海外の大学への入学資格が得られる? 注目される「国際バカロレア」
国際バカロレアは文部科学省でも推進・拡大をめざしている国際的な教育プログラムです。国内では、認定を受けた学校で学ぶことができ、中高一貫校の中にも認定校があります。
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国際バカロレア(IB)とは
国際バカロレア(International Baccalaureate)は、1968年にスイス・ジュネーブで設立された非営利組織・国際バカロレア機構(IBO)が認定する教育プログラムです。
この国際バカロレアは、世界共通の大学入学資格につながっていて、グローバル教育が広がる日本でも注目を集めています。
しかし、この国際バカロレア、すべての学校で受けられるわけではありません。国際バカロレア機構が認定する小中高のみで受けることができるのです。
国際バカロレア(IB)のねらい
日本政府は、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」で2018年までに国際バカロレア認定校を200校までに増やすことを目標としました。
文部科学省は導入の意義を次のようにしています。
[1]グローバル人材の育成(課題発見・解決能力、コミュニケーション能力等)
[2]国際的通用性(国内外への進路の多様化)
[3]初等中等教育の質の向上、大学の国際化・活性化
つまり、少子高齢化・グローバル化などさまざまな問題や課題を抱えた日本を再興するための一案として、世界レベルの教育プログラムの推進を図ることを目的に打ち出されたものなのです。
国際バカロレア(IB)のプログラム
プログラムは年齢に応じた3つに分けられます。
(1)PYP(Primary Years Programme)
初等教育プログラム/3歳から12歳
(2)MYP(Middle Years Programme)
中等教育プログラム/11歳から16歳
(3)DP(Diploma Programme)
ディプロマ資格プログラム/16歳から19 歳
中高一貫校であれば、(2)か(3)を実施している学校です。とくに(3)は、海外の大学への入学資格ともなるので要チェックです。
DP(ディプロマ資格プログラム)とは?
海外の大学への正規の入学資格や受験資格となるディプロマ。ハーバード大学やケンブリッジ大学でもこのディプロマを採用しているようです。
授業も海外校並みです。レポートを書いたり、自ら考える主体的な授業で、一般的な日本の授業とは若干異なります。
具体的には「言語と文学(母語)」や「言語習得(外国語)」のほか「個人と社会」「理科」「数学」「芸術」といった6つのグループ(教科)を2年間で履修。また、履修科目に関連した研究の成果を論文にまとめたり、クリエイティブな芸術性に富む活動をしたり、ボランティア活動などにも取り組みます。
資格取得には、これらをすべて履修したうえ、最終試験での合格が必須となります。試験は英語で行われ、45点中24点以上の得点で合格。合格率は7割ほどだといわれていますが、認定校が増えるに従い、日本でも合格者が増えているようです。
さらに、近年では日本の大学でも国際バカロレアを利用した入試を行う大学も出てきているそうです。
国内での国際バカロレア(IB)認定校
2017年8月時点の日本での国際バカロレア認定校は合計103校です。
「日本再興戦略」の目標では「2018年までに200校」、2016年の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「2020年までに認定校を200校以上にする」という目標を立てましたが、2018年10月現在ではまだ200校には達していないようです。
国際バカロレアは、英語か、フランス語、スペイン語で授業をせねばならず、日本での導入のハードルを上げていたのかもしれません。
しかし、2016年から一部授業で日本語でも授業が行うことができるようになり、今後導入する学校が増えていくことが期待されています。
ちなみに、日本国内で最初に国際バカロレアを導入したのはインターナショナルスクールでした。海外の大学への進学が想定されるインターナショナルスクールが真っ先に導入したことは納得ですね。
中高一貫校で認定されている学校
2017年8月1日現在、下記の中高一貫校が国際バカロレア認定校となっています。
ただ、年齢によって受けるプログラムが異なるため、ある学校では中高ともにプログラムがあったり、または、中学のみ、高校のみという場合があります。
・茗渓学園高等学校(茨城県)
・昌平中学校(埼玉県)
・玉川学園中学部・高等部(東京都)
・加藤学園暁秀高等学校・中学校(静岡県)
・名古屋国際中学校・高等学校 (愛知県)
・立命館宇治高等学校(京都府)
・関西学院千里国際中等部・高等部(大阪)
・AICJ高等学校(広島県)
・リンデンホールスクール中高学部(福岡県)
・沖縄尚学高等学校(沖縄県)
※学校名の表記はプログラムの有無に従っています
玉川学園の「国際バカロレア(IB)クラス」
玉川学園中等部・高等部を例に挙げましょう。同校では一般クラスのほかに「国際バカロレア(IB)クラス」があります。
中学生のときは「MYP」を、高校の2年間で「DP」を履修します。中高をとおして国際バカロレアにどっぷり浸かれる一貫校はめずらしいです。
IBクラスは一般のクラスに比べて授業時間数を多く設定しています。また、「MYP」では一部の科目を除いてすべて英語での授業を実施。「DP」では「日本語言語」を除くすべての授業は英語で行われているそうです。
玉川学園では、朝7時半より英語の習熟度に応じて「早朝英語サポートクラス」を設けています。こういった手厚い指導も私学ならではです。
国際バカロレアでグローバルに活躍する人材に
国際バカロレアを導入している学校はまだまだ少ないのが現実。しかし、文部科学省も導入のためのセミナーに補助金を出したりするなど積極的です。また、一部日本語での授業も可になるなど間口を広げているので、今後ますます認可校が増えていくものと思われます。
身につく力
英語で授業を行う学校がほとんどなので英語はもちろん、論理的思考力や表現力、コミュニケーション力と、いま、注目とされている「力」が身につきます。
履修教科などは世界共通なので、「国際感覚」「国際理解」が自然と芽生えるでしょう。
将来は?
ディプロマの認定証書は、海外志向の強い生徒には、海外の大学で学ぶパスポートとなります。ちなみに、ディプロマを入学資格や受験資格として認めている大学は100カ国以上、2万校以上にも及ぶそうです。
一方、日本の大学でもディプロマを保持していれば入学できる大学が増えつつあるとか。内外問わず大学選択の可能性が限りなく広がっています。
しかし、肝心なのは「世界で通用する力」。大学を卒業してからのその先の未来、人生に大きく役立つのではないでしょうか。
おわりに
国際バカロレアについてイメージできましたか?「海外の大学なんてドラマや映画の中でしか知らない」と思っている方も多いと思います。また、「特別なご家庭のお子さんだけしか受けられないのではないか」と思っている方も多いと思います。
しかし、なかには公立小学校から私学に入学して、国際バカロレアクラスに入ったお子さんもいます。誰にでもチャンスはあります。また、今後認可校も増えていくことでしょう。その動向に注目しておいてください。
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
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