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乾球温度・湿球温度とは? 温度差から湿度がわかるのはどうして?

2019年9月17日 ゆずぱ

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中学入試の理科分野では、乾球温度(計)と湿球温度(計)に関する問題が出ることがあります。ふたつの温度から湿度がわかるのですが、「乾球温度計と湿球温度計を使うと、なぜ周りの空気の湿度がわかるのか?」を、子供たちは意外と理解していないようです。入試では、記述式で解答させる問題も出ていて、しくみや原理を理解しておくことが必要です。そこで、以下の3つの基本事項をおさえておきましょう。

基本[1]水が蒸発すると熱がうばわれる

コップに水を入れて部屋に置いておくと、水のかさは少しずつ減っていきます。水はただ置いておくだけでも自然と蒸発していくからです。そして、水が蒸発すると熱がうばわれます。これが、乾球温度と湿球温度を押さえるための1つめの基本です。

水が蒸発するイメージをつかむ

水が蒸発する様子を、イメージでつかみましょう。「水が蒸発する」というのは、水面から空気のなかへ水の粒がユラユラのぼっていくイメージです。そして、水が蒸発する量が多ければ多いほど熱がうばわれ、温度もガンガン下がっていきます。逆に、全く蒸発しないときは、温度はほぼ変わりません。

乾球温度計と湿球温度計で起きていること

水が蒸発するときに、乾球温度計と湿球温度計で起きていることをみてみましょう。

乾球温度計は、いわゆる普通の温度計です。湿球温度計は、普通の温度計の先端を、湿ったガーゼで包んだものです。湿球温度計の先端では、水が蒸発しているので熱がうばわれています。そのため、湿球温度計のほうが温度が低くなります。

基本[2]空気が持つ水蒸気には限界がある

部屋に置かれたコップのなかの水は、自然と蒸発を続けます。しかし、空気が持つことができる水蒸気の量には限界があります。そのため、周りの空気が限界の状態だと、水は蒸発しません。これが2つめの基本です。

「湿度100%」は、空気が限界まで水蒸気を持った状態

空気が水蒸気を持つ様子を、イメージでつかみましょう。空気中に水蒸気が少ししか存在せず余裕がある状態から、限界まで水蒸気を含んだ状態までを考えます。

水蒸気を限界まで持ってしまうと、空気は水蒸気をこれ以上持つことができません。この状態が、いわゆる「湿度100%」です。

それぞれの状態でコップの水はどうなる?

湿度が低い空気は、持つことができる水蒸気の量にまだまだ余裕があります。そのため、コップの水は蒸発します。一方、湿度100%の空気は、水蒸気をこれ以上持つことができない限界の状態なので、コップの水は全く蒸発しません。

基本[3]気温が高いほうが水蒸気を多く持てる

同じ大きさの空気でも、冷たい空気と暖かい空気では、持てる水蒸気の量が異なります。そして、暖かい空気のほうが多くの水蒸気を持てます。これが3つめの基本です。

暖かい空気は、多くの水蒸気を持てる

同じ大きさの空気であっても、持てる水蒸気の量には大きな違いがあります。冷たい空気は、ちょっと水蒸気を持っただけですぐに限界がきてしまいます。一方で、暖かい空気はたくさんの水蒸気を持てます。

気温と限界の水蒸気量の表

気温によって限界の水蒸気量が異なることを表にすると、シンプルな表になります。

※表の数値は、参考値です

たとえば、20℃の空気1㎥は、17.3gの水蒸気を持つことができることが表から読み取れます。この限界の水蒸気量を「飽和水蒸気量」と呼びます。

3つの基本で原理がわかる

説明のまえに、3つの基本をおさらいします。

基本[1]水が蒸発すると熱がうばわれる
基本[2]空気が持つ水蒸気の量には限界がある
基本[3]気温が高いほうが水蒸気を多く持てる

3つの基本を押さえると、「乾湿計で周りの空気の湿度がわかる」原理を理解できます。

いちばん左の図を見てください。乾球温度計と湿球温度計の温度差が大きいですね。これは「湿球温度計の温度がガンガン下がっている」、つまりガーゼの水がガンガン蒸発していると考えられます。水が自然と蒸発するということは、周りの空気の湿度が低いということです。

一方、右の図のように乾球温度計と湿球温度計の温度差が全くない場合はどうでしょう?湿球温度計の温度が下がっていないので、ガーゼの水が蒸発していないと考えられます。そのため、周りの空気はもうこれ以上水蒸気を持てない状態、つまり「湿度100%」であると考えられますね。

乾球温度計と湿球温度計の温度差から湿度がわかる表

下の表をみると、乾球温度計と湿球温度計の温度差から湿度がわかります。

※上記の表の数値は、参考値です

たとえば、乾球温度計が18℃、湿球温度計が16℃だった場合は、温度差は2℃です。この場合、空気の湿度は80%であると表から読み取れます。

まとめ

乾球温度計と湿球温度計から湿度がわかる原理を説明しました。中学入試ではこのことを記述で答えさせる問題も出ているので、しっかり押さえておきましょう。そして、この原理を正しく理解するためには3つの基本が重要です。基本を理解したうえで、入試対策に取り組めると良いですね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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