連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中学受験生のモチベーションをあげるには ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2019年8月26日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

前回は、「6年生の夏期講習後の過ごし方」について解説しました。今回は、「中学受験生のモチベーションを上げる方法」についてお届けします。

授業を増やすより、勉強のモチベーションを上げることを重視する

「うちの子の成績が上がらないのですが、どうしたらいいでしょうか?」という相談を受けることがあります。親御さんとしては、「個別指導の授業を増やしてほしい」「補習を入れてほしい」というように、塾に対して具体的な解決策を講じてほしいのかもしれません。しかし、私としては、塾から提示された以上の授業をとる必要はほとんどないと考えています。

大切なのは、勉強に対するモチベーションを上げることです。「授業を増やすこと」と「成績が上がること」は、必ずしもイコールとは限らないんですね。そして、子どもがモチベーション高く勉強するには、「勉強が楽しい!」「問題が解けて嬉しい!」といった経験をさせてあげることが大切です。

大人が与えていいのは「ワンヒント」だけ

特定の科目、単元が苦手な子は、教えた直後はできるのに、時間をおいて1人で問題を解こうとするとまったく解けないことがあります。問題の解法を教わったのに、実践できないのは、まだそれをできるだけのレベルに達していないということです。

でも、心配ありません。親や先生が正しく子どもと向き合えば、苦手意識は克服できるようになります。そのために、「できない問題を自分ひとりで考え抜く経験」をさせましょう。

もちろん、ノーヒントでは難しい場合が多いので、問題の前で子どもが手詰まりになっているときは、「ワンヒント」だけ与えてあげてください。ポイントは、必死に考えて問題に取り組んでいるけど、なかなか正解にたどり着かないときに、「間違っている箇所だけ」を指摘してあげることです。

一方で、あまり悩んでいる様子のない子どもに、いたずらにヒントばかりを与えていては力がつきません。「ワンヒント」を与えて、子どもが自分で考えるきっかけをつくることで、自信と実力がついてきます。

「よくなった部分」を見つけて、伝えてあげる

成績が伸びない子に対し、「追い込みが足りない」「あせりが足りない」という言葉を親御さんは使いがちです。たしかに、根性や負けん気で苦境を乗り越える子もいますが、それはごく少数です。大半の子どもはプレッシャーに押しつぶされてしまいます。親御さんには「子どもを褒めて伸ばすこと」を、常に意識してほしいと考えています。

「前よりもしっかりと宿題に取り組んでいる」
「苦手科目だった算数が、最近は好きになってきている」

このように、これまでと比べてよくなった部分を見つけて、伝えてあげてください。子どもは、「ちゃんと親が見てくれているんだ」と思うと、勉強に対するやる気が上がってきます。

「ニコニコしながら勉強に励むこと」が、子どもを最も成長させることだと、私は考えています。子どもを焦らせたり、追い込んだりする必要はありません。

模試の結果に、親はどう向き合えばいいのか

模試の結果が振るわないことは、必ずといっていいほどあります。そのときは、お子さんの前でこう言ってあげてください。

「この問題、もったいなかったね。テキストに出てきた問題だから、もう少し練習していたら取れたかもしれないね」

点数が取れなかったことに、子どもは親以上にショックを受けています。彼らの頑張りを否定するような言葉をかけるのではなく、「あと少しの頑張りで結果が大きく変わること」を伝えてあげることが大切です。「もったいない」という言葉を、意識的に使ってみるのもおすすめです。

模試の結果を見るときは、「少し頑張れば解けた問題」を4つ探す

模試の結果を次につなげるためのポイントは、「少し頑張れば解けた問題」を4つ探すことです。算数の場合は、1問につき5点のことが多いですから、これが解けていれば20点も上がります。

親子で一緒に、偏差値のグラフを確認してみるのもよいですね。「あと20点取れたら、偏差値がどれくらい上がるのか一緒に見てみよう。今回の場合だと8も上がるよ!」といったように励ましてあげましょう。偏差値が8も上がれば、受験できる学校も変わってきます。子ども自身も「あと少しの頑張りでこんなに変わるんだ!」と、気持ちが前向きになるでしょう。

次を目指して、前向きな言葉をかけてあげる

間違えた問題に対する親御さんの向き合い方で、子どものモチベーションは大きく変わってきます。「やることはたくさんあるから、遊んでいる暇はない! もっと勉強しなさい!」と追い込むのか、「次はできるよ! 頑張ろう!」と励ますのか。フィードバックするにも、結果を否定的にとらえてお尻を叩くのか、次を目指して前向きな姿勢を促すのかで、子どものやる気は大きく変わります。

ひとつひとつの結果に神経質になるのではなく、親御さんは気持ちに余裕をもって、ゆったりと構えたいですね。

子どもの背中を一押しできる心の余裕をもつ

親子で足並みがそろわなかったり、子どもが思いどおりに勉強してくれなかったりということは、中学受験ではよくあることです。

もしこういったことが起こったのなら、親御さんは勉強させようと子どもの手を無理に引っ張ろうとしてはいけません。子どもの背中を一押しする言葉をかけることが大事です。

一押しする言葉は、成長を褒める言葉だったり、前向きな姿勢を促す言葉だったり、さまざまです。状況に応じて、「子どもがかけられて嬉しい言葉はなんだろう」と考えてあげてください。

子どもにとって、親御さんの励ましは勉強を頑張るモチベーションにつながります。中学受験生をもつ親御さんは、どんなときでも子どもの背中を一押しできる心の余裕が必要といえるでしょう。

次回は、「‟情報”との向き合い方」について解説します。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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