬき型も、100kgより“小さな力”で持ち上げることができました。一方でホッチキス型の場合には、100kgよりも重い力が必要になってしまいます。ではホッチキス型のてこは、いったい何の目的で使われるのでしょうか? それは、たくさんのモノを移動させたいときです。たとえば上の図の場合、100kgよりも大きな力が必要な代わりに、たとえば作用点のおもりを1cm動かしただけで、力点のおもりも1cm以上移動させることができるとされています。

力学問題の「王道アプローチ」

次は、力学の問題が出てきたときに意識したい「王道的なアプローチ」を紹介します。

力学問題の王道アプローチは、「つりあいの式」を立てることです。具体的には、「つりあっている状態」を前提として、重力や張力といった力を全て矢印で描き、つりあいの式を立てていきます。

ちなみに小学校で習う力は、基本的には「重力」「張力」「浮力」「弾性力」の4種類です。この4つの力が問題に出てきたら、まずはそれらの力を漏れなく描き出し、上向きの力と下向きの力を「=(イコール)」で結ぶ、といった流れで問題を解いていきましょう。なお、上の図では「上向きの力=下向きの力」と表記していますが、力の向きが左と右であれば「左向きの力=右向きの力」という式を立てます。

力が加わる対象が「てこ」の場合

力が加わる対象がてこであっても、基本的にはアプローチは変わりません。ただし、まずは「回転しようとする力(モーメント)」に変換する、といった手間が加わる点に注意が必要です。具体的には、重力や張力などの力を矢印で描いたうえで、「回転しようとする力」を求めます。そのうえで、つりあいの式、つまり「時計回りに回転しようとする力」と「反時計回りに回転しようとする力」をイコールで結んだ式を立てていきましょう。

てこの原理の例題

では「王道アプローチ」をもとに、てこの原理の問題を解いてみましょう。

(例題)
左端に支点を持つ棒に、500gのおもりと、ばねばかりが固定されています。おもりが固定されているのは、支点から10cmの場所です。ばねばかりは100gの値を示しています。この状態でつりあっているとき、ばねばかりが固定されているのは支点から何cmの位置でしょうか? なお、てこに使われている棒の重さは無視できるものとします。

ステップ【1】全ての力を矢印で描く

まずは、この棒にかかっている全ての力を矢印で描き出します。

棒にぶら下がっているおもり

500gのおもりがぶら下がっているので、左側に500gの“下向き”の力がかかっていることがわかりますね。

棒をひっぱっているバネばかり

バネばかりが、棒を上にひっぱっています。はかりが示す値が100gとなっているので、100gの“上向き”の力がかかっていることがわかります。なお「棒の重さは無視しても良い」と書かれているので、これに従います。

ステップ【2】「回転しようとする力」に変換

全ての力を矢印で描き終えたら、次は「回転しようとする力」に変換します。

まずは、支点からの距離に着目します。そして、その位置にかかる力と、支点からの距離をかけ算することで「回転しようとする力」を計算しましょう。

ここで注意したいのが、方向です。500gのおもりで生まれる力は「時計回り」に回転しようとする力、ばねばかりによって生まれる力は「反時計回り」に回転しようとする力です。今回の例題はふたつの力しかありませんが、多くの力が登場する問題では方向を間違えてしまうことがよくあるので注意しましょう。

ステップ【3】つりあいの式を立てる

例題は、すでにつりあっている状態です。そのため、時計回りに回転しようとする力と、反時計回りに回転しようとする力をイコールで結び、つりあいの式を立てます。

つりあいの式を立てて計算してみると、「バネばかりが固定されている場所」が、支点から50cmの場所であることが求められました。つまり、例題の答えは「50cm」です。

ちなみに前述したとおり、この例題は時計回りの力も反時計回りの力もひとつでしたが、たとえ複数の力が出てきても問題を解く流れは変わりません。複数の力が出てきた場合には、時計回りの力の合計と、反時計回りの力の合計でつりあいの式を立てることで、それぞれの関係性を表していきましょう。

まとめ

「てこの原理」について、難しいイメージを持ってしまう子は少なくありません。しかし、今回お伝えした基礎をまずは理解することで、てこの原理の苦手意識は減らせます。そして問題を解くときは、次のふたつのポイントをしっかりと意識してみてください。着実に対策をしていくことで、てこの原理を得点源にしていきましょう。

てこの原理の問題を解くポイント

  • 「回転しようとする力」を確実に計算する
  • 「つりあいの式」を正しく立てる

※記事の内容は執筆時点のものです

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