中学受験を意識する家庭がタブレット学習で注意すべきこと |低学年のための中学受験レッスン#20
コロナによる休校をきっかけに、オンライン学習の導入が一気に進みました。
今やどこの小学校でも、タブレットでお勉強するのは当たり前になっていますね。
ITネイティブ世代の子どもたちにとって、タブレット端末やインターネット、チャットGPTといった最先端の技術は、使いこなせて当たり前。
むしろ、使いこなせないと時代に取り残されてしまいます。
とはいえ、親の時代とは違う学びの環境に、不安や疑問を感じる保護者さんもいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、お子さんがタブレット学習をする際の注意点についてお伝えしていきます。
タブレット学習のメリット
タブレット学習には以下のようなメリットがあります。
- 文章を読むだけより、動画や音声を使うことで子どもの学習意欲を高めやすい
- 自動で採点してくれるのでやりっ放しにならない
- 重い教材をたくさん持ちだすことなく、外出先でも手軽に学習できる
- 子どもの学習状況や理解度が可視化される、保護者が現状を確認しやすい
これらのメリットはいずれも画期的で、従来型の学習を一気に変質させます。
教科書がデジタル化すれば重いランドセルを背負う必要はなくなりますし、ドリルやプリント類を荷物に詰め込まなくても、タブレットさえあれば旅先で夏休みの宿題ができるようになるかもしれません。
また、この宿題の進捗状況も、昔なら把握すること自体が手間のかかる作業でしたが、タブレットを開けば一目瞭然。誤魔化しは効かなくなります。夏休みの最後の週に「ヤバイ!忘れてた!」と慌てることも少なくなるでしょう。
タブレット学習は、私たちに計り知れない恩恵を与えてくれる。ここに疑問の余地はありません。
タブレット学習のデメリット
一方で、タブレットを使った学習にもデメリットが存在します。
一般にいわれているような「視力が低下する」「勉強したつもりになって何も身につかない」「他のゲームなどで遊んでしまう」などももちろん問題ではありますが、私はそれ以外にもっと大きな問題が潜んでいると感じます。
それはタブレット教材の最大のメリットである「手軽でわかりやすい」ことに起因しています。
一体どのようなことなのでしょうか。
「視覚的にわかりやすい」に潜むワナ
タブレット学習では、様々な問題について、図や動画を使ってわかりやすく説明してくれます。
たとえば算数の円の面積の項目では、アプリ上に円やおうぎ形の図が示されていて、分割したり色分けされたりと、視覚的にわかりやすい解説である場合がほとんどです。
ビジュアルに特化している分、子ども達はパッと見ただけで感覚的に理解できてしまいますので、自分であーでもないこーでもないと試行錯誤する必要はありません。
学校や塾の授業ではわざわざ先生の板書をノートに写し取ってこなければなりませんが、タブレット学習ではそうした手間は一切かかりません。
とても楽で、いいことづくめですよね。
しかし、先生の板書を写すという作業は面倒くさいことではありますが、その作業自体が脳のトレーニングには必要なことであるともわかっています。
手は「第二の脳」といわれ、脳と深いつながりがあります。指先を動かすことで、脳の血流量が増え、脳が活性化するのです。
しかしタブレット学習が普及することで、その機会が激減する恐れがあるのです。
なにしろ手間暇かけて先生の板書を写す必要がないのですから。毎日板書に15分かかっていたとすると、実に年間75時間も指先を使う時間が減ってしまう計算になります。
事実、私の塾に通う生徒の多くは、先輩たちと比べ、図を書くことが苦手な生徒が増えたように感じます。
板書を写させても図はひん曲がり、文字は小さくゆがみ、明らかに「書く」という作業が不得手な感じです。
そして図を書くことを面倒くさがる子ほど、算数や理科といった理数系の学習が苦手です。
明らかな影響があると感じています。
デュアルタスクへの対応力を鍛えるトレーニングを積もう
脳を活性化するには「デュアルタスク(マルチタスク)」が重要であるといわれています。
アルツハイマーの治療にも取り入れられているトレーニングのひとつに、左手の人差し指で空に四角形を描きながら、同じリズムで右手で三角形を描くというものがあります。
やってみるとめっちゃ難しいのですが、これが脳に効くんです。つまり二つの別の作業を同時におこなうんですね。
板書を写すという行為は、目で板書情報をインプットしながら、手でそれを書くという作業をおこなっていますので、「デュアルタスク」であるといえます。
この作業が、タブレット学習により著しく減少するわけです。
タブレット学習のデメリットのひとつに「考える力が身につかない」というものがありますが、それ以上にもっと根本的な部分で、脳のトレーニングの機会が失われていく危険性があるのです。
そこでぜひやっていただきたいのが、タブレット学習をしながら画面を一時停止して、板書を取る要領でノートに書き写しをさせること。
例えば、動画で示されている図形の解説を、静止画の状態で実際に自分の手で書かせてください。
学習のポイントや重要な部分も日本語でノートに書かせるようにしましょう。
そうした作業を習慣化させることで、指先運動やデュアルタスクのトレーニングを積ませましょう。
それに加えて、折り紙やそろばん、ピアノなど指先の繊細な動きを必要とする活動をぜひ取り入れてください。
タブレット上でスワイプしているだけでは、脳のトレーニングが圧倒的に足りていませんよ。
まとめ
ここまで、タブレット学習のメリット・デメリット、そしてこの新しい学びのツールによって失われる学習機会についてお伝えしてきました。
教育現場がアナログからデジタルへ移行する過渡期ともいえる今、保護者である皆さんに求められるのは、両者の一長一短をよく理解しておくこと。
そもそも中学受験の入試は紙に書かれた問題文を読み、紙に文字を書いて解答するアナログ方式が今も中心です。
将来的に中学受験を検討するなら、アプリのように親切ではない問題文を読解し、手を動かして解答を記入するトレーニングは、欠かすことができないと考えてくださいね。
デジタル化のメリットは十分に享受しつつ、不足する部分を上手に補おうとする意識を持って向き合いましょう。
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
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