連載 集中力アップの秘策|ドクター吉田

生活の雑音が志望校への合格をもたらす! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(14)


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「静かな部屋で勉強させるのが、受験のためにはベスト」

そう信じている人は、今すぐ考えを改めてください。

入試を突破するには、静かすぎる環境で勉強させることが、むしろ逆効果を及ぼします。私は受験生を専門に扱う心療内科医として、そうした例を数多く見てきました。

静かな環境での勉強に慣れてしまうことの弊害

実験をすると、確かに静かであればあるほど勉強の集中力は高まります。神経生理学の研究結果をみると、その場だけに限れば、わずかな音でも集中力の低下を招くことを示すデータが得られています。

しかし、問題は脳に及ばされる長期的な影響です。静かな部屋でしか勉強をしていない子供は、脳が良い環境に慣らされることにより、ちょっとした物音でも気を取られてしまいます。つまり、雑音に対して、脳がとてもデリケートな体質になってしまうわけです。

その悪影響が最も深刻な形で噴出するのが、試験の前夜と当日です。

時計の秒針の音、冷蔵庫の音、近所を車が通る音……。翌日に入試を控えると、音に敏感になった受験生は、ささいな音でも気になって眠れなくなります。私の患者さんの中には、普段は聞こえることがない自分の心臓の鼓動で眠れなくなった人もいました。

受験生の咳、鉛筆で文字を書く音、試験問題のページをめくる音……。試験会場の中も、さまざまな雑音が飛び交います。静かな環境でないと頭が働かないクセがついてしまった受験生は、圧倒的に不利なのです。

生活雑音の中での勉強が、雑音に対する抵抗力を高める

ただし、勉強中にBGMとして音楽をかけるのも望ましくはありません。人によって程度には差はありますが、脳の大脳辺縁系に刺激が伝わり、勉強の集中力は低下する方向に作用します。特に、好きな曲は要注意です。音楽による快感が脳内に生じ、その分だけ勉強の機能が相対的に低下してしまいます。

最も望ましいのは、適度な生活雑音の中で勉強をさせることです。テレビの音声や会話の音は、言語中枢を刺激するので聞かせるべきではありません。しかし、料理や洗濯、掃除など日常生活の雑音は、雑音に対する抵抗力を高めてくれるので、積極的に聞かせるべきです。

勉強部屋より居間で勉強させたほうが合格率は高いといわれています。その理由も、生活雑音の効果が考えられます。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


吉田たかよし(医学博士・心療内科医師)

灘中学、東京大学、国家公務員上級経済職試験、医師国家試験などの合格体験を元に、日本で初となる受験生専門の心療内科、本郷赤門前クリニックの院長を務める。カウンセリングと最新の磁気刺激治療を組み合わせ、「受験うつ」から早期回復を図るプログラムを開発。脳科学と医学を応用した受験指導にも取り組む。『今どきの大人を動かす「ほめ方」のコツ29』(文饗社)など著書60冊を上梓。

本郷赤門前クリニック
https://www.akamon-clinic.com/


■バックナンバー

▼脳を育てる勉強法

▼集中力アップの秘策

※記事の内容は執筆時点のものです

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