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中学受験に読書は不要? 入試直前の対策に読書が向かない3つの理由

2019年11月12日 天海ハルカ

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読書は、語彙が増えたり読解力が鍛えられたりと、中学受験に役立つ力が養えます。また、読書に慣れている子のほうが長文読解への苦手意識は少ないように感じます。

このように読書にはたくさんのメリットがあるため、「子供に読書をさせて受験に役立てたい」と考える親御さんも多いでしょう。しかし、私は本人が読みたいと思わなければ、中学入試が迫るなかで子供に無理に読書をすすめる必要はないと考えています。特に5、6年生の場合、急に慣れない読書を始めると、入試対策に割く時間が減ってしまうというデメリットもあるのです。

読書と国語の読解問題は、読み方、向き合い方が違います。読書は語彙力や読解力アップにはつながりますが、即効性はありません。国語の成績に直接結びつくまでには長い時間がかかります。たしかに読書はすばらしいものです。それでも私が「中学受験のために読ませるのは得策でない」と考える理由を詳しく説明します。

【理由1】読むジャンルが偏ることがある

読書は、どうしても読むジャンルが偏ります。たとえば、読書といっても説明的な文章が書かれた本を選ぶことは少ないでしょう。物語を例にとっても、学校生活や冒険ファンタジーがテーマの本を選ぶ子が多く、戦争をテーマにしたものや昭和文学を進んで読む子はまれです。私が塾講師をしていたとき、生徒が塾に持ってきた本のほとんどは少年少女向けで、小学生でも共感しやすいものでした。

しかし国語の中学入試で出典となる文章は、大人向けの書籍から出されることがほとんどです。一歩踏み込んだ考察や、小学生には共感しづらい背景をもった登場人物など、さらっとは読めない文章が出題されます。

子供が自ら手に取る本と、入試で出題される本は大きく異なります。語彙も表現もストーリーも異なるため、入試の読解に直接結びつかないことも多いのです。

【理由2】読書と読解問題は読み方が違う

読書の楽しさは、好きな時間に好きなスピードで読めることです。物語は想像力を広げ、自分を主人公の姿に重ねたり登場人物のセリフに感情を乗せたりして楽しみます。

一方で、入試の読解は決められた時間内に読み、決められた問題を解かなければなりません。主観的な共感や想像でなく、客観的な理解が必要です。たとえば物語文は俯瞰で読み、自分の感情は横に置いて内容を読み解く必要があります。

つまり、読書と読解では読み方が違うんですね。実際に「読書はするのに国語の成績が悪くて困っている」という親御さんの悩みを聞いたこともあります。読書と読解は読み方が違うので、読書をし続けても読解力が大きく上がるとは限らないのです。

【理由3】語彙力の定着には時間がかかる

読書のメリットは、漢字や語彙、表現が鍛えられることです。たしかに普段の会話や生活では目にしない言葉に触れることも多いため、読書は語彙力の底上げになるでしょう。ただし、これらの力は長く続ければじわじわ身につくもので、短期的な効果は期待できません。特に5年生以降は、入試に向けて勉強することが一気に増え、時間が足りなくなってきます。塾でも授業時間が増えますよね。

そんななかで、読書に時間を割くのは大変です。読書が趣味や気分転換であれば別ですが、受験のために読書をしようとすると単純に勉強時間が増えることになり、集中力ももちません。無理して毎日10分程度読んだところで、内容も飛び飛びで楽しめず、吸収できるものも少ないでしょう。読書は、長く続けることで真価を発揮します。そのため、受験直前期に‟駆け込み”でおこなうものとしては向かないのです。

中学受験を見据えるなら、低学年のうちに読書習慣をつけておくのが良いでしょう。もし4年生になって読書習慣がなければ、受験のためと読書をさせるより、読解問題を多くこなしたほうがはやく確実に読解力がつきます。

読解力を鍛えるために読書をさせたいのであれば、読解文章の本文だけを繰り返し読むのがおすすめです。入試問題だと1つの文章を読むのに10分程度かかります。難解な文章だと理解するのに2度3度読み返さなければならないこともあります。そこで読書の一貫として読解問題の文章を読めば、文章を読むスピードをつけることにもつながり、読解力も鍛えることもできます。

読解文章をまとめて読むなら、少し値は張りますが前年度の入試問題集を使ってみるのも一案です。

 

まとめ

偏差値が高くても読書をしない子もいれば、読書は好きだけど偏差値が上がらず苦労している子もいます。「読書をすれば読解問題が解けるようになる」といった単純なことではないんですね。入試のための読書ではなく、文章を読む楽しさを知ることや、新しい表現に出会うきっかけとして読書と付き合っていけると良いですね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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