中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

子どもが答えを見ているかもと思ったら―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2024年7月31日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

前回に引き続き、今回の記事も、多くの保護者さんから頂くご相談にお答えしていこうと思います。

今回取り上げるのは「子どもが答えを見ているかもしれないんですが、どうしたら良いでしょうか」というご相談です。

まず最初にお伝えしておきたいのは、「普通に子育てをしていたら、だいたいのご家庭が通る道だから大丈夫ですよ!」ということです。

私も小学生の頃は、チャレンジも学校のドリルも通っていた日能研の計算練習も答えを写しまくっていました(笑)

そして、しっかりバレて叱られて、全問正解だと怪しいからバレることに気付き、わざといくつか間違えて、それを直したように見せる小細工までするようになりました(笑)

もちろん今までの生徒の中にもそういうことをする子はたくさんいました。

自分も通ってきた道だから子どもたちがやりそうなことはけっこうわかるので、しっかり見破っているんじゃないかなと思います。

大事なのはそこからの対処ですね。

どうすれば子どもは成長につながる正しい勉強のやり方をするように変わるのでしょうか?

今回の記事では、答えを丸写しする子への菊池流対処法についてお伝えしますので、参考にしてみてください。

基本的な考え方

まずはじめに、子どもの問題行動を改善するための基本的な考え方をおさらいしておきましょう。

大人から見て問題ある行動に見えても、子どものその行動には必ずその子なりの理由があります。

その理由とは、その子の置かれた環境であったり、その子の価値観・考え方であったりします。

問題行動を改善するためには、その理由を見つけ、その理由を取り除いたり変えたりしていかなければいけません。

そうした働きかけ無しに、問題行動だけに注目して対応すると失敗します。

それを踏まえて、やってはいけない対処法と、効果的な対処法についてお話ししていきます。

やってはいけない対処法

①怒る

まず1つ目のやってはいけない対処法が、親が怒りをぶちまけることです。

厳しく怒られて嫌な思いをすれば、子どもはもう同じ悪い事をしなくなるのではないか。

そういった親の期待は、ほとんどの場合裏切られます。

「なんで何回言っても分からないのあんたは!」
というのは、世の中の親御さんにとって定番のセリフですよね。

これを一歩引いた視点で見てみれば、怒ることには効果が無いからこそ、「何回言っても分からない」のだと気付くはず。

こうした状況は、「子どもが何度も同じ失敗を繰り返している」のではなく、「私たち大人が子どもの教育に何度も失敗している」のだと受け入れる必要があります。

そして、なぜ効果が無いのかと言えば、怒ったところで子どもが答えを写した理由は何も変わっていないからです。

わかりやすい例として、私の昔の生徒に、宿題で答えを写したことがきっかけで以前通っていた塾を辞め、伸学会に転塾してきた子がいました。

その子はとてもまじめな子でした。

そんな子がなぜ答えを写したのかというと、宿題を提出して×が多いと先生に怒られたからだったそうです。

自力で正解をする力が無かったその子は、怒られないようにするためには答えを写すしかない状況に追い込まれていました。

そしてある日、答えを写していることが先生にバレて、きつく怒られました。

もう二度としないと約束をさせられました。

しかし、宿題で×が多いと怒られるという状況は変わっていませんでした。

だからその子はまた答えを写しました。写さざるを得なかったのです。

そしてそれがまた先生にバレ、きつく怒られて、今度は親御さんにも連絡が行きました。

状況を把握した親御さんは、このままこの塾に通っていても状況は変わらないと悟り、伸学会に転塾してきたという流れです。

怒ったところで子どもが答えを写す理由の解決にはならないというのが、おわかりいただけたでしょうか。

子どもによって「間違いが多いと怒られるから」「早く終わらせて遊びたいから」「自分を実力以上に良く見せたいから」「疲れるのが嫌だから」「できない自分を受け入れられないから」などなど、様々な理由があります。

そうした「考え」や、その考えを生み出す「状況」や「価値観」を変えることができなければ、子どもは同じことを繰り返したり、私のように「わざと一部間違える」といった巧妙なやり方をするようになって状況が悪化したりします。

②答えを取り上げる

2つ目のやってはいけない対処法が、答えを取り上げることです。

これも1つ目と同じように、答えを取りあげても、子どもが答えを写した理由の解決にはならない事がお分かりいただけますよね。

さらには、解答と解説は学力アップのためにとても重要なものです。

問題を解いた後に○つけをして、解説を読み、解き直しをすることが効果的な学習法であることは今さら言うまでもありません。

それができなくなるような対処法は、結局子どもの成長の芽を潰すことになります。

そもそもなぜ答えを写してはいけないかといえば、そんなやり方をしても成長に繋がらないからですよね?

だとしたら、答えを写せないようにするための手段が子どもの成長に繋がらないものというのは本末転倒ではないでしょうか。

ですから、子どもが答えの正しい使い方をできるようになる、他の方法を考えていきましょう。

効果的な対処法

では、ここからは効果的な対処法についてお話をしていきます。

先にまとめをお話ししておくと、効果的な対処法とは、「理由に合った対処法」です。

目的に対して合わない手段を用いたら、手段自体がどれ程優れたものであっても効果は得られません。

釘を打つのにハサミを使ったら、そのハサミがどれほどよく切れる素晴らしいものでも意味はないですよね。

まずは理由が何なのかを推察して仮説を立ててみてください。

そして、その仮説に対して、効果的と思われる対処法をやってみましょう。

もし効果が無かったとしたら、仮説が間違っていたと思って、別の理由と対処法を考えてみましょう。

最初からばっちり理由がわからなくても大丈夫。

試行錯誤していけば良いのです。

それを踏まえて、ありがちな理由と、対処法について挙げていきますね。

①問題を解きたくない場合

おそらく一番ありがちなのがこのケースです。

宿題をやりたくないから、答えを写して、やったことにするということですね。

このケースをもう少し細かく分けると、「他にやりたいことがある」場合と、「宿題自体やりたくない」という場合があります。

前者は例えば、宿題をやった方が成績が上がるのはわかっているし、成績を上げてクラスアップしたい気持ちはあるけど、遊びたい気持ちに負けてしまっているというような場合。

後者は、宿題なんかやってもやらなくても成績は変わらないと思っているとか、どうせできないと思っているとか、成績を上げたいと思っておらず「やらされた感」しかない、といった場合です。

いずれのケースでも、「宿題をやりたいと思わせるにはどうしたら良いか?」を考えていくことになります。

前者の場合であれば、成績を上げたいという気持ちをより強くするにはどうしたら良いでしょうか?

例えば「努力してテストで良い成績が取れたときの誇らしい気持ちを想像してワクワクする」といったことが方法としては考えられます。

また、遊びたい気持ちに負けないようにするためには、遊びたい気持ちを刺激するゲーム機などの遊び道具を見えないところに片づけるとか、スケジュールを立てて行動を管理するといった方法も効果があります。

後者の場合には、またさらに細かく分かれた理由ごとに対処法を試してみる事になります。

やってもやらなくても変わらないと思っていたら、そりゃやりがいが無いからやりたくなくなりますよね。

でも、勉強を頑張ったつもりでも悪い点数を取ることはありますし、頑張らなくても良い点数が取れてしまうことはあるので、そう感じてしまうことがあっても無理はありません。

ですから、私たち伸学会では、例えば漢字の練習で解き直しをした場合とやりっぱなしにした場合でどれくらい点数が変わるかを授業内で体験させてみることをしています。

そうすると、みんな「解き直しをした方が点数が上がる」ということが実感できます。

解き直しに限らず、やったかどうかで結果がどれくらい違うのかを確認してみるのは大事なことですね。

また、どうせできないと思っているとしたら、「一緒にやってあげる」「やり方を教えてあげる」「難易度を落としてあげる」「量を減らしてあげる」といった方法で、「やったらできた」という成功体験をさせてあげるのが効果的です。

成績を上げたいと思っていないとしたら、「成績を上げるとかっこいい」とか、「成績を上げれば憧れのあの中学校に行ける」とか、何かしらの目的意識を持てるようにサポートしてあげることが必要になりますね。

お子さんの性格を考えながら、グッとくる目的を探しましょう。

なお、本当は成績を上げたいけどどうせできないと思っているから、口では「成績が悪くても良い」と言う子も多いです。本人はそのことを自覚していないことも。

お子さんが言っていることがすべて真実だとは思わず、お子さんの言行をトータルで見て理由を考えて対応していきましょう。

②間違えるのが嫌な場合

先述した私の昔の教え子のように、真面目な子でも答えを写すことはあります。

宿題をやりたくないわけではないのに答えを写すとしたら、どんな理由があるのかを推察してみましょう。

間違えるとどんな嫌な思いをするのだろうか?
正解するとどんな良いことがあるのだろうか?
と考えてみてください。

間違えたら親や先生に「怒られる」というのはわかりやすいですね。

他にも、親や先生が「がっかりした反応をする」というのも、子どもによっては傷つくことがあります。

期待に応えるため、がっかりさせないために、子どもは答えを写すことがあるということを知っておきましょう。

「がっかりした反応」をしなかったとしても、「できると親や先生が喜ぶ」とか「できると褒めてもらえる」という状況だと、やはり喜ばせたいとか褒めてもらいたいという気持ちから答えを写す場合があります。

こうしたことが原因だとしたら、悪いのは子どもが置かれている環境ですから、それを変えていくことが必要になります。

子どもができなくても、怒ったりがっかりしたりしないようにしましょう。

また、できたことを喜んだり褒めたりするのではなく、できるようにするための努力の過程を喜んだり褒めたりしましょう。

教育心理学の実験でも、結果を褒められたり、「頭が良いね」のように能力を褒められたりした子は、点数を自己申告させると嘘をついて高い点数を言うことが多くなったそうです。

また、高い点数が取れる簡単な問題をやりたがる子が増えました。

それに対して、努力を褒められた子は、点数の自己申告で嘘をつく子が少なく、難しい問題にチャレンジしようとする子が増え、結果としてそのあとの成績が向上しました。

「嘘をつく」のは「答えを写す」とは違ったタイプのズルですが、行動原理は同じです。

あなたがお子さんの何を評価し、何を評価しないかで、子どもの行動が変わるというわかりやすい例です。

良い行動をするようになる働きかけを実践していきましょう。

まとめ

以上、子どもが答えを写しているときの対処法でした。

ここには代表的なものをシンプルに場合分けして書きましたが、実際にはもっと複雑にいろいろな背景があります。

それらの背景を1つ1つ解きほぐし、本当の理由を考えて、対応していきましょう。

そうやって試行錯誤をしていけば、子どもの行動を軌道修正していけますよ。

良い勉強のやり方をして、しっかり成長できるようにサポートしてあげてくださいね。

 

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※記事の内容は執筆時点のものです

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