連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

難関校を狙わない中学受験とは ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2019年7月04日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

「成績が思うように伸びない……」
「勉強に身が入らない……」

中学受験は、親も子もさまざまなストレスを抱えることがあります。「偏差値が高い中学校に入って、将来は難関大学へ行く」といった高い目標を設定すればするほど、親子に大きな負担がのしかかってくることもあります。しかし、中学受験は「偏差値が高い学校を目指すこと」が全てではありません。難関中学を”あえて目指さない”受験もあります。

連載初回となる今回は、中堅校受験専門の個別指導塾「進学個別桜学舎」塾長の亀山先生に、最上位を狙わない中学受験について話を聞きます。

偏差値60「以下」専門の理由は、入試問題の傾向にある

私が運営する進学個別桜学舎は、首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門にしています。その理由のひとつが、入試問題の傾向の違いです。私が見る限り、偏差値60あたりを境にして入試問題の傾向が変わるように思います。

難関校の入試には専門の対策が必要

偏差値60を超えると、一筋縄ではいかない問題を出す学校が増えてきます。たとえば難関中学校の算数では、同じ問いのなかでひとつの答えを出し、さらに出てきた答えを当てはめて最終的な答えを出す……といった2段構え、3段構えの問題が出題されることが多いんですね。

また、難関校の入試問題にはそれぞれ傾向があって、志望校ごとの対策問題を多く解く必要があります。「この学校は絶対に年号の問題が出るよ!」「この問題が出たらここから切り込め!」という出題パターンを体に叩き込んでおかないと、時間内に問題を解くのは正直厳しい。続けたい習い事などを我慢して、ストイックに受験勉強に励む必要もあるでしょう。

中堅校なら基礎問題をしっかり押さえることで合格を狙える

一方で、基礎学習中心の受験テキストを確実にこなしていけば合格できるラインが、ちょうど偏差値60くらい。中堅校以下の入試問題は、基礎レベルの内容を問う問題がほとんどです。

偏差値60以下の学校は、難関校と違って学校ごとの対策をそこまで練る必要はありません。基礎的な知識をきっちり固めておくことができていれば、多くの中堅校の問題をカバーできます。そのため、「志望校を早く決めなきゃ」と無理に焦る必要はありません。極端な話ですが、ギリギリまで受験校に悩んだら複数の学校へ出願しておいて、その日の朝にどの学校の入試に行こうか決めるのも「あり」です。

勉強と同じくらい、好きなことも頑張ってほしい

中堅校以下を目指すのであれば、「5年生から受験勉強を始めて、習い事と両立しながら志望校合格を目指す」という方針でも大丈夫です。「メリハリをつけて勉強すれば合格に届く」「受験のために何かをやめる必要はない」と親御さんにも話しています。

私の塾では、受験勉強と並行して芸能活動をしていた子が何人もいました。お昼の舞台公演が終わって、ドーランが落ちきらないまま塾に来て勉強をしていた子も。そういう子たちは、好きなことをやるために勉強にも全力で取り組みます。そうした気持ちの切り替えをしっかりおこなった結果、みんな第1志望の学校に合格していきました。

子供がやりたいことは、のびのびとさせてみる。そこから知的興味が生まれることもあります。「絶対に難関校」ということでなければ、子供の興味関心を大切にした受験期間を過ごしてほしい。そして「よい時間が過ごせたね」と親子で笑いあえる中学受験をしてほしいと思って、日々生徒に向きあっています。

「よい学校」は、偏差値だけでは決まらない

偏差値60以上の中学校の生徒は、やはり「大人」な子が多いです。私の塾でも偏差値60以上の学校に受かる子はいますが、そうした子は中学校に入ると印象がガラッと変わります。ピシッとした雰囲気をもつようになりますね。

偏差値60以下の中学校に通う子は「今までどおり」という印象。しかしこれが悪いことかといわれると、決してそうではありません。関心があることを見つけて、のびのびと中学校生活を楽しんでいる子はたくさんいます。また中堅校の先生とお話する機会がありますが、とても丁寧に生徒と向き合っていたり、最新設備を取り入れて新しい学校のカラーをつくっていたりと、教育熱心な先生が非常に多い。進路指導がしっかりしていて、大学の進学実績がいい中高一貫校もたくさんあります。

偏差値を基準に学校選びをするご家庭は、まだまだ多いと思います。しかし偏差値だけでなく、いろいろな物差しを使って「お子さんにぴったりの学校を探してほしい」と私は考えています。

中学受験をするうえで、親御さんに知っておいてほしいこと

「偏差値に捉われ過ぎないこと」と同じくらい、親御さんに知っておいてほしいことがあります。「常に笑顔でいること」の大切さです。残念ながら志望校に落ちてしまうお子さんは、親御さんが苦しんでいる姿をみせていることが多いものです。

まだまだ小学校に通う子供は、親に影響されることが多い年齢です。成績が上がったときに親が喜んでくれないと、「自分のせいで悩んだり苦しんだりしているんだ……」と、落ち込む子も少なくありません。

子供の努力が結果につながるときもあれば、うまくいかないときもある。しかし子供はいつだって、親には笑っていてほしいと思っています。

中学受験は、親御さんも真剣です。しかし真剣になるあまり、つい恐い顔で子供と接してしまうことがあります。子供の努力を、笑顔で見守ってあげられるとよいですね。次回は、中学受験で学力がグッと伸びる子の特長についてお話します。


■親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」バックナンバー

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

合わせて読みたい