中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

残り約90日!中学受験を悔いなく走り切るために必要なこと|公立中高一貫校合格への道#9

2023年11月08日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

この記事が公開される11月初旬は、2月受検の方であれば、残り3か月を切り、いわゆる直前期に突入しています。

とはいえまだまだこの時期は、ボーダーラインを越す見込みも、合格する予感もなかなか感じられず、「公立中高一貫校受検がこんなに大変だったとは…」という感想が、ほとんど全ての保護者の本音ではないでしょうか。

対策の大変さを日々痛感しつつも、引くに引けない状況が大きなプレッシャーとなり、頭の中が不安でいっぱいだったり、冷静に考えることができなくなったりする方も多くなる時期です。

冬の気配とともに受検本番への焦りをひしひしと感じていらっしゃると思いますが、今回はこの時期陥りがちな「特大スランプ」について、事例を交えながら解決策をご紹介していきたいと思います。

【特大スランプその①】計画通りに進まない!

10月中旬から今の時期にかけて、大げさではなく毎日、「計画通りに進まない」という悲鳴のLINEが届いています。

夏頃に考えていたプランでは、今頃サクサクと過去問演習や作文のレベルアップをしているはずが、塾の課題で毎日いっぱいいっぱいで全く余裕がなかったり、それどころか体力不足や不安定なメンタル状況などの様々な原因で、最低限のタスクすら取り組めない日が続いたり…。

はたまた、学校や塾などの人間関係で思わぬトラブルが起きたり、怪我やインフルエンザなどによって取り組みの一時停止を余儀なくされたり…。

こういった、予想もしていなかったトラブルが起こり、考えていたプランから大きく後ろ倒しせざるを得ない状況になっているご家庭が、この時期一気に増えてきます。

しかし、9月から11月の終わりごろまでは、いわゆる「魔の秋」と呼ばれる一番苦しい時期であり、「停滞が基本である」ということは念頭に置いておいてください。

ここで焦って取り組みを増やしたり、無理に頑張らせたりするとパンクしてしまって元の状態にもどすことに時間がかかりますから、「この時期は最低限を淡々と進める」というふうに捉え、内心どんなに焦っていても、表面的にはどっしり構えてお子さんと接するようにしてください。

計画をどう進めるか、軌道を戻すか、ではなく、停滞しているという今の状況を、保護者の方がどう冷静に受け止めるかが、この時期を乗り越えるカギとなります。

(また、この苦しい時期の接し方が、その後しばらくの間、親子関係に影響すると考えてください)

取り組みが思うように進まない原因としては、体力面、メンタル面、その他、心に積もった焦りや不安、恐怖、といった感情が挙げられます。

たとえ飄々としているように見える子でも、無意識にこのようなプレッシャーは感じているものなので、なにはともあれまずは褒める・認める、といった言動を意識してください。

対策をどんなにしても、点に繋がる感覚がなかなか得づらい適性検査に日々向き合っていることは、本当に尊敬すべきことであり、つい忘れがちになりますが、この数か月で出来るようになったことも、たくさんあるはずです。

「褒め」の割合を今よりあと1割くらいは増やすつもりで、この時期まで継続してきた頑張りを認めているよと言動で表すようにしてくださいね。

【特大スランプその②】過去問演習の点数が低すぎる!

9月頃から、塾やご家庭で過去問演習に取り掛かる機会があったかと思いますが、夏も頑張ってきたはずなのにびっくりするくらい点が取れなかったり、時間配分がうまくできずにほぼ手つかずで終わったり…。

過去問という大きな壁にぶつかり、志望校が求めるレベルの高さに立ち尽くすのも、この時期のスランプの原因です。

演習する年度によっては、点を直視するのがためらわれるような状態になる年もあり、一体ここからどう上げていけばいいのか、と途方に暮れる感覚になることもあります。

採点する側でもこのような衝撃を受けるのに、日々いろんなことを我慢して机に向かってきた本人は、さらにショックを受けることになります。

そうすると、受検に対して急にモチベーションが下がったり、集中力がガクっと落ちたり、作文や記述の精度が下がったり…パターンは様々ですが、要は「精彩を欠く」状態になることが多いです。

非常につらい時期ではあるので五里霧中のように感じるかもしれませんが、合格した先輩たちも、この時期に充分に点が取れていたかというと、決してそうではないことを知っておいてください。

過去問演習をしても空欄が目立ったり、二周目のはずなのに合格ラインを越せなかったり。先輩たちもそうやって何度も心折られてきたのです。

時間配分については、最初から余裕を持って全問取り組める子なんて、まず存在しません。それどころか、本番においても、取捨選択しながら結局1つ2つは当てずっぽうで書く問題があったり、空欄を残したりしながら、何とか次の検査に向けて気持ちを切り替えていくものなのです。

本番まで走りきった先輩たちでもそうだったのですから、ぐんと伸びる直前期に突入したばかりの今の時期に、順風満帆に取れるわけがない。だからこそ、踏ん張りがいがある。そのように認識してください。

過去問演習をするときは、「満点に対して足りない得点」が目に付きがちですが、「ボーダーラインに対して足りない得点」に注目することが大切です。

学校のテストなど、基本は満点を目指すべきテストに慣れていると、たとえば過去問演習で40点だった場合、「100点中40点しか取れなかった、つまり、60点分は失点した」と考えがちです。

そうではなく、「ボーダーラインが65点付近であるから、残り25点分、取れれば受かるのだ」という風に考えを切り替えるようにしてください。

よほど高得点勝負になる一部のエリアを除き、多くの公立中高一貫校のボーダーラインは、5割~6割半ばです。その得点に対してあと何点足りていないのか、に注目します。

たとえば、仮にボーダーが65点の年度の過去問演習で40点取った場合は、「100点中60点も落とした」と落ち込むのではなく、「65点に対してあと25点取れば合格だ」という発想をするということです。

そしてその後は、「では25点をどう確保しようか」という話合いをしていきましょう。
おそらく、計算ミスや条件把握ミス、それから、時間配分ミスによって「取れたはずなのにうっかり落としてしまった」点が、10点以上あるはずです。
このような失点を防ぎ、あとは、1問か2問、何とかして取れる力をこの3か月で付けられれば、合格が見えてくる。
そういう『皮算用』が大切です。

スランプから早く回復するために一番必要なのは、「受かる気配」です。
言葉には出さなくても、「無理かもしれない」「無駄かもしれない」と、いつも頭にちらついている状態では、モチベーションはどうやっても上がりません。

だからこそ、机上の空論でもいいので、「失点を防ぎ、あと数問伸ばせれば、受かるのだ」という小さな光を灯すのも、保護者の方の重要な役割です。

【特大スランプその③】作文が書けない!

この時期に入ると、作文がそつなく書ける子と、とことん苦手意識を深める子と、両極端に分かれていきます。

特に、作文に対して抵抗感が強い子の場合、「私は他の分野で伸ばすからいい」というような感じで、作文を半分捨てているような発言をすることがあります。

作文の演習を嫌がり、塾の宿題だけは何とか書くものの、自分から進んで作文演習をすることはまず無く、作文から逃げるように理系対策に熱を入れ始める子もいます。

特に塾に通っている子の場合、作文がうまい子の作品を見たり聞いたりする機会があるので、なおさら、苦手意識に上乗せする形で劣等感まで持ち始める時期です。

作文の授業の解説を聞いていても、明らかに自分の書いた方向性とは違うことは分かるものの、かといってどう直せばいいかは分からない、どうすれば先生の解説のような方向性が導けるのかさっぱり分からない、というお手上げ状態になってしまっている子もいます。

当然、苦手ならば人一倍書いて書いて特訓するしかないのですが、家で作文を書こうとすると何時間もかかったり、それどころか、何時間経っても1行目で止まってしまったまま…ということもあり、気が重くなってしまい、ますます上手な子との差が開いていくのがこの時期です。

このような状態になっている場合は、「時間がかかる」という考え方から、「時間がかけられる」という考え方に切り替えるようにしましょう。

作文は、模試や塾の授業中に取り組む場合は、制限時間という強制的な区切りがあるので、その中で何とかするしかありませんよね。つまり、文章の内容を精査したり、自分の考えをじっくり掘り下げたりする余裕はありません。

「45分で小問も、作文も終わらせる」という時間的負荷をかける練習は、素早く構成を立てる・素早く書き切って校正する、という力を付けるためにも大切ですが、焦って書いた作文は、残念ながら何本書いても、作文力そのものは上がらないのです。

作文力とはつまり、持論を深く掘り下げ、それを正確に分かりやすく順序よく、豊かな語彙で表現する力のことです。
これは、手と額に汗をかくくらいじっくり考え、構成を練りに練った時間や、言葉のチョイスにとことんこだわって推敲した時間に比例して伸びるものです。
このような時間が、しっかり取れているでしょうか。

家での作文演習は、模試でも集団授業でもないので、作文力を伸ばす貴重なチャンスです。時間がかかるからイヤだな、厄介だな、とは思わず、時間がかかることをメリットだと考えて、とことん書く事や言葉と向き合うための時間に「できる」と考えてください。

今の時期はまだ、保護者の方が隣について、何とか気持ちを盛り立てながら、横から事細かにアドバイスしながらやっと1本の作文を書いている、という子もたくさんいる時期です。

何でもかんでも誘導するのは逆効果ですが、作文に関しては、時間をかけて文章の内容を話し合ったり、理解が怪しい単語の意味調べから取り組ませたり、構成は一緒に悩んだり、使った言葉の言い換え表現を提案したり、そうやって親子で抜群の1本を作るのも、上達の一歩になります。

苦手意識が根深い子が嫌々ながら書いた1本や、とにかく早く片付けようとザっと書いた1本では、伸びることはないです。
「考え抜いた本気の1本」が、本番、自分の味方になり、再現できる作文なのです。自信を持って、そして割り切って、作文に親子で時間を割くようにしてください。

まとめ

さて今回は、本番3ヶ月前に起こるスランプについてお伝えしました。

この時期はセミナーをしても「最近、涙もろくなって…」なんて話も聞くくらい、保護者のみなさんも精神的に追い込まれているのを肌で感じています。

様々な課題が出てきますが、「新種のスランプ」は存在しません。先輩たちがみんな通ってきた道なのです。
ここで踏ん張って、得点を伸ばすというよりも、お子さんの心の強さを伸ばすつもりで、辛抱強く寄り添ってサポートしてあげてくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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