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理科学習では、何を覚えるべきか?【前編】|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年7月15日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

理科は暗記教科と考えている親御さんは多いようです。しかし小川先生は、「暗記すべき事柄は限られていて、その数はみなさんが思っているよりも少ない」と言います。では、何を覚えるべきなのか? 今回は生物分野を例にお話しいただきます。

最低限覚えなければいけないものは?

理科学習は「とにかく暗記しよう、覚えよう」という姿勢の子がいます。しかし、なんでも暗記するのは、ちょっと違うと私は思っています。この連載で何度かお伝えしていますが、近年の入試は記憶力を問う問題は減少傾向にあり、理科的思考力を測る問題が増えています。

理科の中でも特に生物分野は、植物や昆虫をたくさん覚えなければいけないと考える受験生が多いようです。たしかに入試問題では、あまり聞いたことがない生物が出てくるケースもありますが、そのような生物がテーマの問題は、リード文でその生物について説明されることが一般的です。また、選択問題で聞いたことがない生物の名前が出てくることもありますが、このような場合も基本的な生物を覚えておけば正しい選択ができるケースが少なくありません。

ここで言う基本的な生物とは、小学校の教科書にたびたび出てくるものです。

下記の図は小学校の3~6年生の教科書における生物の名前の頻度を私がまとめたものです。この中で、どの教科書でもまんべんなく扱われ、かつ頻度が高いものが最低限覚えるべきものです。

※画像をクリックで拡大可能

※黄色のマーカーは、3学年以上の教科書に出てくる場合

では最難関校の理科の問題では、どのような生物が取り上げられるのでしょうか? 2022年の入試問題を分析した一部を紹介します。

太字は上記の表に挙げた生物です

開成

ナズナ・シロツメグサ・カラスノエンドウ・アサガオ・ホウセンカ・ヘチマ・タンポポ・メマツヨイグサ

シロツメグサとカラスノエンドウは花の形を覚える必要がある。メマツヨイグサはイラストが示されていて知識がなくても答えられる。

麻布

酵母菌・麹菌・新型コロナウイルス

酵母菌と麹菌は、発酵をテーマにした大問で取り上げられ、リード文で菌の説明がなされている。新型コロナウイルスは時事問題として最低限の特徴は理解しておく必要がある。

武蔵

バッタ・コウモリ・ヒト・タンポポ・ニワトリ・トウモロコシ・カブトムシ

コウモリに関する問題は、ほ乳類の成長過程について最低限のことを知っていれば答えられる。ニワトリについては、ヒトとトウモロコシとの成長の違いを問う思考問題なので日常的な知識範囲で答えられる。

桜蔭

ゾウリムシ・ザリガニ・メダカ・カエル・イモリ・ハムスター・メキシコサンショウウオ

イモリ、ハムスター、メキシコサンショウウオは大問のテーマになっていて、リード文と図表を読めば理解できる。

女子学院

アサガオ・アブラナ・ヘチマ

雙葉

オオカナダモ

オオカナダモが大問のテーマになっていて、葉のつくりなどは図で示されている。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

上記は一例ですが、最難関と言われるこれらの学校でも、小学校の教科書に出てくる生物が基本で、そうでない場合はその生物について詳しい知識がなくても問題が解けることを感じていただけると思います。

まず何から覚えればよいのか?

さて、小学校の教科書にたびたび出てくる生物を覚える場合、何から覚えればいいのでしょうか。植物は、発芽のようすや花のつくり、昆虫はからだのつくりや育ち方を知る必要があります。

覚えるときは、植物や昆虫をアレもコレもと覚えていくのではなく、まずそれぞれ一つに絞り、きちんと“幹”をつくることが必要です。

私が考える、最初に生態やつくりをしっかり覚えるべき生物はアブラナとモンシロチョウです。

アブラナには下記のような特徴があります。

  • 春に咲く代表的な花である
  • 花のつくり(花びらとがくの枚数、おしべの数)が、教科書によく出てくる他の植物と違う

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上の表を見ていただくと、他の植物の花びらとがくの枚数、おしべの本数が、ほとんど5であるのに対して、アブラナだけが特殊で、花びらとがくは4枚、おしべは6本です。

このように “よく取り上げられるけど、例外的なもの”を優先して覚えるのも一つの方法です。

モンシロチョウは、教科書に出てくる代表的な昆虫であり、アブラナと深い関わりがあります。モンシロチョウはアブラナ科の植物に卵を産みつけ、幼虫のアオムシはアブラナ科の植物の葉を食べて育ち、成虫はアブラナ科の花の蜜を吸います。

さらにモンシロチョウは、完全変態(幼虫、さなぎ、成虫と姿が変わる)する昆虫の代表でもあります。育ち方や、幼虫・成虫のからだのつくりがどうなっているかを覚えることで、カイコやカブトムシなど他の完全変態する昆虫への理解も深まります。

このようにアブラナとモンシロチョウについてきちんと理解したうえで、こんどは他の花や不完全変態する昆虫について学ぶことで違いが明確になり、理解しやすくなります。

最後に、植物や昆虫については教科書を図鑑として扱い、可能なら実物も観察するとより理解が深まります。

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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。