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【中学受験の理科攻略】有機物の燃焼――紙は燃えるとどうなる?

専門家・プロ
2019年10月18日 伊丹龍義

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紙や砂糖、エタノールなどの有機物を燃やしたらどうなるか? というのは、中学受験の頻出単元です。これを単なる暗記で終わらせないように、今回は「有機物」「燃焼」の2つをキーワードとして本質的な解説をしていきます。ちょっとした問題も出しているので、お子さんと一緒に読んでみてください。

有機物と無機物――有機物は何からできているのか

「紙が燃えるとどうなるか」という問題に、“理科的に”答えることはできますか?「2つの知識」を使って、この問題の答えを一緒に考えていきたいと思います。

有機物と無機物

まず1つ目に使う知識は、「有機物と無機物」です。身の回りのものを分けるときには色々な分け方がありますが、そのなかのひとつに、「生き物そのものや、生き物がつくったのもの」を「有機物」、それ以外のものを「無機物」とする分け方があります。

少し難しい話になりますが、地球上の生き物の身体は、細かく見ていくと「炭素」(鉛筆の芯と同じ成分)と、「水素」という軽い気体、この2つを中心としてつくられています。そのため、生き物に関係するものは、だいたい「炭素」と「水素」からできていることになります。これを「有機物」といいます。

「紙が燃えるとどうなるか」という今回の問題の「紙」も、木という“生き物”から作られたものです。そのため「有機物」に入り、「炭素」と「水素」を中心としてつくられている、ということになります。ちなみに中学校以降の理科では、炭素を「C」、水素を「H」のように記号で表していきます。頭の片隅に置いておいてくださいね。

「ものを燃やす」とは酸素がくっつくこと

2つ目は、「ものを燃やすとは酸素がくっつくこと」という知識です。

みなさんも知っているとおり、紙に火をつけると燃えます。でも、この「燃える」ということを、もっとよく、もっと細かく見ていくと意外なことがわかります。じつは、ものが燃えているときには、「酸素」(私たちが呼吸で吸っているもの)という気体が、ものに勢いよくくっついているのです。そして、その勢いが強すぎて、周りに光や熱が出てきているものが「火」なのです。

小学校などでは「酸素(空気)がないと火がつかない」と習いますが、これは当然のことなんですね。なぜなら、酸素が勢いよくくっつくことを「燃える」というので、酸素がなければ燃えようがないからです。ちなみに中学校以降の理科では、酸素のことを「O」という記号で表します。

有機物の燃焼――二酸化炭素と水が発生し、酸素不足により炭が残る

「有機物と無機物」「ものを燃やすとは酸素がくっつくこと」という2つの知識から、「紙を燃やす」ということは、「炭素(C)」と「水素(H)」でできているものに、「酸素(O)」が勢いよくくっつくことだと分かります。では、炭素に酸素がくっつくとどうなるか、水素に酸素がくっつくとどうなるか想像できますか?ヒントは、これまで紹介してきた「C」「H」「O」という記号にあります。

正解は、以下です。

■炭素(C)と酸素(O)がくっつくと、二酸化炭素(CO2)になる
■水素(H)と酸素(O)がくっつくと、水(H2O)になる

「CO2」「H2O」という言葉を、どこかで聞いたことがあると思います。これはそれぞれ「二酸化炭素」と「水」を表します。「CO2」は、炭素(C)に酸素(O)が2個くっついたもの。「H2O」は、水素(H)2個に酸素(O)がくっついたもの、という意味で使われます。

応用的な話ですが、ものが燃えるとき、空気中の酸素がものに勢いよくくっついていきますよね。すると酸素が途中で足りなくなり、炭素(C)に酸素がくっつかずに、そのまま炭素(C)として出てきてしまうことがあります。これを「炭(すみ)」といいます。「炭素」という名前からも想像できますよね。私たちは、この炭がでることを「焦げた」と呼んでいます。

というわけで、「紙を燃やしたらどうなるか」という問題の解答例は、「二酸化炭素と水ができ、後に黒くこげたものが残る」でした。

この結果は、生き物系のもの、つまり有機物であればすべて同じです。そしてこれは、砂糖の燃焼やエタノールの燃焼の問題などにも応用できる知識です。

【参考】
中学生向けですが、余裕があればYouTube動画「エタノールの燃焼」(TryIT)もご覧ください
https://www.youtube.com/watch?v=Gd73Fp3_N0Y&t=503s

理科の問題では、石灰水が白くにごることで「二酸化炭素」を確認し、塩化コバルト紙が青から赤に変わることで水を確認するという流れが多いようです。また、酸素がくっつくにも関わらず、ものから二酸化炭素と水が出ていくために、燃やす前と比べて「軽くなる」というのも問われるポイントとなります。

本質的な知識を身につけよう

初めて聞くような難しい話もあったと思いますが、本質的な知識を身につけておくことで、ただ暗記するよりも幅広い範囲の問題に解答できるようになります。興味をもったことはいろいろ調べて、単なる暗記で終わらせないようにしましょう!

※記事の内容は執筆時点のものです

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