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6年生の夏、受験生の夏。効果的な過去問演習とは?|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2022年7月12日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

前回に続き、6年生の夏休みの学習のポイントを小川先生に伺います。夏休みは、塾の総合演習、夏期講習と並行して、過去問演習に取り組むお子さんもいらっしゃると思います。そこで今回は、理科の力をアップさせるための過去問演習の効果的な取り組み方をお伝えします。

過去問演習で分野ごとのまとめをする

過去問演習には、大きく2つのやり方があります。

ひとつは学校ごとの過去問演習です。これは、自分が志望する中学校の入試でどのような問題が出たのかを知り、現時点での自分の実力を測るために行う子が多いと思います。

もうひとつは分野別の過去問演習です。こちらは、いろいろな学校の過去問が収録されている問題集、たとえば「銀本」(みくに出版が刊行している『中学入学試験問題集』)などを使い、生物・地学・化学・物理の分野ごとに、いろいろな学校の大問を探して解く演習です。

分野別の過去問演習は、理科の各単元を学び終えたこの時期、まとめをするのに有効です。たとえば天体でこれまで太陽、月、星についてそれぞれ個別に理解していたとします。入試では、太陽、月、星に関してそれぞれ個別に聞く問題だけでなく、太陽と星の動きを合わせて考える問題などが出題されることがあります。こうした問題を解くことで太陽、月、星がどのように関連しているのか理解が深まります。同様に力学であれば、てこ、ばね、滑車をまとめて考えたり、生物であれば、植物と昆虫の関わりを考えたり……といったように、入試に向けてこれまで学んできたことを総合的、体系的に理解していくのに役立ちます。

基本問題で基礎知識の見直しをする

過去問演習を行う際は、理科の入試問題がどのように構成されているかを考えてみることも大事です。私の分析では、理科の入試問題は「基本問題」「思考問題」「時事問題」に大別されます。

この中で「基本問題」とは、小学校の教科書を中心に基本的な知識を覚えているかどうかを問う問題で、たとえば下記のようなものが問われます。

・植物の名前や花のつくり
・昆虫のからだのつくり
・小学校の授業で扱う実験器具の使い方
・水溶液の性質
・天体の名前や特徴……など

基本的な知識については、覚えなければいけないものは限られています(詳しくは次回のコラムでもお伝えします)。たとえば植物については、小学校の教科書にたびたび出てくるものについて特徴を覚えます。

ここで注意すべきことは、過去問を解いていて知らない動植物などが出てきたからといって、アレもコレも調べて暗記しようとしないことです。小学校の理科について一通り学んでいれば、よく出てくる動植物はおおよそ見当がつくと思いますから、基本的なものを覚えていない場合のみ見直してください。

ただし例外的に一部の中学校では、覚える範囲が広くなるところもあります。たとえば慶應義塾普通部の2022年入試では、「すみれ」について詳しく聞く問題が出ました。このように一部の教科書には載っている生物で身近なものに関して知識を聞く問題も時々見られます。だからといって、膨大な量を記憶する必要はありません。

積み上げ問題で応用力をつける

「思考問題」は2つに分かれます。ひとつは「積み上げ問題」で、もうひとつは「ゆるがし問題」です。

「積み上げ問題」とは、小学校や塾で学習したことをベースに、表やグラフ、図などを読み取りながら問題に答えていく、いわゆる応用問題です。

多くの学校の理科の入試問題は「積み上げ問題」が中心で、これが解けるかどうかが出来を左右します。

「積み上げ問題」の代表的な例として、女子学院中の入試問題が挙げられます。たとえば2022年の大問2(生物)では、導入部分でアサガオ、アブラナ、ヘチマの基本的な特徴を訊ねてから、植物の受粉について写真を見ながら考えさせました。さらに、花粉の発芽の様子を観察した文章や図を見て発芽率などを求めさせ、最後に実験からわかることを答えさせました。植物の受粉から発芽をテーマに、小学校や塾で習ってきた知識をベースに掘り下げて考えさせる問題です。

「積み上げ問題」は、これまで習ったことがないテーマはなく、理科の各単元について理解ができていれば、そこから思考して解くことができます。問題を解くうえで、表やグラフを読み取る力、条件やデータを整理する力、計算力などが求められます。

ちなみに女子学院中は近年、すべての大問が「積み上げ問題」です。良問揃いですから、「積み上げ問題」に重点的に取り組むなら、同校の理科の過去問を解いてみるのはおすすめです。

ゆるがし問題で初見のテーマに強くなる

もうひとつの思考問題である「ゆるがし問題」とは、小学校や塾で学んでない「初見のテーマを扱った問題」です。近年の理科入試では、「ゆるがし問題」を出す学校が増えてきました。2022年の入試でいうと、たとえば下記のようなテーマが扱われました。

●海城中
マグロの生息場所・特徴、食性、減少理由などについて書かれたリード文を読んで問題に答える。

●渋谷教育学園渋谷中
植物の枝の伸び方、葉の付き方の規則性を考える。

●早稲田高等学院中
電磁誘導に関する文章と図を踏まえて問題に答える。

●早稲田中
地層の分布を上空から見た図をもとに断層の状態などを考える。

●東邦大学付属東邦中
植物の屈性(刺激の来る方向に対して、決まった方向に曲がって成長する性質)を考える。

●渋谷教育学園幕張中
新型コロナウイルスに関するアミノ酸の配置を考える。

「ゆるがし問題」は、受験生にとって初見のテーマであることが多いため、リード文や問題文が長い傾向にあります。そのほか、小学校や塾の授業で扱わない装置を使った実験が取り上げられたり、見たことがない図表やグラフが扱われたりするのも特徴です。

「ゆるがし問題」に強くなるためには、過去問演習を通して、リード文の要点をつかんだり、データから法則やルールを見つける訓練が必要です。

受験生にとっては初見のテーマで、一見しただけで難しそうに感じられますが、きちんと読めば理解できるものも多いのが「ゆるがし問題」です。ただ、それは裏を返すと攻略に読解力が必要ということです。

「ゆるがし問題」を攻略する読解力をつけるためには、前述した「銀本」でいろいろな学校の国語の入試問題を読むことをおすすめします。問題は解かなくてもよいので、科学や生物などの説明文・論説文をじっくりと読んでみてください。

理科の過去問演習は、上記のように取り組む問題を決めて、いろいろな学校の問題を解いてみるとグッと力がつきます。ぜひ参考にしてみてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。