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志望校ってどうやって決めるの?2【熱望校がすぐに見つからなくても大丈夫編】|低学年のための中学受験レッスン#12

専門家・プロ
2023年4月17日 宮本毅

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前回は「熱望校」についてお話をしましたが、そんなに情熱を傾けられる学校ってなかなか見つからないものですよね。

では、熱望校がないと中学受験できないの?

いえいえ、決してそんなことはありません!

恋愛と同じで「運命の相手にビビッと来て一目ぼれする」こともあれば、「じっくりお付き合いして徐々に愛を育んでいく」こともあるでしょう。

たとえ「熱望校」がすぐに見つからなくても、焦る必要はありません。

志望校づくり3つのポイント

では一体、志望校はどうやって絞り込んでいけばいいのでしょうか。ポイントを3点あげてみます。

1.重視すべきは「距離」ではなく「距離感」

まず一つ目は「自宅からの距離感」です。「距離」ではなく「距離感」と書いたことに注目ですよ。

たとえ、地図上では同じ距離にあったとしても、ぎゅうぎゅう詰めの上り電車で通学するのと、下り電車でゆったり座って通学するのとでは、学校までの「距離感」は変わってくるはずです。

ですから「この学校いいかも」と思ったら、朝の通学時間帯に、保護者の方は一度「通学疑似体験」をしておくべきであると考えます。

何しろお子さんが6年間通うわけですからね。大人が「これはきついなー」と感じるなら、お子さんだってきっと通うのはつらいでしょう。

2.校風と指導理念は入念にチェック

二点目は、校風や雰囲気、指導理念ですね。

こちらの記事で「説明会や文化祭ではなく、下校時間にお子さんを連れて学校見学に行ってください」とお伝えしました。実際に肌で感じた学校の雰囲気は、6年間通う上ではとても重要な要素となりえます。

また、学校の指導理念は「保護者の方がお子さんをどう育てたいのか、どんな大人になって欲しいのか」に深くかかわることですので、必ずチェックしてください。

たとえば将来「我が子には偏差値やブランドにこだわらず、視野を広げて国内外の大学の中から選択肢を見つけてほしい」と願うなら、「うちはバリバリ勉強させて上位大学を目指させます」と進学実績第一主義の学校は合わないはずです。

校風や雰囲気と合わせて、その学校の指導理念や指導方針は必ずチェックしてみてください。

3.直観に勝るものなし

三点目は、やはり「直感」が重要だということです。「それってあなたの感想ですよね」なんて批判されても、私は自分の直感を信じるべきだと思っています。

すなわちホームページなどを見て、直感的にお子さんと保護者の方が「この学校に行きたい」と思えるかどうかが重要なのです。

たとえば「校舎がきれい」でもいいですし、「制服が可愛い」でもかまいません。気に入ったところがない学校は志望校としては不適格だと思うのです。

本当はすべての候補を見に行くのがべストですが、現実的にはなかなか難しいので、学校を選別する第一段階としてはホームページでチェックすればよいと思います。

志望校はたくさんあった方が無敵になれる!

「志望順位」のことについてもお話をしておきたいと思います。

志望順位とはいわゆる「第一志望・第二志望・第三志望…」のことですが、私はこの考え方には否定的な意見を持っています。

昔は「第一志望はゆずれない」なんてキャッチコピーが流行ったりしましたが、価値観がここまで多様化した現代において、この考え方はやや「古臭い」感じがしませんか?また「偏差値の高低」について論じるのもちょっと時代遅れな感じです。

私はもっとざっくりでいいと考えています。熱望校だって3~4校あっていいし、第一志望も1校だけでなくて複数あってもいいと思います。

それらを第一志望群と呼べば、「何が何でもこの学校に入らなくちゃ(合格させなくちゃ)」と変なプレッシャーを感じることもなくなります。

「こっちの学校も素敵だし行けたら嬉しいよね」と思える学校が手の届く偏差値帯にあれば、中学受験もグッと楽になるでしょう。

はじめての志望校は低めに設定するのがカギ

そしてこれは声を大にして言いたいのですが、最初の志望校を「低く設定」するご家庭の方が、中学受験は上手くいきやすいのです。

これは20年以上中学受験に携わってきた私が到達した「真理」です。

どういうことなのか詳しく説明していきますね。

偏差値60~は、ごく限られた上位層であるとお忘れなく

塾の先生はよくこんな風に言いませんか?

「志望校はできる限り高く設定しなさい!そうしないとその志望校レベルには決して届きませんよ」と。

私も自分が中学受験した当時は塾の先生からこのように言われましたし、私自身もかつては子ども達にそのような指導をおこなっていたことがあります。

確かに、成績優秀な子たちは競争が好きですし、高い目標を持てばそれだけ頑張って実力を伸ばしていけるでしょう。

しかし現実には、偏差値60以上の生徒は、理論上たったの16%。サッカーや野球でたとえると、フィールドを駆け回っている約20人のうち、偏差値60以上の選手はたったの3人なんです。

それが「偏差値60」という世界です。このことをご理解いただいてない保護者の方は結構多いです。

高すぎる目標は自己肯定感を削っていく恐れも

つまり、「高い目標」がひょっとして「高すぎる目標」になっていやしませんか?という話なのです。

特に中学受験のようにタイムリミット(入試日)が決まっている場合、目標を高く設定しすぎると、満足できる結果をなかなか得られず、焦燥感を増大させてしまいます。親は我が子に失望し、子は自分の能力に失望します。やがては自己肯定感の低い人間に育ってしまい、人生の困難に立ち向かえなくなってしまいます。

また、初期目標が高すぎると途中で目標を下げざるを得なくなり、大きなモチベーションの低下につながります。モチベーションの低下はさらに学習効果を下げますので、一層成績が上がらない状況を作り出してしまう、いわば「負のスパイラル」に陥ってしまいます。

さらに、親が子の実力以上の結果を期待しすぎると、子は焦って「カンニング」などの不正をおこなってしまうということも起こりえます。こうなってしまうと、その後の人生に対して重大な影響を及ぼしてしまうでしょう。

一方、目標を低く設定している生徒や保護者は、比較的簡単にその目標をクリアできます。

「目標をクリアした途端、子どもは満足して勉強をやめてしまう」なんて嘘っぱちです。目標をクリアできた子どもはモチベーションを高め、さらなる目標を求めるものです。

また、保護者の方も、子どもに対しより肯定的な声掛けが可能になります。保護者の方自身の精神安定にもつながり、健全な中学受験が可能となるわけです。

こうした受験期間を経た親子は結果に対する満足度も高いので、中学進学以降も良好な親子関係を保てるのです。

まとめ

偏差値でものごとを見るのはもう古い。表面的な「映え」がやたら重視される世の中ですが、だからこそ、親も子も本質を見抜く力を持ちたいものですね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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