連載 医学部合格を見据えたわが家の中学受験

子供の目標設定と母のモチベーション ―― 医学部合格を見据えたわが家の中学受験

2019年6月11日 安達隆夫

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難関中学を目指す家庭の場合、「子供を医師にしたい」「医学部進学に有利な学校に行かせたい」といった考えのもと、中学受験に挑む家庭は珍しくないでしょう。将来医師になることや、医学部進学を見据えた受験というと、親自身が医師家系であったり、高学歴層だけの特別な話に感じるかもしれません。

両親が中学受験未経験の文系でも、難関中学に合格

実は、わが家も最終的に医学部進学を見据え、難関校合格を目指し、中学受験に挑んだ家庭のひとつです。ただし、私と妻は医師でもなければ、医療関係者でもありません。旧帝大出身でもなく、文系学部出身で決して数理科目に明るいとはいえない夫婦です。しかも、共に公立中出身で、中学受験の経験はありませんでした。

ですが、私の息子は、東大合格者数で毎年トップクラスに入る中高一貫校へ入学し、第一志望としていた国公立医学部へ現役での合格を果たしました。こうした経歴の親でも子供を難関中学、6年後の医学部合格へと導くことは可能ということです。

この記事では、主に中学進学までのプロセスを振り返ってみて、父親として特にこの点が大切だったと感じたポイントをふたつ紹介させて頂きます。ひとつは、子供の目標設定と中学受験をする意味の話。もうひとつは、母親のモチベーションについてです。

医師をすすめるよりも、資格の優位性と選択肢を伝える

ネット上の受験相談記事を読んでいると、わが子に医師になってもらいたいと考える保護者は、子供に医師をすすめ過ぎる傾向を強く感じます。

もちろん子供自身が「医師になりたい」と思う必要がありますから、医師をすすめたくなる理由はよく理解できます。しかし、親が医師をすすめ過ぎれば「親がうるさくいうから仕方なく医師を目指す」といった後ろ向きな将来目標になってしまうおそれがあります。

難関中学出身の受験エリート達にとっても、医学部入学は大変狭き門です。後ろ向きな動機では、彼らであっても長期にわたる過酷な受験勉強を乗り切って合格を勝ち取るのは容易ではありません。子供が自分で決めた目標であることが、受験を乗り切るうえで大切です。

そこでわたしは、医師をすすめたい気持ちを抑え、まずは医師を含めた職業資格を10近くピックアップしました。そして、資格の優位性やメリットなどを、小学生が理解できる言葉に置き換えて何回も説明しました。

つまり息子には資格とその選択肢を提供し、最終的な判断を委ねたんです。この方法はわたしの息子の場合、見事に的中しました。「将来絶対に資格を取りたい」と息子からから進んで口にするようになったのです。子供が医師を選択するまでの距離はぐっと短くなりました。小学生の段階なら、そこまでで十分です。焦って医師になることを目標設定させる必要はないのです。

子供と同じくらい、母親のモチベーションが重要

中学受験は、自己管理能力が十分備わっていない小学生の子供をいかに動機づけし、勉強に向かわせるかが勝負のように思われがちです。

しかし、サポートに回ることが多い母親のモチベーションを維持することも非常に大切だと思います。そして、大変な思いをして子供を支えている母親を支えることができるのは、父親です。

毎日の塾の送迎、休日返上で求められる子供の宿題管理、栄養に配慮したお弁当や夜食の用意、頻繁に行われる保護者面談……「中学受験は母親の受験」といわれるほど、特に母親には大変な労力がかかります。

子供心にも、「こんなに頑張ってくれているお母さんの期待に応えたい」と勉強へのモチベーションが自然と湧き上がってくるものです。

父親のわたしは、「子供が頑張れているのは母親の功績だ」という前提に立つことを心がけました。例えば子供のテストの成績が良かったときは、「お母さんのおかげだよ」と、母親への感謝の気持ちを具体的に伝えました。子供の前で、妻のサポートに感謝しているということを伝え、妻と二人きりのときも、子供の受験勉強を支えてくれていることに感謝していることを伝えました。

母親の日常的なサポートは、中学受験に取り組む親子ならどうしても「当たり前」になりがちです。しかし、母親のサポートなしには、子供も父親も受験を乗り切れません。

父親には、ぜひ母親へ感謝の気持ちを忘れずに伝えてほしいと思います。感謝の気持ちを伝えることは、「このサポートでいいのだろうか」という母親なりの不安や迷いを解消すること、そして勇気づけることにつながります。そのためには、中学受験生を持つ母親の苦労や不安を、他人事ではなく、正しく詳しく理解することを心がけることが大切なのです。

 

※記事の内容は執筆時点のものです

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