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国会と内閣の仕事の覚え方 各機関の役割をおさえれば丸暗記は不要

2018年4月25日 ゆずぱ

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中学入試の社会科の公民分野でよく出題されるのが、国会と内閣の仕事を正しく理解しているかを問う問題です。中学受験では「国会の仕事」「内閣の仕事」を理解している必要があります。国会と内閣のそれぞれの仕事を覚えるのは難しく感じますが、効率的な覚え方があります。それは各機関の役割と仕事の流れ、そして三権分立を理解し、論理的にどの機関の仕事かを見分ける方法です。

国会と内閣の仕事を見分けるために必要な3つの準備

国会と内閣の仕事を暗記するのは、小学生はおろか、大人である親にとっても至難の技ではないでしょうか。いっそのこと暗記するのを諦めてしまいましょう! 暗記することをやめ、見分けることに注力するのです。中学受験で求められるのは、国会の仕事と内閣の仕事を暗記しているかどうかではなく、国会と内閣の役割を正しく理解しているかです。つまり、国会の仕事と内閣の仕事を論理的に見分けることができれば問題を攻略できます。

準備1:国会と内閣の役割を正しく理解する

まずは国会と内閣の役割を正しく理解するところから始めます。

「国会」は国民から選ばれた国会議員で成り立ち、「法律をつくる権限」を持っています。これは「立法権」ですね。国の決まりを最終的に決める権限を持っているので「方針を決める役割」を持っているといえます。

一方、「内閣」は国会で決められた法律に従い、「実際の行政を進める権限」を持っています。これは「行政権」ですね。国の決まりを進める権限を持っているので、「方針に従って実行する役割」を持っているといえます。

なお、「法律をつくる」のは国会の役割ですが、内閣も実際に政治を行ううえでより良いと思われる「法律の『案』」をつくって国会にお伺いを立てることができます。したがって内閣は「方針の『案』をつくる役割」も持っているといえます。なお、この「方針の『案』」をつくることは、国会議員も行ないます。

シンプルに表現すると以下のようになります。

■国会:「立法権」を持つ
・「方針を決める役割」を持つ

■内閣:「行政権」を持つ
・「方針に従って実行する役割」を持つ
・「方針の『案』をつくる役割」を持つ ※
※「方針の『案』」をつくることは、国会議員も行なう

準備2:国会と内閣の仕事の流れを理解する

国会と内閣の役割が理解できたら、国会と内閣が仕事をする際の基本パターンをおさえることが大切です。

内閣は実際に政治を行なっているので、こんな風にしたいとか、こうした方がいいと思ったら、予算や法律の案をつくります。その案を国会が承認します。案が承認されたら内閣がそれを実行します。この基本の3段ステップをしっかり把握しましょう!

※『案』をつくることは、国会議員も行ないます

準備3:三権分立を理解する

国会と内閣の仕事を見分けるための最後の準備は「三権分立」を理解することです。国会と内閣と裁判所という大きな権力をもった3つの機関がお互いに監視することで権力の暴走を避けるしくみですね。例えば、内閣は国会の衆議院を解散させる権限を持っていますが、逆に国会は内閣不信任案を議決する権限を持っています。こうして3つの強力な権限を持った機関がお互いに監視しあっています。

役割と仕事の流れが理解できたら、どの機関の仕事かを見分けられるようになる

それでは国会と内閣の仕事が論理的に見分けられるか実践してみましょう。実は半数以上の仕事は3段ステップの流れから判断できてしまいます。残りは三権分立の考えから見分けられます。最後は少し特殊な仕事が2つほどあります。

理由を知らずに覚えるのではなく、なぜそれが国会の仕事なのか? なぜそれが内閣の仕事なのか? を意識しましょう。

基本の3段ステップでわかる

さっそくですが「予算を議決する」のはどの機関の仕事でしょうか? 「予算を議決する」というのは、「予算を決定する」ということですから3段ステップの「決めるステップ」ですね。したがって答えは国会です。

実は国会と内閣の仕事の半数以上は、この3段ステップでわかってしまいます。各機関の役割を正しく理解し、この3段ステップを体得しましょう!

※『案』をつくることは、国会議員も行ないます

三権分立でわかる

では、「内閣総理大臣の指名」はどの機関の仕事でしょうか? 三権分立を理解していれば内閣という選択肢は無いので、国会であるという答えが導き出されます。三権分立の図はすべての権限が1枚になった図はよく見かけますが、次の図のように、指名系、解散系、監視系の3つに分けると、とてもわかりやすくなります。



そのほかの仕事も論理的にわかる

仕事の流れや三権分立からは簡単には想像できない仕事が2つだけあります。

ひとつは「憲法改正の発議」、もう1つは「天皇の国事行為への助言と承認」です。この2つの仕事もちゃんと理由がありますので論理的に考えるようにしましょう。

まず「憲法改正の発議」ですが、憲法を変えるということは国のルールを変える事、つまり法律を変えることによく似ていますね。そうであれば担当するのは立法権を持っている国会という事になります。憲法改正は国のルールを変える事なので立法権を持っている国会の仕事なんだというようにと理解しましょう。

次に「天皇の国事行為への助言と承認」です。国事行為とは何でしょうか? 憲法で規定された天皇が行う行為で、内閣総理大臣の任命や国会の召集などが国事行為の例です。これは行政権に近いことを天皇が実施していることになります。天皇は政治を行う権利は持っておらず、行政権を持っているのは内閣です。だから助言と承認は内閣の仕事となるのです。

※『案』をつくることは、国会議員も行ないます

一見、国会や内閣の役割に関係ないような仕事も決められた役割のなかで分担されていますね。

まとめ

中学受験における社会科の公民分野は小学生にとっては難しく感じられる分野かと思います。ただでさえ難しいの言葉なのに、それを暗記するのは苦痛ですよね。しかし国会や内閣の仕事は適当に決められているわけではなく、芯の通った「各機関の役割」をもとに割り振られています。もし丸暗記で苦戦しているお子さんがいる場合は、無理に暗記しようとせず、論理的に見分けるための対策をおすすめします。

※記事の内容は執筆時点のものです

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