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【中学受験社会】米の生産高が多い都道府県トップ5 ―― 米の生産が盛んな理由も

2020年7月30日 池田良輔

『日本国勢図会2019年』を見ると、2018年の米の生産高トップ5は、1位から順に新潟県・北海道・秋田県・山形県・宮城県となっていることがわかります。では、これらの都道府県を地図上に置いてみると、どのような共通点を見出せるでしょうか?

トップ5の共通点

まずは、いずれも「東日本」に位置しています。そのうち、宮城県を除くトップ4は「日本海に面している」という共通点も見出せますね。そこで次に、なぜこのような共通点が見られるのか、その理由を考えていきましょう。

そもそも、地理分野の知識について「理由を考えてみること」の利点は2つあります。ひとつは、理由を推測したり、比較・分析をしたりすることで、他分野の知識と関連づけて記憶していけることです。さまざまな分野の知識やイメージが“知識のかたまり”として体系的に結びつくと、忘れにくく、思い出しやすくもなります。

もうひとつは、推理力・論理的思考力の訓練となることです。「覚えたはずなのに、どうしても思い出せない……」ということは誰にでもありますよね。こうした場合、手持ちの知識をもとに回答を推測することができれば、回答までなんとか漕ぎつけられることもあります。テストの得点力にも直結することでしょう。こうした「推測する力」を養ううえでも、理由を考えつつ学ぶことは大切なことといえるのです。

東日本の日本海側で米づくりが盛んな理由

それでは、なぜ米の生産高トップ5の都道府県の多くが「東日本の日本海側」に位置しているのか、気候と地形の両面からその理由を推測してみましょう。

気候と地形から理由を推測する

東日本の日本海側の気候には、「夏の晴天」と「冬の降雪量の多さ」という2つの特徴があります。 稲は夏の暑さや日光で元気に育つため、「夏の晴天」は米づくりを行う農家にとって有利な条件なのです。そして、冬に日本海側の山間部に多く降った雪は、稲作で最も水が必要となる春から夏にかけてゆっくり解け、下流の平野に水を供給します。

雪がすべて解けると、下流が洪水になるほどの水量となります。そして、それらの水がまるでダムのように少しずつ供給されていくことから、山間部に降り積もった雪は「白いダム」と呼ばれることもあります

地形面の特徴としては、「広い平野に位置していること」が挙げられます。新潟平野・庄内平野・秋田平野・石狩平野といった平野に、米の生産高が多い都道府県が集中しているのです。

「反論」で知識を広げてみよう

今度は、「米づくりが東日本の日本海側で盛んな理由」への反論を考えてみましょう。「反論」を試みると、その過程でさらに知識が深まったり、覚えた知識を他分野の知識と結びつけたりして考えられるようになります。

【反論1】四国や九州のほうが暑い気がするけど?

ひとつめは、「夏の暑さや日光を稲が好むなら、四国や九州のほうが暑そうだし、日光量も多い気がするけど」という反論です。

たしかに東日本の日本海側と比べ、四国や九州は年間を通して温暖な気候に恵まれています。事実、高知県が位置する高知平野などでは、古くから稲の二期作(1年に米を2回栽培し収穫すること)が行われています。

一方で四国や九州は、さまざまな農業、そして作物を選択できる温暖な気候を活かし、「夏野菜の促成栽培」にも力を入れる農家が多いのです。つまり、日本中どこでも栽培できる米よりも、温暖な気候を十分に生せる作物を中心に栽培しているのですね。そのため四国や九州では、米の生産高はそこまで多くありません。

【反論2】関東平野のほうが広そうだけど?

「米づくりには広い平野が必要なら、関東平野のほうが広そうだけど」といった反論も考えられるでしょう。

たしかに、関東平野に位置する群馬県・栃木県・茨城県には見渡す限りの田園風景が広がっています。しかしこの3県は、東日本の日本海側に比べて「大都市に近い」というメリットを活かし、近郊農業や抑制栽培にも力を入れています。そのため米づくり以外にも、群馬県ではキャベツ、栃木県はイチゴ、茨城県は白菜やピーマンといった生産も非常に盛んです。

一方で東日本の日本海側は、冬になると田畑がずっと雪に覆われてしまいます。さらに大都市圏から離れているため、四国や九州、関東平野のような近郊農業や抑制栽培といった選択をしにくかったのでしょう。そのため、農業ができない冬は避け、稲作だけに集中するという「水田単作」(ひとつの土地で、1年に1回稲作だけを行うこと)を選択したのです。

寒い地域でも稲作をするための工夫

稲作は、もともと熱帯気候の東南アジアにその起源を持ちます。その点、東南アジアに比べてはるかに涼しい東日本の日本海側で稲を栽培するためには、多くの苦労がありました。しかし、その苦労を克服する数々の工夫によって、東日本の太平洋側は「日本一の米どころ」になったのです。

品種改良

代表的な工夫として挙げられるのが、品種改良です。「コシヒカリ」「あきたこまち」「はえぬき」「ゆめぴりか」などのブランド米は、どれも品種改良によって生まれたお米。寒冷地に拠点を置く農業試験場を始めとした研究機関が、何十年もの長い時間をかけて研究し、寒い地域でも育つコメの品種を生み出したのです。

ぬるめ

冷たい雪解け水をすぐに稲に触れさせないため、手前の水路でぬるくさせてから水田に入れる「ぬるめ」という工夫も編み出されました。

保湿苗代

「保温苗代(ほしつなわしろ)」は、4月になっても残る冷気から苗を守るための工夫です。「育苗(いくびょう)ハウス」という名のビニールハウスで稲を育てる方法も保温苗代の一例です。

客土

最後に紹介するのは「客土(きゃくど)」です。北海道の石狩平野には、枯れた植物がそのまま積み重なってできた、「泥炭地(でいたんち)」と呼ばれる農業には向かない土壌が多くあります。寒さのせいで、枯れた植物を土に分解する役割を地中の微生物たちが果たせないため、泥炭地では作物が育たないのです。そこで、「石狩平野の泥炭地の上に、作物が育つ土を別の場所から運んでくる」という方法が編み出されました。これが「客土」と呼ばれる方法です。客土を実行したことで、石狩平野は日本随一の稲作地帯になりました。

考えを深め、知識を定着させよう

米の生産高の多い都道府県が、東日本の日本海側に多い理由を紹介しました。理由を考え、検証し、反論も加えてみる――。このような「思考の過程」を丁寧に踏むことで、米以外の作物について勉強するときも知識が定着し、思考力の訓練にもつながることでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

この記事の著者

塾講師歴10年以上。既存の学習塾への疑問からSRP教育研究所の立ち上げに参画、文系代表を務める。教育哲学・教育社会学・教育史学等の複合領域が専門基盤。ある思想家の「消費者マインドの助長や蔓延が教育を危機に向かわせている」という主張に共感し、「学びの活性化」を授業の最重要目的として、チャレンジを続ける。長野県の喬木村出身で、「関東地区喬木村ふるさと会」幹事でもあり、東京の自治体や私学のお子さんの、自然体験を通じた豊かな学びの機会創出を画策中。