【早稲田実業学校中等部】卒業生からみた早実「これぞ青春! を謳歌できる学校」

「あの中高一貫校ってどんなところ?」「受験勉強はどんな風にしたの?」……そんなギモンへのひとつの答えとして、さまざまな学校の卒業生に体験談を聞く『あの学校のリアル』。今回お話を聞いたのは、早稲田大学系属の名門校、早稲田実業学校中等部・高等部OGのSさんです。


Sさん(早稲田実業学校中等部・高等部OG)
現在:早稲田大学 社会科学部社会科学科4年
中学受験当時の学習塾:栄光ゼミナール、日本教育学院、早稲田アカデミー(NN志望校別コース 早実クラス)

早稲田実業学校中等部・高等部の特徴や校風は?

早稲田実業学校中等部・高等部(以下・早実)にはどんな特徴があり、校風や生徒達の雰囲気はどのようなものだったのでしょうか? Sさんの体験や、感じたことを聞いてみました。

志の高い友人から刺激を受ける毎日

早実といえば、運動部が強い印象があるでしょうか。私が所属していた少林寺拳法部も、全国大会に出場したことがある強豪でした。少林寺拳法部は、想像以上に練習がハードで大変でしたね。ただ、中学から少林寺拳法をはじめた私でも、2年弱で黒帯を取ることができるまで成長させてくれました。運動が得意な子以外にも、文化系の特技に秀でた子も多かったです。書道の大会で全国優勝した子もいましたね。

スポーツ推薦などで早実に入学する子もいますが、その子たちだけの特別なクラスはありません。一般入学の子と推薦で入ってきた子が、同じクラスで学びます。そのため、何かに突出した子が同じクラスにいるのが“当たり前”の環境でした。志を高くもった友人と過ごすなかで、「私もがんばろう!」と刺激を受けていましたね。

お互いを支え合う意識が自然と芽生える

早実で過ごすと、友人同士でお互いを支え合う意識が自然と芽生えます。学校生活の長い時間を同じコミュニティで過ごすことになるので、いかに良好な関係を築けるかがカギなんですね。友人のイヤな面を見つけるより、良い面を見つけて「お互いさまだよね」と認め合う環境だったと思います。そのため「自分だけよければいい」といった子は、学校内で浮いてしまうかもしれません。

また個人的な見解ですが、「勉強一筋」といった子も、早実はあまり向かないかなと思います。早稲田大学へ進学する生徒が多く、受験勉強に時間を割かれることはありませんし、中高でしかできないことに力を注いだほうが、早実の6年間を充実したものにすることができると思います。

たとえば文化祭は全学年・全クラスが力を入れていました。高3生も例外ではなかったです。私が高3のときは、演劇をおこなうクラスが多かったです。一般的に高3というと、大学受験勉強に追われる時期だと思いますが、どのクラスも文化祭に真剣で、クオリティの高い演劇を制作していました。ちなみに女子が少ない学校ですが、男子より女子のほうがパワーがあるんです(笑)。文化祭などのイベントは、女子が男子をぐいぐい引っ張っていましたね。

勉強もおろそかにできない

「中高でしかできないことに全力を注ぐ」と聞くと、勉強がおろそかになるイメージを持つかもしれません。ただ、早実では内申点のよい生徒から順に早稲田大学の学部を選ぶことができます。そのため授業は気が抜けません。私は理系でしたが、高3で世界史を履修する必要もあって、学校の授業がラクという印象はありませんでした。勉強より趣味や部活を優先してしまう子も正直いますけど、補習があったり、朝にテストがあったりと、先生からの勉強面のサポートも充実していましたね。

ちなみに、校則はかなり厳しかったです。高校ではメイクが禁止されていましたが、友達と隠れてメイクの練習をしたことも。メイクが“大学デビュー”になるのは、なんとしても避けたかったんです(笑)。登校すると校門の両側に先生が毎日5人ずつ立っていて、スカート丈のチェックなどもされていました。

校則はたしかに厳しかったですが、早実は規律を守りさえすれば生徒の自主性を最大限認めてくれる環境でした。向上心溢れる友人とともに、「これぞ青春!」といったことを謳歌させてくれた意味でも、早実に進学してよかったなと思っています。

中学受験勉強はどのように進めた?

早稲田実業学校中等部・高等部の入試に向けて、Sさんは受験勉強をどのように進めたのでしょうか。志望校を決めるときに重視したことや、決め手となった理由についても聞いてみました。

「物事に取り組む姿勢」を教えてもらう環境で育った

父が早稲田大学出身ということもあり、早実を目指しました。父は厳格な人で、「早実に行けないなら公立に行かせる」とも言われていましたね。プレッシャーは感じましたが、「はじめから低いところを目指すことに意味はない」といった、物事に取り組む姿勢を父が教えてくれていることは理解していました。また、「努力すればできる」「できない理由を探さない」といった意識は、小さい頃から自然と身についていたと思います。「○○ちゃんならできるよ」と、“できる前提”で応援してくれる親戚に囲まれて育ったことが影響していると思いますね。

中学受験勉強では、父は気持ちの面で支えになってくれて、母は勉強がスムーズに進むようにサポートをしてくれました。「息抜きも大事」という両親の考えもあり、習い事のピアノを6年生の冬まで続けさせてくれたのもありがたかったです。「お母さん、娘さんにいつまでピアノをやらせるんですか?」と母は塾の先生から言われていたみたいですけど……(笑)。私としては、ピアノは受験勉強のよいリフレッシュになっていました。

そのときの状況に合わせて転塾したことが功を奏した

塾には3校通いました。1校目は栄光ゼミナールです。3年生のときに通い始めましたが、4年生になって算数が少し難しくなると偏差値が30近くまで落ちてしまったんです。そこで5年生のときに、面倒見がよいと聞いていた日本教育学院に転塾しました。手厚い指導のおかけで、算数の成績はぐんと伸びましたね。また社会が苦手でしたが、社会を30分やって、別の科目を2時間やったあとに社会を30分やるといった勉強法を先生から教えてもらったことで、社会の勉強が苦ではなくなりました。

6年生になる頃には、偏差値が63くらいまで上がっていました。しかし、早実を目指すにはまだまだ物足りない学力だったこともあり、早稲田アカデミーの「早実クラス」に通うことにしたんです。早実の社会の問題に特化した“オリジナル参考書”をつくってくれたりと、早稲アカの先生の熱量はすごかったですね。入試直前に「早実クラス」の一番下のクラスに落ちてしまったときは、「あとは気持ち次第だよ!」と先生から励ましてもらったことも覚えています。もともと負けず嫌いだった私は、先生からの言葉に火をつけられましたね。

結果として、第一志望の早実に合格できました。入試直前まで早実の合格が見えていなかったことから、まさに‟下剋上受験”だったと思います。そして、合格できたのは転塾のタイミングにあったともいえます。そのときの自分の状況、レベルに合った最適な塾に進めたことが功を奏しましたね。

今後のキャリアに中高の学びはどういきてる?

早稲田大学の大学生として、次のステップを見据えて努力を続けるSさん。彼女が思い描く将来像や、歩みたいキャリアを考えるうえで、中高の学びはどのような影響を与えているのでしょうか。

将来は公認会計士として独立したい

早実では理系でしたが、早稲田大学では文系学部の社会科学部に進学しました。研究活動をメインに大学生活を送るのは、自分に合っていない気がしたんです。

大学では、公認会計士に向けた勉強を続けてきました。公認会計士を目指したのは、スキルをつけて、“自分の名前”でビジネスをおこなっていきたいと考えたからです。父がフリーのコンサルタントで、自宅にいながらにして仕事をする姿を見てきたことも、私のキャリア形成に少なからず影響していると思います。大学を1年間休学して公認会計士の勉強に専念したこともあり、1次試験を突破できました。今は、2次試験の結果をハラハラして待っています。

中高で全力を尽くせたから今がある

いま振り返ると、中学受験をして本当によかったと思います。早実の6年間は、やり残したことが見当たらないほど充実していました。高校受験、そして大学受験をして早稲田大学に入学した友人からは、正直うらやましがられることも多いです。早実では受験勉強に時間が取られることがなかったので、好きな男の子が校庭でサッカーしている姿を見るなど、ドラマのような青春を送っていましたから(笑)。

受験勉強から解放されて、大学生活をノビノビ謳歌する学生も多くいます。一方で私は、早実でノビノビ過ごせたぶん、大学では公認会計士という夢に向けて勉強に集中することができました。「今しかできないこと」に全力を傾けられた早実で過ごせた6年間は、私にとってかけがえのない時間でしたね。