塾に通いつめ、模試で手にした偏差値をお守りのように握りしめて挑む中学受験……それが当たり前だと思っていませんか? 実は今、塾も偏差値も必要ない、個性や思考を重視した“新しいタイプの中学受験”がじわりと増えはじめています。思春期の入り口に立ち、微妙な年ごろを迎える小学6年生。彼ら・彼女らの心の成長に寄り添ったゆとりある受験が今、注目を集めています。今回は、関心のある SDGs(※)に特化した入試に挑んだ、ある中学生一家のお話です。
※SDGs…「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標。
- 4年生までは「受験なんて…… 」と思っていた
- 偏差値にとらわれない「幸せな入試」との出合い
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4年生までは「受験なんて…… 」と思っていた
湘南学園に通う江口ひよりさん(仮名・中学生)は、塾に通い詰める受験勉強を体験しないまま、志望校への合格切符を手にしました。「マイペースの娘にはぴったりの進学でした。こんな幸せな受験ってあるんだなって思いました」母親の景子さん(仮名)はしみじみと振り返ります。
小学4年生のころまでは中学受験に関心がなかった、と景子さんは言います。「以前住んでいたところは、教育熱心な人が集まる地域で。周りのママたちが『もちろん受験するわよね』って話しているのを聞いて、なんだか窮屈だな……と思っていたくらいです。その頃はシングルマザーでしたし『受験なんて……』と考えていました」(景子さん)