中学受験ノウハウ 親の関わり方

「受験うつ」とは? 親が知っておくべき予防法と対策法

専門家・プロ
2018年4月24日 宇田川大輔

中学受験に挑戦する子供たちは、プレッシャーとストレスを感じる機会も多いものです。そんな中、近年の受験生の間で急増化している問題のひとつに「受験うつ」があります。受験生専門の心療内科「本郷赤門前クリニック」の吉田たかよし先生によると、受験うつは受験勉強のプレッシャーやストレスだけでなく、ゲームやスマホとの付き合い方も大きな要因になっているといいます。さらに、脳の発達に良くない間違った勉強法が日常化している状態も危険。それが受験うつを引き起こす原因になるといいます。ここでは、受験うつについて、吉田たかよし先生にその予防法と対策を伺いました。

現代っ子に急増中の「受験うつ」

受験うつについては、従来の「うつ」のイメージとは異なるものとして、とくに親は認識を新たにしておく必要があると吉田先生。兆候や症状をいち早く見極め、すぐに対処することが求められるのだそうです。

「受験うつ」になった場合に見られる症状とは

もし、子供が「受験うつ」になったら、 具体的にどのような兆候や症状があるのでしょうか。

「代表的なのは、ある日突然成績が急降下することです。今まで解けていたような簡単なテスト問題も、解答が全然わからなくなる場合も多いですね。

また、イライラが顕著に出てしまったり、もっとエスカレートすると親への暴言や暴力にまで発展してしまうこともあります。うつというと一般的にふさぎがちになるようなイメージを持つ人も多いかもしれませんが、普段はまじめでおとなしい子や女の子でも、急に言動が荒くなるようなことがあれば受験うつの可能性があると覚えておいてください。荒っぽい行動などは、親から見ると活発で元気すぎるだけ?という印象に映り、うつとは思わずに見逃しがちですが、そこはなるべく早く家族が気づいてあげてほしいポイントです。受験うつになると、不眠や過眠状態を招き、睡眠のコントロールが困難になることもあります。その結果、質の高い睡眠がとれなくなってしまい、勉強の効率や学習のパフォーマンスが落ちてしまう場合が多いのです」(吉田たかよし先生)

スマホやゲームも「受験うつ」に影響する?

現代の小学生にとって、スマホやゲームは幼児期からとても身近な存在になっています。これらのツールにも「受験うつ」につながる危険性がひそんでいると吉田先生はいいます。

「スマホやゲームを操作している時間は、脳が視覚や聴覚による強い刺激を受け、非常に高い活動状態に入っています。フル稼働している脳は、やがて疲れを感じはじめ、休息を求めてきます。しかし、スマホやゲームの刺激や快楽を感じていると、休息を求める脳のサインに脳自身が気づかず、操作を続けてしまうということが起こりやすい。そうなると、脳の疲れが慢性的になり、その影響で受験うつを引き起こす場合も少なくないのです」(吉田たかよし先生)

また、スマホやゲームによって対人コミュニケーションが減ってしまうことも懸念点だと指摘します。たとえば、幼児期に友達とあそぶという体験は「自分の思い通りにいくことばかりではない」という現実を教えてくれます。そこから自分にふりかかるストレスの感情を自分なりに対処して乗り越えられるように脳が発達します。ストレスをコントロールできる能力は、こうして自然に磨かれていく仕組みになっているのだそうです。スマホやゲームなどに依存して対人コミュニケーションが減ってしまえば、受験勉強にも悪影響が出ることは容易に想像がつきそうです。

「日常的にスマホやゲームと過度に触れ合っていると、厳しい受験勉強からくるストレスへの対応能力が低下し、さらに脳が疲弊して脆弱になってしまうので、十分に注意してください」(吉田たかよし先生)

子供が「受験うつ」になってしまったときのベストな対処法とは

子供の成績が急低下した、または、親への暴言・暴力などが見られるようになったなど、いつもとちがう様子に気づいたら、「受験うつ」の可能性があることはお伝えした通りです。ではそうなった場合、どのような対処方法をとればよいのでしょうか。

「お子さんが18歳以下、特に脳が発達段階である12歳以下の場合は、健康面を考慮してみても、安易に抗うつ剤などの薬剤に頼るのは危険です。まずは、受験勉強のやり方や日常生活を見直し、必要ならしっかりと休ませることが先決です。それでも症状が良くならなかったときは、専門の医師の診療をきちんとと受けてください」(吉田たかよし先生)

また、親による受験勉強の押し付けが、子供にとって一番危険だと吉田先生はいいます。

「記憶やテクニックだけ無理やり詰め込むような受験勉強を続けていると、今は良くても後の大学受験時などに、深刻な重度の受験うつを招く危険があると指摘されています。親の強い押し付けによる不自然な勉強方法ではなく、お子さんの脳にとって、常に健康的かつ正しい受験勉強のやり方を理解し、実践させてあげてください。子供が前向きに取り組めるような、心身ともに健康な受験勉強ができれば、それは中学受験の合否に関わらず一生の財産になると思います」(吉田たかよし先生)

「受験うつ」は早く気づいて適切な対処を。

中学受験期は子供にとってストレスを抱える機会が多いのは事実。ストレスがうまくコントロールできなくなると「受験うつ」になる可能性はどの子にもあるといえるかもしれません。そんなとき、一番近くでみている家族がいち早く気づき、適切な対処をすることが、納得のいく受験をするためにもとても重要のようです。

日々の学習内容や量に無理はないか、日ごろと様子がちがうところはないか、常にていねいな視線で見守りたいものですね。

※記事の内容は執筆時点のものです

吉田たかよし 専門家・プロ

医学博士・心療内科医師。灘中学、東京大学、国家公務員上級経済職試験、医師国家試験などの合格体験を元に、日本で初となる受験生専門の心療内科、本郷赤門前クリニックの院長を務める。カウンセリングと最新の磁気刺激治療を組み合わせ、「受験うつ」から早期回復を図るプログラムを開発。脳科学と医学を応用した受験指導にも取り組む。『合格させたいなら「脳に効くこと」をやりなさい』(青春出版社)など著書60冊を上梓。

本郷赤門前クリニック
https://www.akamon-clinic.com/

この記事の著者

ライター・エディター・フォトグラファー/ファッションからビューティ、カルチャー、ライフスタイル系雑誌&WEBなどを手掛ける。現在、雑誌『LOADED』『NAIL VENUS』『美歯Navi』などの編集長を務めている。
http://m3-mag.jp