連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

学力を伸ばすための「原動力」とは ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2019年7月05日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

前回は、難関校を狙わない中学受験 について解説しました。今回は、学力を伸ばすための「原動力」について亀山先生に伺います。

学力が伸びる子は、「自分で考える習慣」が身についている

伸びる子は、興味をもって勉強に取り組んでいます。先生に質問するときは、考えた過程を伝えてくれることが多いですね。

「この問題はこう考えて、こう進めてみたんですけど、答えがあわないんです!」と、”考えた跡”をちゃんと説明してくれます。そういう子は、「ここを確認するのを忘れてない?」とだけ伝えると、あとは自力で答えにたどり着きます。

彼らはパズルやクイズを解くときと同じく、楽しみながら問題を解いているんですね。先生を頼るのは、考えに煮詰まってヒントが欲しいときだけです。手取り足取りすべてを教えてもらう、という受け身の姿勢ではありません。「自分で考える習慣」が身についているため、先生が隣に座って教え込まなくても自分の力で成績を伸ばしていきます。

一方で勉強に興味がなさそうな子は、白紙の答案を持って質問にきます。そういう子には、「わからない問題も、何とかわかるところまで書いて質問にこようね」と、もう一度自分で考えさせるようにしています。「自分でまずは解いてみよう!」という意欲が多少なりともあれば、問題に立ち向かった跡が問題用紙に残っているものです。

自分で考えてから質問にくる子には、その子の学力に合わせたより的確なヒントを先生が与えられます。どの段階でわからなくなったか、ハッキリさせることができるからですね。

先生とのこうしたやりとりのなかで少しずつ勉強のやり方や楽しさがわかり、成績が伸びていく生徒はたくさんいます。

「志望校LOVE」という熱い気持ちが成績を伸ばす

学力がぐんぐん伸びていく子の特徴として、「志望校への憧れがかなり強いこと」も挙げられます。まさに、学校に惚れこんでしまう感じです。

6年生で偏差値40の生徒が、偏差値が20以上離れた志望校に合格

首都圏模試の偏差値が64~65くらいの中学校に合格した生徒がいました。6年生が始まったときの彼女の偏差値は40。私の塾では小学5年生から中学受験対策をおこなっていますが、入塾当初から成績は鳴かず飛ばずで、お母さんもとても心配されていました。

しかし自分の偏差値と志望校の偏差値が20以上離れていても、本人はどうしても志望校に行きたいといいます。文化祭や学校説明会など、志望校の行事は欠かさず足を運んでいました。

「入れたらいいな」という夢にも似た気持ちが、「絶対にこの学校に入る!」という現実的な目標に変わっていったのでしょう。はじめの頃は、わからない問題があるとすぐに質問に来てしまう子でしたが、だんだんと問題に取り組む姿勢が変わっていきました。

最後の模試で偏差値57~58をとったが志望校には届かない

最後の模試でとった偏差値は57~58で、志望校の偏差値には届きませんでした。私から見ても「志望校の合格は正直きびしいかな……」と感じました。

2月を迎えましたが、第2志望の学校の初日受験に落ちてしまいます。ショックを受けているその子を塾に呼んで励まし、先生たちみんなで送り出しました。第2志望の学校は複数回受験できたため、まだチャンスがあります。結果として、第2志望の2回目の挑戦で彼女は合格をもらいました。

あとは第1志望の合格をつかみ取るだけです。その学校も複数回受験を実施していましたが、最初は受ける予定はありませんでした。しかし、第1回と最後の第3回の受験をその子が希望し、挑戦することになりました。

しかし、結果は不合格。それでも、本人は親御さんと一緒にあいさつにきて「第2志望の学校に受かってよかった」と納得している様子でした。

諦めずにつかみ取った、第1志望の補欠合格

ところが第2志望の学校の入学金を払い終え、制服も作り終えたころ、第1志望の学校から繰り上げ合格の知らせが来たんです。

繰り上げ合格の対象になったのは、彼女が勇気をふりしぼって受けた3回目の試験でした。複数回受験の場合、回数を重ねるごとに試験の偏差値が上がる傾向にあります。3回目の試験は偏差値66もありました。最後の模試で偏差値57~58の判定を受けてからの毎日、きっと彼女は「どうしても志望校に合格したい」という思いで相当な努力をしたのでしょう。

「志望校LOVE」という気持ちを切らさずに最後までファイティングポーズをとり続けられる子は、はじめは手が届かないと思っていた学校であっても合格をつかみ取ることがある。それを裏付けてくれる出来事でした。

その生徒は第1志望の学校に進学して、今でも楽しそうに学校生活を送っています。

中学受験は、人生の「大きな財産」を得られる

私の塾が専門としているのは、偏差値60以下の私立中学への受験指導です。しかし、「どうしてもあの学校に行きたい!」という思いがある生徒には、偏差値に関係なく志望校を選ばせています。

しかし、前回の記事でも説明したように偏差値60を境に入試問題の傾向が変わってきます。偏差値60以上の学校を目指すためには、これまで以上に勉強する必要が出てきます。

それでも前向きな気持ちで勉強が続けられるのは、「勉強を楽しめる気持ち」や「志望校LOVE」という思いがあるからです。これらの思いが、志望校合格の「原動力」となるんですね。

「勉強を楽しめる気持ち」は「努力を続ける楽しさ」、「志望校LOVE」は「目標を叶えるための強い動機」と言い換えられます。

この2つを兼ね備えた子は、大人になっても夢や目標に向かってひたむきに取り組むことができるはずです。これも、中学受験で得られる大きな財産といえるでしょう。

次回は、「親子で納得できる志望校の探し方」について説明します。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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