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【理科】P波とS波の計算問題が難しい……まずは落ち着いて「速さの計算」をしよう

2023年9月10日 ゆずぱ

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地学分野には「地震」を扱う単元があり、そこで登場するのがP波とS波です。

理科の教科ですが、計算がややこしくて苦手な子も多い一方で、入試問題では地震について大々的に出題する学校も目立ちます。

 

P波とS波のややこしい計算問題の攻略法は、次のふたつです。

  • 落ち着いて「速さの計算」をする
  • 速さの計算の3つの要素(速さ・距離・時間)を整理する

 

今回はP波とS波の基本知識をお伝えしつつ、計算のポイントについても解説します。

ぜひ参考にしてみてくださいね。

3つの基本知識

計算問題の解説に入るまえに、P波とS波の問題を解くうえで必要な3つの基本知識を紹介します。

  1. 地震には2つの波がある
  2. 震度の大きさ
  3. 初期微動の継続時間

 

基本[1]地震には2つの波がある

そもそも、P波とS波とはナニモノなのでしょうか?

地震は「地面が揺れる自然現象」というのはわかっているかと思いますが、その揺れは震源地を中心に地面を伝わり、周りの地域に広がっていきます。

そして震源地で地震が発生すると、2つの波が同時に発生します

それがP波とS波です。

 

P波(初期微動)

下の図の青い波がP波です。「初期微動」とも呼ばれます。

P波のポイントは、揺れの大きさは小さいが、伝わるスピードは速いということ。

地震が発生すると、震源地から一気に周りの地域に広がっていくイメージをもちましょう。

S波(主要動)

下の図の赤い波がS波です。「主要動」とも呼ばれます。

S波のポイントは、揺れの大きさは大きいが、伝わるスピードは遅いということです。

地震が発生したあと、P波を追いかけて、ゆっくりと周りの地域に広がっていくイメージをもちましょう。

 

英語の意味で覚えよう!

「P波とS波を混同してしまう……」という声をよく聞きます。

インターネット上にもいろいろな覚え方が紹介されていますが、まずはシンプルに、それぞれの言葉の元になっている英語の意味で覚えるのがおすすめです。

P波……「P」はPrimaryの頭文字(“最初の”という意味)
S波……「S」はSecondaryの頭文字(“2番目の”という意味)

 

基本[2]震度の大きさ

 

次は、地震の揺れの大きさを表す「震度」について。

P波もS波も、地面を伝わっていく波のこと。伝わっていくうちに少しずつ弱くなり、いずれ消えてしまいます。

だから、震源地に近いほど揺れが大きい

これは、理解しやすいですよね。

原則として「震源から近ければ近いほど揺れが大きい」と押さえておきましょう。

 

ただし波の伝わりやすさは、地面の硬さなどによって変わります。

柔らかい地面では波は伝わりにくく、硬い地面では波は伝わりやすい、という性質があるんですね。

震源地から近いのにあまり揺れなかったり、震源地から遠いのに大きく揺れたりするのは、その震源地からの方角によって地面の質が異なることが関係しているのです。

 

また、地下深くで発生した地震は、地面のなかの状態によって伝わる速さが変わります。

そのため震源地からまったく同じ方角でも、震源地に近いほうが揺れが小さくなる、なんて場合もあります。

 

以上のことから、「震源から近ければ近いほど揺れが大きい」というのは、あくまでも原則として捉えておきましょう。

 

基本[3]初期微動の継続時間

 

どこかで地震が発生すると、スピードの速いP波が最初に到達し、少し遅れてS波が到達します。P波の“小さな揺れ”がしばらく続いたあと、S波の“大きな揺れ”になっていくということですね。

そして“小さな揺れ”が続く時間は、震源地から近いほど短く、遠いほど長くなります

S波はP波を追いかけるように伝わりますが、震源から近いところではすぐに追いつき、震源から遠いところではなかなか追いつかない。

このようなイメージですね。

 

P波とS波の計算問題 ―― 頭を“算数モード“に切り替えよう

ここまで、P波とS波の基本知識を紹介しました。

  1. 地震には2つの波がある
  2. 震度の大きさ
  3. 初期微動の継続時間

 

この3つを押さえたら、いよいよP波とS波の難問「速さの計算」を攻略していきましょう。

ここからは、頭の中を“算数モード”に切り替えてください。P波とS波の問題は、算数の「速さ問題」と同じ考え方で解けるからですね。

 

具体的なステップは、次のとおりです。

ステップ[1]情報を表にまとめる
ステップ[2]速さの「3つの要素」を意識する
ステップ[3]計算する

 

ステップ[1]情報を表にまとめる

P波とS波の問題は、問題文に以下のような情報が書かれています。

  • 震源地からの距離
  • P波の到達した時刻
  • S波の到達した時刻

最初から表のかたちで示されている問題もありますが、そうでない場合は、まずはこれらの情報を表にまとめましょう

これが、P波とS波の計算問題を攻略するための第一歩です。

 

実際にまとめてみると、以下のような表ができあがります(※)。算数の問題を解くときと同じく、問題文から読み取れない部分は空欄のままでOKです。

※問題文に書かれている情報にすでに目を通した、という前提で話を進めます

 

ちなみに「震度」についての情報が書かれている問題もありますが、速さの計算では使いません。

表にまとめなくても問題ないですが、ほかの設問で使うかもしれないのでメモしておいても良いでしょう。

 

ステップ[2]速さの「3つの要素」を意識する

表に情報がまとまったら、算数の速さの問題を思い出してみましょう。

速さの3つの要素 = 速さ・距離・時間

表のままでは計算が難しければ、算数で扱ったような「線分図」を用いても良いですね。

 

まずは距離に着目してみましょう。

観測地Aと観測地Cの距離は、引き算で求められます。

 

次は、時間に着目してみます。

各観測地にP波やS波が到達した時刻がわかっているので、計算で求められます。たとえば、観測地Aから観測地BにP波が到達するまでの時間は「3秒」だとわかりますね。

 

ここまでの話をまとめると、以下の図のようになります。

 

表のままでも解けますが、イメージできないようであれば無理をせず、慣れるまでは線分図のような形で整理するのが良いでしょう

ステップ[3]計算する

ここまでくれば、あとはシンプル。速さの公式を使って計算をするだけです。

念のため、速さの公式をおさらいしておきましょう。

速さ = 距離 ÷ 時間
時間 = 距離 ÷ 速さ
距離 = 速さ × 時間

 

最初に、P波の速さを求めてみます。

先ほどまとめた線分図を、もう一度眺めてみましょう。

 

 

観測地Aと観測地Cの間の100.8kmを、P波が12秒(3秒+9秒)で伝わっていることを見つけられましたか?

時間と距離がわかっていれば、速さを計算できますね。

 

次に、震源地から観測地AまでのP波の時間を求めましょう。

先ほどの線分図では、P波の速さと距離がわかっています。つまり速さの3要素のうち2つがわかっているので、時間も計算できますね。

 

最後に、震源地から観測地Bまでの距離を求めます。

P波の速さはわかっているので、時間がわかれば計算で求めることができます。線分図で表していると理解しやすいですね。

ほかの箇所も同じ要領で、いもづる式にガンガン埋められます。もちろん、S波の速さも求めることができます。

設問で求められている値に辿りつけるように、あとは速さの計算をしまくりましょう。

P波・S波とセットで問われる応用知識

P波・S波の問題とセットで問われる応用知識も押さえておきましょう。

  • プレートとトラフ
  • マグニチュード
  • 緊急地震速報

 

プレートとトラフ

地震は、地面のなかにある「プレート」と呼ばれる岩盤に“ひずみ”が生じることで起こります。

そして中学入試では、日本近辺にあるプレートの名前が本当によく出題されます。

ポイントは、日本の周辺にある4つのプレートと、その配置を覚えること

千葉県沖を中心に、アルファベットの「H」のような配置になっていることも押さえておきましょう。

 

プレートとプレートの境は、深い海になっています。「トラフ」や「海溝」という呼ばれ方をしますね。

トラフは、まさに地震が起きる場所。日本近辺にある4つのトラフについても覚えておきましょう。

マグニチュード

地震の揺れの強さ(大きさ)には「震度」という単位が使われますが、地震の規模自体には「マグニチュード」という単位が使われます。

 

マグニチュードが1つ上がるごとに、その地震がもつエネルギーは約32倍になります。たとえばマグニチュード7とマグニチュード9では、1000倍もの差があるんですね。

震度とマグニチュードは、似ているようでまったく異なる指標です。それぞれの違いを正しく押さえておきましょう。

緊急地震速報

緊急地震速報とは、強い揺れが起きることを事前に知らせるシステムのこと。

入試問題では、緊急地震速報のしくみが問われることもあります。

 

といっても、しくみはとてもシンプル。

日本各地に置かれた地震計で主にP波を検知し、それを中枢に置かれたコンピュータに送り、各地域にS波が来るまえにスマートフォンやテレビで知らせる、というしくみになっています。

P波の小さな揺れが届いたあと、少し遅れてS波の大きな揺れがやってくるという“時間差”を利用したシステムですね。 

 

まとめ

理科の地震の分野で登場する、P波とS波。

計算がややこしく、苦手とする小学生も多いようです。しかしやることは、算数の速さの計算とそこまで変わりません。

頭を“算数モード”にして、落ち着いて情報を整理すれば攻略できます!

 

慣れてくれば、文章や表の情報をもとに速さの計算を直接できるようになります。

とはいえイメージできないうちは、今回紹介したように、まずは線分図を使って情報を整理していきましょう

※記事の内容は執筆時点のものです

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