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北極星が動かない理由とは? 3つの疑問をもとに天体の理解を深めよう

2022年8月06日 ゆずぱ

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北極星は動かない星。教科書にもしっかりと書かれていることなので、小学生でも知っていますね。ところが、よくよく考えてみるとちょっとした疑問が湧いてきます。

地球は太陽のまわりを公転してるのに、北極星が動かないのはどうして?
北極星自体も動いているはずなのに、どうして移動していないの?

そこで、こうした疑問にお答えしつつ、北極星が動かない理由をわかりやすく解説します。

天体の動きを復習しよう

北極と南極を貫く回転軸(地軸)を中心に、地球はコマのようにグルグル回っています。そのため地球の外にある天体は、あたかも動いているように見えるんですね。

たとえば日本で北の空を見上げると、さまざまな天体が反時計回りにグルグルと回っていることがわかります。近くにある天体も、遠くにある天体も、明るい天体も、暗い天体も、どれも反時計回りに回っているのです。

ちなみに南側の天体は東からのぼり、南を通って西にしずむ、という動きを繰り返します。上の図のような天球をイメージすると、天体の動きを理解しやすいでしょう。

北極星が動かないのはなぜ? 3つの疑問を解消しよう

北極星が動かない理由について、次の3つの疑問をもとにその謎をひも解いていきます。

疑問[1]なぜ北極星だけ動かないのか

ほかの天体はグルグル回っているのに、北極星だけが動かない理由は、実はかなりシンプル。それは地球の回転軸の延長線上に、北極星がたまたま存在しているからです。


遊園地のメリーゴーランドに乗っている場面を想像してみてください。横を見ると、外の景色は飛ぶように流れていきますよね。ところが真上を見ると、ほぼ同じ景色のままです。これと同じく、北極星は回転の中心にあるので動いていないように見えるのです。

「北極星」という名前の星ではない

北極星は正式な名称ではなく、現在の北極星は「ポラリス」という名前の星です。「“現在の”ということは、昔は名前が違ったの?」「これから変わる可能性もあるの?」と疑問が生まれるかもしれませんが、まさにその通り。北極星は、時代によって変わるんです

10年や100年という単位では変わりませんが、何千年、何万年という単位になると、実は回転軸の延長線上にくる星が変わります。

先代の北極星:コカブ
現在の北極星:ポラリス
次代の北極星:エライ

エライに変わるのは西暦4000年ごろ、今から約2000年後と言われています。2000年後の地球に住んでいる人たちは、私たちが呼んでいる星とは違う星を「北極星」と呼んでいることでしょう。

南極の真上にある星も動かない

北極の真上にある星が動かないなら、南極の真上にある「南極星」も動きません。しかし、そもそも南極星という言葉を聞きませんよね。

その理由は、南極の真上にある星は肉眼では見えないからです。宇宙には無数の星が存在するので南極の真上にも星はありますが、人の目で見ることができるほど明るくないため、「南極星は存在しない」と言われることが多いのです。

疑問[2]なぜ地球が公転しているのに動かないのか

地球は、太陽のまわりを約1年かけて回っています。そして地球と太陽は1億5000万kmも離れているので、地球の公転によって、地球は宇宙を大きく“移動”しています。

たとえば、夏の地球と冬の地球ではその位置は3億kmも違うと言われますが、「地球が移動すれば、北極の真上にくる星も変わるのでは?」と疑問が浮かんできますよね。下の図を見ても、夏の地球と冬の地球の真上にある星は、別の星のように思えます。

ところが地球がどれだけ移動しても、私たちが見ているのは同じ北極星です。なぜなら、北極星はとんでもなく遠い場所にあるからです。

地球から北極星までの距離は、なんと431光年……。光はとてつもなく速く進みますが、その光でさえ届くまでに431年かかる距離、と言えばスゴさが伝わるでしょうか。北極星はこれほど遠くにある天体なので、夏の地球、そして冬の地球から見ても、北極星はもはや同じ方角にあるように見えるというわけです。

私たちは“昔の北極星”を見ている

そもそも私たちが「モノを見る」というのは、その物体から発せられる光(その物体に反射した光)が目に入り、それを脳が認識する、という仕組みから成り立っています。つまり「北極星を見ている」というのは、北極星から発せられた431年前の光を見ている、ということ。私たちがふだん見ている北極星は、“431年前の北極星”なのです。

今から431年前といえば、豊臣秀吉が天下統一を果たした時代にあたります。その当時発せられた光が、431年の時を経て現代の私たちに届いている ――。こうした事実に、宇宙の計り知れない大きさを感じますね。

疑問[3]北極星自身も動いているのに、動いて見えないのはなぜ?

宇宙空間にある天体は、ものすごい距離を移動しています(※)。太陽も地球も、そして実は北極星も動いていますが、地球から見ると同じ位置に留まっているように見えますよね。

では、どうして動いて見えないのでしょうか? それは疑問[2]でお伝えしたとおり、北極星がとてつもなく遠い場所に存在するからです。つまり地球からの距離が遠すぎるため、その動きを肉眼で捉えることができないんですね。

※宇宙空間は絶対座標が存在しないため、「天体が移動している」とは、あくまで「相対的な位置関係が変化している」ことを示しています


たとえば、富士山のふもとから山頂を見てみたとしましょう。このとき、富士山の頂上で誰かが10m移動しても、その動きは把握できないですよね。このように距離が遠くなるほど、その先でおこなわれている動きは小さく見える、あるいはほぼ見えません。ちなみに富士山の標高は3776mですが、北極星は地球から431光年も離れた場所にあります。そのため、その動きを捉えることはまず不可能なのです。

近い天体の動きは確認できる

どんな天体もかなりの距離を移動していますが、地球からあまりにも遠すぎるため、その動きはほぼわかりません。ただし、地球から近い天体に関してはその動きがわかります

地球から見えるほとんどの天体は、地球の自転にともない、同じ動きをします。東からのぼって南をとおり、西へしずんでいくんですね。ところが地球からとても近い天体、たとえば土星や木星は一般的な天体と異なり、不規則にウロウロと動いているように見えます。そのため、こうした天体は「惑星(さまよっている星)」と名付けられたという説もあります(※)。

※惑星には厳密な定義がありますが、一般に「恒星のまわりを回っている天体」を指すことが多いです

北極星の3つの知識

北極星が動かない理由は、理解できましたか? ここではさらに踏み込んで、北極星について知っておきたい知識を3つ紹介します!

北極星の3つの知識

  • 観測地点によって高度が異なる
  • “超小さな円”を描いて動いている
  • 北極星を見つける方法

知識[1]観測地点によって高度が異なる

北極星は、北極の真上にある天体です。ということは、もちろん南半球からは北極星を見ることはできません。そして、見る場所によって北極星の高度は異なります

北極に立っている人には、北極星は自分の真上に見えます。一方で赤道上に立っている人には、北極星は自分の真横に見えます。実際には地平線の方向に位置するので、ほぼ見えませんが……。

では、東京はどうでしょうか? 東京は赤道から36度ほど北に位置する都市です。そのため、地平線から36度の高さに北極星を見ることができます。「北極星の高度=北緯の度数」と覚えておくと良いでしょう。

知識[2]“超小さな円”を描いて動いている

「北極星は北極の真上にある」という前提でここまで説明してきましたが、厳密には“真上”ではありません。1度よりも小さなズレなので人間の目にはわかりませんが、実はほんのちょっと真上からズレています

つまり、一見すると止まっているように見える北極星も、北の空に見えるほかの天体と同じく「反時計回りに回っている」ということ。本当は、“超小さな円”を描いているんです。

知識[3]北極星を見つける方法

夜空に輝く無数の星のなかから北極星を見つける方法を紹介します。とても有名な方法ですが、北極星の位置に関わる問題も中学入試では出題されているので、しっかりチェックしておきましょう。

1、北斗七星を見つける

北斗七星は「ヒシャク」の形をした星座です。形を覚えてしまえば、すぐに見つけることができるでしょう。

 2、ヒシャクの先端を見つける

北斗七星を構成する7つの星のうち、ヒシャクの先端部分のふたつの星を見つけます。そして、それぞれの星を線で結びます。

3、線を5倍する

それぞれの星を結んだ線をひとつとして、それを5倍分のばしたところに明るい星が見えてきます。この星が、北極星です。

まとめ

「北極星はどうして動かないの?」という疑問にお答えしてきました。たまたま北極の真上にあった星が北極星と名付けられて、“特別な星”として知られるようになった、ということがわかりましたか? お伝えした3つの知識も振り返りつつ、天体分野の学習を進めていきましょう!

※記事の内容は執筆時点のものです

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