中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

公立中高一貫校の併願校はどう決める?選び方のポイント|公立中高一貫校合格への道#8

2023年10月04日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

今回は、併願校の選び方や、スケジュールの組み方についてご紹介していきます。

今の時期(10月)は、第一志望に向けて様々な課題が見つかり併願校について考える余裕がないタイミングではあるのですが、受けるか受けないか、どう決めるべきか、そろそろ考えておいた方が良い時期です。今回の記事をぜひ参考に予定を組んで頂ければと思います!

まずは、併願校の決め方のポイントをお伝えしていきますね。

【併願校の決め方】ポイント①目的を明確に!

併願校、練習校、前受け校、第二志望校……、様々な呼び方はありますが、この記事では、進学意思の有無に関わらず、公立中高一貫校を受けるご家庭が第一志望とは別に出願する私立中学を、「併願校」として定義します。

併願校を受ける目的は、大きく3つに分けられます。(このうちの一つだけ、ではなく、複数当てはまることもあります)

1つ目は、本命前に緊張に慣れさせるため。いわゆる、「場慣れ」目的です。

2つ目は、本命前に一勝、つまり合格を貰って、自信を持たせる目的です。

3つ目は、進学先の有力候補としての受験です。

いずれにしても、これまで何カ月も、何年も頑張ってきた受検勉強のゴールを高倍率な公立中高一貫校一択にしない、という点は共通しています。

練習目的で受けさせる場合は、緊張に慣れさせる目的以外にも、1月早々に併願日程を組むことでお正月気分を切り替えさせる目的もあります。

「場慣れなら模試でもできる」という考え方もあるのですが、全く知り合いもいない状態で、初めての会場で合否の出る試験を受けるというのは、模試とはまた異なる緊張感があるものです。

12歳の子供にとって、一人で入試会場に入るというのは想像以上に心細いものですから、いきなりぶっつけ本番で第一志望に挑むよりは、入試本番の雰囲気を経験できる機会はあった方がよいでしょう。

この目的で選ぶ場合は、なるべくアクセスがしやすい学校か、日程的に無理がない学校が、を判断材料に選ぶ必要があります。また、可能な限り、私立型ではなく適性検査型で選ぶようにしましょう。

「一勝確保」のために受ける場合は、進学の候補ではないものの、第一志望の前に1つ合格を貰うことで、直前期の不安を少しだけ軽くし、自信を持って本番に向かわせることができるというメリットがあります。

またそれ以外にも、万が一、第一志望の公立中高一貫校とのご縁がなかった場合、この「一勝」の有無は非常に大きいです。頑張りを認めてくれた学校がある、というのは、その学校に入学しなかったとしても、その後の学習に対する肯定感の支えになります。

あくまでも目的は合格を貰うこと、ですから、説明会等でどの程度の倍率なのか、どのくらい合格者を出すのか、合格ライン等の情報を集める必要があります。

ホームページで記載の募集要項には募集人数が十数名と書かれていたとしても、その十倍以上の合格者を出す学校もあります。

必ず、実際の情報を得るためにも説明会情報をチェックするようにしてくださいね。

最後の目的、進学先候補として受ける場合は、通学時間、問題の傾向、入試日程の全体像(私立の場合、試験日が4、5日続くこともあります)、校風、学費、大学進学実績など、様々な情報を把握し、決める必要があります。

ここで覚えておいて頂きたいのは、「我が家が併願する目的はコレだ」と決めたら、そこからブレないようにすることです。

「場慣れと一勝確保のため」という目的で併願校を受けようと決めたはずが、直前期になって、「万が一第一志望にご縁が無かった場合は、やっぱり私立進学もアリかも……」という感じで目的が変わってしまうと、受ける学校を調べ直すために休日が説明会で埋まったりと、落ち着いて第一志望のラストスパートに時間を取ることができなくなってしまいます。

【併願校の決め方】ポイント②何を重視するか

地域によっては、「この公立中高一貫校を受けるなら、併願はA校かB校」、というように候補がほぼ決まっているようなエリアもあるでしょう。

しかし、都心部や、中学受験がさかんな県であれば、併願する候補になる私立中学がいくつもあり、どう選べばよいのか迷ってしまうこともあると思います。

あくまでも併願なので、大事な第一志望本番の直前に詰め込むわけにもいかないですし、直前期は1分1秒でも時間が欲しい毎日ですから、併願校を決める際の優先順位をはっきりさせて、受ける学校を絞るようにしましょう。

優先順位を決める際の項目は、次のようなものがあります。

・距離

・受験(受検)人数

・傾向とレベル

・結果

まず一つ目は、意外と大事なのですが、学校までの移動時間についてです。

併願校は県をまたぐことも一般的であり、片道が1時間半~2時間程度かかる場合もあります。

私自身も、1月上旬に県を越えて併願校を受けるため、いつもはまだ寝ているような時間に家を出た覚えがあります(1月は朝もまだ暗いので、余計にドキドキしたものです)

見知らぬ土地との往復と、さらに神経をすり減らす試験となると、想像以上に体力を奪うことはお分かりいただけるかと思います。

体力面の不安だけでなく、第一志望直前は感染対策もことさら気を使いますから、移動時間やアクセスの良し悪しは、受ける学校を決める大きな材料となります。

学校の所在地は他県でも、入試会場は東京の貸会場で行う学校もありますから、最新の募集要項で確認してくださいね。

次に受験・受検人数についてです。

本番さながらの雰囲気を感じてもらいたいという狙いがあったとしても、私立中学の適性検査型はまだメジャーとはいえないので、受検人数が数人~20人程度、ということもあります。

たとえ適性型の前年利用者数が少なかったとしても、2科受験や4科受験と同じ日程であれば、駅から校門まで緊張した面持ちの親子が大勢歩いているといった、いかにも中学受験らしい雰囲気を味わうことができます。

例年、この雰囲気に飲まれて委縮してしまう子も多いので、緊張したときのシミュレーションをしておいた方が良さそうなタイプのお子さんであれば、規模の大きさは確認しておきましょう。

傾向についても、非常に重要です。まず大きなくくりとして、適性型か、そうでないか、という違いがあります。

「そうでないか」という曖昧なまとめ方をしたのは、いまは、プレゼンテーション型、グローバル型、など、いわゆる「4科」に留まらない幅広いタイプがあるからです。

適性検査、と名付けてあっても、ほぼ4科目受験と変わらなかったり、理科に特化していたり……と、日々対策している適性検査型とあまりにも傾向が違いすぎる場合、「なんだかよく分からなかった」「全然書けなかった」と混乱させてしまう結果になってしまいます。

ある程度候補を絞ったら、ホームページから過去問を確認したり、記載がなければ説明会で問題を貰ったりして調べてみましょう。

もちろん、難易度も重要です。問題の難しさだけでなく、偏差値や、倍率も含めて判断する必要があります。特に、「一勝を貰う目的」で探すのであれば、注意して選んだ方が良いでしょう。

適性型を実施する私立の中には、特別進学クラスが設定されている場合があります。その場合、たとえ見た目の偏差値はあまり高くなくとも、第一志望と同じくらいにハードルが上がることもあります。その学校が適性型を実施するのは、どんな意図があるのか(どのようなレベルの子を選抜したいと考えているのか)、説明会で情報を得るようにしましょう。

最後に、結果についてです。

公立中高一貫校は、結果が出るのはほぼ一週間後ですが、私立中学の場合、当日夜か、遅くとも翌日には結果が出ることが多いです。

このとき、採点したものを即日郵送してくれたり、わざわざ電話でアドバイスをくれたりする学校もあります。(適性型を利用する受検者があまり大勢いない学校の取り組みの一例です)

このようなフォロー体制まで付いていると、第一志望直前に、貴重なアドバイスを得られるので大変ありがたいですよね。

それから、当日、解答が公開されるかどうかも、調べてみてください。

「分からない問題があった……」という場合、結局何だったのか分からないまま第一志望を受けに行くのは、ちょっと不安が残りますよね。

解答例が公表されたり、当日配布されたりするのであれば、即解き直しをして、本命の学校に備えることもできます。解答例があれば塾の先生に質問もしやすいですし、受けっぱなしにならないような学校を選べると理想ですね。

昨年も、2日前に受けた併願校で出た算数の問題が分からず、解答を元に解き方をしっかり確認したところ、まさかのそっくり問題が第一志望で出た!という女の子がいましたよ。

このように、いくつかの参考にすべき項目があるので、何を優先したいか、親子で話し合いながら決めるようにしましょう。

【併願校の決め方】ポイント③無理のないスケジュール

そもそも5、6校併願する前提で受験シーズンをむかえる私立中学受験組とは異なり、公立中高一貫校受検組は、併願したとしても1、2校です。

適性検査、つまり科目複合型の検査は、最後の最後まで「仕上がった」と思える感触は得られず直前期は精神的にも追い詰められますから、目的に合った併願校を絞って、本命の第一志望に影響しない日程を組む必要があります。

2月3日が本番のエリアの場合、一般的なのは、1月中に他県で1校、2月1日にもう1校、です。

私立の進学先もアリ、というご家庭の場合は、2月1日は午前、午後ではしごをしたり、第一志望前日の2月2日にも併願したりするケースもありますが、ほとんどのご家庭が、1~2校受けたのち、本番、という、多くても3校です。

2月1日が山場で、そのあとは安全圏の学校や、実力より上のチャレンジ校などを、毎日のように受けに行く私立組とは異なり、2月3日が山場になるため、その日に疲れを持ちこさないような組み方を意識してください。

2月1日に受けるならなるべく近いところにして、2月2日は最終調整日、にするのが良いでしょう。

例年、出願だけしておいて、最終的にそのときのお子さんの様子や体調を見て受けるかどうするか決めるという方も多くいます。

たとえば、1月に埼玉で併願校受験をして、緊張を味わい、一勝確保の目的も達成したため、2月1日に予定していた併願をキャンセルし体調とメンタルの調整を優先した、という方もいます。

2月3日に最高の状態でぶつかることができるよう、本命校以外のスケジュールは無理せず、そして臨機応変に判断するようにしてください。

まとめ

さて今回は、公立中高一貫校を受けるご家庭向けに、併願校の決め方についてお伝えしました。

報告書など何かと準備物の多い公立中高一貫校とは異なり、私立中学の場合は前日まで出願ができるところもあり、直前に受験・受検を決めることもできます。

しかし、どんな学校なのか、どういった問題を出すのか、といった情報は知っておいた方が安心できるので、出来る限り足を運ぶようにしてください。

例年、直前期になってから併願できるところを探したり予約できる説明会を探したりと、バタバタしてしまう方も多いので、ぜひ早めに動きだしておきましょう

また、適性検査型を実施する私立の中には、「入試体験会」等の名前で、12月頃に入試体験ができる学校もあります。

直前期は模試も無くなっていきますし、同じ地域にある公立中高一貫校の問題を模して作成された適性検査に挑戦できたり、それを採点してもらったり、といった機会は大変貴重です。

そのような機会を活用するためにも、塾の先生に情報を聞いたり、ご自身で検索したりして、情報を集め始めてくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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