日本人ノーベル賞受賞者の出身中学は? 各校の教育の特色や進学実績をチェック
世界的な賞として有名な「ノーベル賞」。2019年には、リチウムイオン電池の開発に貢献した吉野彰氏が、ノーベル化学賞を受賞しました。過去にも多くの日本人がノーベル賞を受賞してきましたが、ノーベル受賞者はどのような中学校で学びを深めていたのでしょうか?今回は、日本人ノーベル賞受賞者3名をピックアップし、研究内容や出身中学を紹介します。ノーベル賞受賞者を生んだ各校の特色や、進学実績もチェックしましょう。
ノーベル賞とは
ノーベル賞は、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベル氏の遺言に基づいて1895年に創設された賞です。物理学・化学・医学生理学・文学・平和の5分野、そして1968年に新たに加わった経済学を合わせた「6分野」に賞が贈られます。受賞者の発表は、毎年10月。ノーベル氏の命日である12月10日に授賞式がおこなわれます。
ノーベル氏はダイナマイトの発明者として有名ですが、実業家としても大きな成功をおさめた人物です。ちなみに、ノーベル賞の賞金はノーベル氏が築いた巨額の遺産を元手にしており、現在は各賞に約1億円の賞金が贈られます。
日本人ノーベル賞受賞者の出身中学をチェック
日本人ノーベル賞受賞者は、いったいどんな中学校で学びを深めたのでしょうか?IPS細胞の研究で有名な山中伸弥教授や、量子力学の発展に寄与した朝永振一郎氏など、著名なノーベル賞受賞者の足跡をたどってみましょう。
山中伸弥氏 大阪教育大学附属天王寺中学校
山中伸弥氏は、2012年にiPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞。iPS細胞は体中のあらゆる細胞になれる能力を持ち、その性質から「万能細胞」とも呼ばれます。山中教授の研究グループは、iPS細胞の樹立に世界ではじめて成功したことを報告しました。iPS細胞の研究がさらに進めば、難病に対する新しい治療法や薬が開発される可能性があります。
山中教授が通っていたのが、大阪教育大学附属天王寺中学校。中学時代は、柔道部や生徒会活動に打ち込こみながら勉学にもはげみ、成績は常にトップクラスだったそうです。
天王寺中学は理科の授業に力を入れていて、教科ごとに特別教室が用意されています。さらに最新型の光学顕微鏡がひとり1台ずつ用意されているなど、恵まれた環境で勉強できるのが特徴です。また、生徒全員が自由研究に取り組み、研究や発表をとおして観察力・分析力・表現力を磨いています。体験を通した学びや、創造性に重きを置いた教育が天王寺中学校の特色といえるでしょう。
進学実績
2019年の入試データをみると、有名国公立大学の現役合格者数は、京都大学7名、大阪大学11名、神戸大学8名、大阪府立大学6名、大阪市立大学8名など。このほか、関西大学14名、関西学院17名、同志社大学15名、立命館大学12名と、難関私大の合格者数も多い傾向にあります。
朝永振一郎氏 京都府立洛北高等学校附属中学校
日本人初のノーベル賞受賞者といえば、湯川秀樹氏。そして湯川氏の受賞から16年後の1965年、日本人として2人目のノーベル賞受賞者となったのが朝永(ともなが)振一郎氏です。朝永氏は「紙と鉛筆だけ」の世界といわれる理論物理学の研究に携わった人物。「場の量子論」の根幹部分の構築に大きな貢献をした「くりこみ理論」の発表により、湯川氏に続きノーベル物理学賞を受賞しました。
朝永氏は、‟日本最古の旧姓中学“として知られる京都府中学校を前身とする、京都府立第一中学校に通っていました。京都府立第一中学校は、湯川秀樹氏の母校でもあります。現在は京都府立洛北高等学校附属中学校と名を変え、2018年には中高一貫コースの高校過程を普通科から「サイエンス科」に改称。生徒みずからテーマを設定して研究を進める「課題研究」など、ユニークな授業を実施しています。また、部活動がさかんな学校としても有名です。文武両道を実現する教育をとおし、社会に貢献する人物の育成に力を入れています。
進学実績
2018年度の現役合格者数をみると、国公立大学では京都大学8名、北海道大学4名、神戸大学7名、大阪市立大学6名、大阪府立大学4名。このほか、関西大学12名、関西学院大学8名、同志社大学28名、立命館大学41名と、関西の難関大学合格者を多く送り出しています。
野依良治氏 灘中学校
野依良治(のよりりょうじ)氏は、2001年にノーベル化学賞を受賞した人物です。研究内容は「不斉(ふせい)触媒による水素化反応の研究」。化合物のなかには、右手と左手といった‟写し鏡”のような関係のものがあり、いわゆる‟右手“の物質は「有益」、‟左手”の物質は「有害」という性質をもつことがあります。野依氏は「不斉合成」という方法で、化合物の‟右手型“と‟左手型”を作り分けること成功しました。この技術は、医薬品や香料の生産などさまざまな分野で活用されています。
野依良治氏が通っていたのが、灘中学校です。灘中学校は、「自由・自主・自立」を重んじる中高一貫の男子校。中学1年生から高校3年生までの6年間、ずっと同じ‟教員団“が学年の指導を受け持つのが特徴です。これによって生徒一人ひとりの変化に気づきやすくなり、適切なサポートもできます。このような「チームによる見守り」が生徒の個性をさらに伸ばし、また毎年多くの学生を最難関大学に送り出す理由のひとつといえるでしょう。
進学実績
2019年の入試データをみると、国公立大学の現役合格者数は、東京大学59名、京都大学33名、大阪大学6名、京都府立医科大学5名など。最難関大学に、多数の合格者を輩出しています。
まとめ
ノーベル賞受賞者を輩出した中学校は、生徒個人の好奇心や学ぶ姿勢を大切にしたり、チームで生徒を見守る体制を整えていたりと、生徒の成長を後押しする学校が並びます。子供の個性を伸ばし、先生の適切なサポートを受けられる環境が、日本が世界に誇るノーベル賞受賞者を育てあげた秘訣かもしれませんね。
※記事の内容は執筆時点のものです
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