学習 社会

TPPって何? 中学入試で問われやすい3つの知識と関税の歴史

2021年11月14日 ゆずぱ

0

ニュースを見ていると、「TPP」という言葉がよく登場します。ほかにも「EPA」や「RCEP」という言葉も出てきますが、そもそもこれらの意味を知らないと、いったい何のニュースなのか良くわかりませんよね。そして実は、これらの言葉については中学入試でもガンガン出題されています。

そこで今回は、TPPをはじめとする経済協定の言葉について、3つの知識をベースにわかりやすく解説します。TPPは少しとっつきにくい分野ではありますが、イラストも使って丁寧に解説していきますので、勉強の参考として役立ててくださいね。

※2021年10月時点の情報をもとにお伝えします(記事内のイラストはイメージです)

TPPとは?

まず、TPPとは“ナニモノ”なのかを理解していきましょう。TPPとは「Trans-Pacific Partnership」の略のことで、日本語に直すと「環太平洋経済連携協定」という意味です。ザックリいうと「太平洋をかこむ国々で自由に経済活動をしよう」という枠組み(ルール)のことを指します。

「太平洋をかこむ国々」が中心ということもあり、TPPには日本も参加しています

TPPの主な参加地域

  • 東南アジア(シンガポールなど)
  • オセアニア(オーストラリアなど)
  • 南北アメリカ(チリなど)

自由な経済活動とは ―― メインは「関税の撤廃」

TPPが「太平洋をかこむ国々」が参加する枠組みということはイメージできましたか。では、「自由な経済活動」とはどのような活動を指すのでしょうか? 一例として挙げられるのは次のとおりです。


[1]モノが自由に移動できる

自由な経済活動のなかで、最もメジャーな活動といえるのはモノの移動です。具体的には「関税を極力なくして、輸出や輸入を自由におこなえるようにしよう」ということが定められています。

[2]ヒトが自由に移動できる

TPPでは、ヒトが自由に移動できるようにさまざまなルールも定められています。たとえば入国の条件をゆるくしたり、外国籍の人を企業が雇いやすくしたり、海外で働きやすくしたりするなど、ヒトの行き来が活発化するような仕組みが整備されています。

[3]お金が自由に移動できる

投資の自由化により、海外のお金をほかの国の企業に投資しやすくする、といったことを可能にしています。

日本にはメリットがある?

TPPでは、モノだけでなく、国と国との間でヒトやお金も自由に移動させることによって自由な経済活動につなげています。ではこうした活動が進むと、日本にとってはどのような影響があるのでしょうか? 次のふたつの視点から考えてみましょう。

自由な経済活動が日本に与える影響は?

  • モノを海外に売りたい企業の場合
  • モノを国内で売っている企業の場合

モノを海外に売りたい企業の場合

モノをつくって海外に売っている企業にとっては、TPPはメリットが大きい仕組みといえます。なぜなら製品を外国に輸出しやすいので、売上げが上がるかもしれないからです。

モノを国内で売っている企業の場合

モノをつくって国内で売っている企業の場合には、TPPはマイナスな影響となる可能性があります。なぜなら海外の安くて良い製品が国内に入ってきて、競争が激化してしまうかもしれないからです。特に「農業」は、海外の安い農作物が日本に入ってきて売れ行きが悪化してしまうリスクが指摘されています。

TPPを深く理解するための3つの知識

TPPの概要については理解できましたか? では、TPPをさらに理解するための「3つの知識」を紹介します。

TPPに関わる3つの知識

  • 関税
  • FTAとEPA
  • 自由貿易と保護貿易

[1]関税

国と国の間でモノを自由に移動させるには、「関税をなくす」という方法が有名です。

関税とは?
国外からモノが入ってきたときにかかる税金のこと。

■関税がある場合
たとえば日本でつくった自動車をアメリカに輸出する場合、関税が高いと販売価格が高くなるので、アメリカでモノを売るのは大変……
■関税がない場合
輸送費などは別途かかりますが、関税がないと、アメリカで出回っている価格と同水準でモノを販売できます。

関税がある場合とない場合では、輸出や輸入に大きな影響があることがわかりますね。なおTPPとしては、関税をなくす方向を目指しています。

[2]FTAとEPA

3文字の英単語がまた出てきて混乱してしまいそうですが、TPPを理解するにはFTAとEPAについて押さえることも欠かせません。具体的には、目指す「自由度」によってふたつのレベルに分けられます。

FTA(=自由貿易協定)

FTAとは、自由貿易協定を指す言葉です。簡単にいうと、「モノやサービスの移動を自由にしましょう」という国家間の約束のことで、具体的には「関税をなくして輸出や輸入を自由にする」といったことが定められています。

EPA(=経済連携協定)

EPAとは、経済連携協定を指す言葉です。モノやサービスだけでなく「ヒトやお金も自由に移動させましょう」という約束が定められていて、FTAよりも経済活動の自由度を「広い範囲」で高めることを目指しています。

ちなみに、TPPはEPAのひとつです。太平洋をかこむ国々が協力することで、モノだけでなく、ヒトやお金も自由に移動できるようにすることを目指しているからですね。

[3]自由貿易と保護貿易

3つ目の知識として、自由貿易と保護貿易についても理解しておきましょう。繰り返しにはなりますが、TPPは自由な経済活動を目指す枠組みのことでしたね。そしてこうした活動は「自由貿易」と言われ、その反対は「保護貿易」と呼ばれます。

保護貿易
モノやヒト、お金などが外国に出て行ったり、逆に入ってきたりしないようにする貿易政策のこと。関税を高くしたり、入国を厳しくしたり、といったことを定めるのが一般的です。国内の産業を守ることを目的として保護貿易を考える国もあります。

中学入試で頻出! 関税に関わる歴史も押さえよう

TPPとは切り離せない「関税」について、中学入試で問われやすい事柄とともに、その歴史を振り返っていきましょう。

日米修好通商条約 ―― 日本に関税自主権がない

日本は、江戸時代までは海外との貿易をほとんどおこなっていませんでした。しかし1858年に、アメリカと「日米修好通商条約」を締結します。そしてこの条約は、関税自主権がない“不平等条約”でした。つまり日本にとっては不利な条約だったため、アメリカと製品などをやりとりする際の関税を自主的に決めることができなかったのです。

その後、小村寿太郎が1911年に不平等条約を改正するまでの間、実に50年以上にわたって日本はアメリカに対して関税自主権がない状態が続きました。この歴史的事実は日本の貿易史においても重要なポイントなので、必ず押さえましょう。

保護貿易 ―― 第二次世界大戦につながった

1920年代〜1930年代にかけて、世界中が大不況に陥ります。このとき、世界中の多くの国が「保護貿易」の政策をとりました。つまり自国の産業を守るために、モノやヒト、そしてお金の移動を制限したのです。結果として、こうした世界的な流れが第二次世界大戦を引き起こした原因のひとつともいわれています。

貿易摩擦 ―― 日本とアメリカの間で起こった

戦後の1980年代、日本は高度経済成長を経て、自動車などの工業製品の輸出が盛んになりました。そしてこのときに起きたのが、アメリカとの「貿易摩擦」です。

自由貿易を進めると、海外の安くて品質の良い製品が国内に入ってきます。すると国内の産業がすたれてしまう可能性があり、国と国との関係が悪化するリスクがあるのです。特に1980年代、アメリカは自由貿易を採用していたため、日本の自動車などを多く輸入していました。そのためアメリカ国内の自動車産業などが打撃を受け、日本とアメリカとの貿易摩擦に発展していったのです。

自由貿易 ―― 世界のトレンドに

2000年代以降、世界中の国々が「自由貿易」を進めていきます。TPPも、こうした流れのなかで枠組みがつくられていきました。

日本は2000年代はじめにシンガポールとEPAを締結し、その後も世界各国とFTAやEPAを進め、近年ではTPPとRCEPを進めています。RCEPとは、アジアやオセアニアの国々でEPAを目指す、世界的な枠組みのひとつです。

まとめ

「ニュースでよく聞くけどわからない言葉」の筆頭ともいえるTPPについて、知識を一から紹介してきました。中学受験対策としては、まずはお伝えした3つの知識を押さえ、余裕があれば関税に関わる歴史を時代ごとに押さえていきましょう。一発ではなかなか理解が難しい分野でもあるので、ぜひ繰り返しこの記事を読み返して、TPPについての理解を深めていってくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

0