千本引きと考える|桜井信一コラム「下剋上受験」

専門家・プロ
2014年8月19日 桜井信一

桜井信一ブログ『父娘の記念受験』で過去に掲載されていた記事から、一部を編集して掲載しています。この記事の内容は 書かれたものです。

今夜は「千本引きと考える」というテーマでお話しさせてください。

いや、正しくは「千本引きだと考えた」なのですが。

とりあえずいまいちピンとこない方に実物をお見せします。

千本引き|Google 画像検索

↑画像を見るとわかりやすいです。

手前にはたくさんのひもがぶらさがっていて、どれを引けば欲しいものをゲットできるかはわからないのです。

いつも私のたとえは低俗になってしまいますが、千本引きを例にして娘と算数について話し合ったのです。

一度は解いておきたい算数の問題が大問数にしてあと800問となったとき、私たちは話し合いました。娘は私の電卓でパチパチと計算し、「1日に5問ずつやれば5ヶ月ちょっとで一通り終わるね」と言いました。

そのときの表情を今でもよく覚えています。うんざりしている私とは逆で、「その程度かあ~」という気楽な考えをしていたのです。

本の中でも書いていますが、大問を1日5問解くというのは実はかなりの時間を要します。

制限時間は1問12分であっても初見でいきなりそうはいかない。少し粘ったとして1問20分はかかります。単純計算で5問解くのに1時間40分もかかるのです。

しかしこれは全問正解しての話であって、当然のことながら解けない問題の方が多く、解説をみて理解できるまで解き直しをしていると3時間なんてあっという間なのです。なかなか理解できなくて4時間以上かかることもあります。するとその日の勉強のほとんどが算数だけになることもあるのです。

これが800問もあるというのは、実はとんでもないことなのです。

私の作戦では、まずは一通りを解き終え、復習を済ませ、最後には過去問のような実戦形式のものを練習し、本番に臨むつもりでした。

しかし、復習が雪だるま式に増えていくわけです。

でもやらなければいけない。やらないわけにはいかないのです。

 

これを千本引きにたとえて、娘に話しました。


千本引きのようにひもが千本あるとする。

このなかから4つか5つが実際に入試当日に出題されるわけだ。

同じ色のものがぶらさがっているのは、同じ単元だと考える。赤いやつは速さで、青いやつは図形というイメージだ。

ここから5つだけを選べるとすると受験勉強は要らない。だって、その5つだけを勉強しておけばいいのだから楽勝だ。

厄介なのは「どのひもかわからない」ということなんだ。

でもどうしてもこの5つがどれかを知りたい。要するにどうしてもオレたちは当てなきゃならないんだ。

千本もあるということはわずか0.5%だ。

こんなのギャンブルじゃない。父さんの思うギャンブルというのは50%からなんだ。

今回の受験もせめてギャンブルまで持ち込みたい。もちろん100%がいいけれど、最低でも50%だ。

すると、最低500問は完璧に仕上げないとギャンブルじゃない。

100本のひもしか引けないのに5つを当てようと考えるやつはバカだ。最低500本は引くことができてまだ五分五分なんだ。

「受験本番でたまたま得意な問題ばかりが出てラッキーな子がいた」

そんな間抜けなことをいっている親が掲示板にはいてさあ、父さんはそいつよりはマシだと思っているんだ。オレはそこまで間抜けじゃない。

そのラッキーな子は確かに800問を完璧にはできなかったけれど、500本、つまりギャンブルが成立する位置までは辿り着いたんだ。

これは全然ラッキーな子とは言わない。立派な勝利なんだ。

よく聞けよ。

父さんの経験上、半分を割るゲームは勝てない。

宝くじのようなものでね、めったに当らないんだ。

そんな不確定なものに必死になるやつはそれこそ間抜けだ。まったく計算ができてない。

父さんが一緒になって精一杯に挑戦するというのは、この最低ラインの死守。500問の完璧な状態だ。これは必死になる価値がある。意味がある。これで勝てないときは仕方ない。また次に勝てるときがくるまで待つんだ。

わかったか?
半分は完璧にするんだぞ。
オレと一緒に。

父さんだけができても意味がないし、オマエだけができても意味がない。

父さんは受験できないんだから関係ないと思うだろ?

違うんだ。

オマエが800問できるなら父さんは関係ないけれど、500問なら関係あるんだ。

「ここも押さえておこうぜ」「あの問題をもう一度やっておこうぜ」ってときに、父さんもギャンブルのレベルに達していなければアドバイスが的確じゃないんだ。

500問を完璧にするためには、500問だけ解くわけにいかない。だから千本引きにいく。

こんな短期間で千本も引くとな、途中でひもがからまったりして引けないやつがある。結局、500本程度しかうまく引けないんだ。

これは、絶対なんだ。

どんなにエライ学者が反論しても父さんが絶対だ。学者なんて所詮カネを賭けてない。リアルにギャンブルしたことなんてない。千本を地道にコツコツと確実に引いた経験があるだけで、ギャンブルに出たことがないんだ。だから経験不足なんだ。

オレたちは時間がない。だからひもがからまったらそれを引くのはやめる。

でも最低500本は引こう。それもなるべく色違いで引きたい。おなじ色ばかり引くのは得策じゃない。

どうだ?
父さんの話、うまく理解できたか?
やる気になってくれたか?


手に汗握り熱弁する私に娘はこう言いました。

「父さん、早く勉強しよーよ」

2014.8.19 am 2:00

桜井信一

※記事の内容は執筆時点のものです

桜井信一
この記事の著者
桜井信一 専門家・プロ

オンライン塾「下剋上受験塾」主宰。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。 娘の下剋上のために一念発起して小5の勉強からやり直す。塾には行かず、父娘の二人三脚で偏差値を41から70に上げ、100%不可能とされた最難関中学「桜蔭学園」を目指した。その壮絶な受験記録を綴った『下剋上受験』はベストセラーに。 2017年1月には待望のドラマ化。学習講座「桜井算数教室」「国語読解記述講座」にはのべ2000人の親子が参加し人気を博した。2020年、オンラインの「下剋上受験塾」を立ち上げた。

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