連載 中学受験との向き合い方

家族で過ごす自宅時間の楽しみ方 ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2020年6月03日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

緊急事態宣言が解除され、子供たちも親御さんも、少しずつ外に出る時間が増えてきました。一時期と比べ感染者数は少なくなってきていますが、今後増える事態となれば、家族みんなで再び「おうち時間」を過ごす日々がやってくるかもしれません。コロナ禍のひと山を超えた今、どのように「おうち時間」を過ごせばいいか。今回は、中学受験をする家庭に限定せず考えてみようと思います。

誰かと気分転換をするということ

苦労や我慢が多い生活のなかで、ぜひ意識してほしいのが分別思考です。この場合は「してもいいこと」と「してはいけないこと」の2つを分別、すなわち線引きすることです。この分別で不要なストレスを軽減することができるはずです。まずは、家族でできる気分転換について考えてみましょう。

社会性を伴う気分転換

報道番組では「ソーシャル・ディスタンスを保ちましょう」と伝えられています。その意味するところは、「相手との距離を2m以上とる」というものです。しかし元来、ソーシャルという言葉には「社会的」「社交的」「交際上手」という意味合いも含まれています。それが「無分別」に使われているのではないかと私は心配しています。

ここで皆さんにお伝えしたいのは、フィジカル・ディスタンス(肉体的な距離)と、メンタル・ディスタンス(精神的な距離)の分別です。前者は距離を置くことが感染予防に重要ですが、後者は場面に応じて伸ばしたり縮めたりを自由自在に制御できることが望ましい。これを無分別に扱うと、精神的孤立を肯定しかねないのです。子供によっては、毎日顔を合わせていた友達と会えずに、もどかしい想いを抱えているかもしれません。

誰かとの「心のつながり」は、世代を問わず大切なことです。たとえば、テレビゲームをやるときは一人で楽しむのではなく、インターネットを使って友達同士でやってみる。あるいはZoomなどのオンラインビデオ通話機能を使って近況報告をしあってみる ―― こうした社会性を伴った気晴らしも必要です。子供が孤独にならないよう、親子でどう関わるのか、友達と連絡がとれる環境をどう整えるのかを考えてみましょう。

感覚器を喜ばせる

家庭内で気分転換をする際にもうひとつ意識してほしいのは、感覚器を喜ばせるということです。視覚、聴覚、味覚など五感を通して気持ちがいいと感じられることを、生活のなかに積極的に取り入れてみましょう。

夕飯やお菓子を家族で一緒につくってみたり、絵を描いてみたり、好きな音楽を聴いてみたり。本格的でなくとも、簡単な楽器でセッションしてみるのもいいかもしれません。こうした遊びのなかにある楽しさ、美しさ、美味しさなどは、言葉を交わさずとも、本能的に楽しむことができます。日ごろから対話を重ねることももちろん大切ですが、それをしなくとも非言語的な手段で心を満たす方法はたくさんあるのです。

本を読む時間が自分の世界を育てる

家族や友達同士でコミュニケーションをとる時間も必要ですが、一人で自分の世界を育む時間も大事です。そのためにおすすめしたいのは読書です。

本をよく読む子供は、親御さんの影響を受けている場合が多いです。子供がふと本棚に視線を向けると、親御さんがこれまで読んできた小説や随筆などが自然と目につく――そんなふうに、本が身近にある環境に身を置いている場合ですね。

こうした家庭にいるお子さんは、本を実際に手に取って読むとは限らないものの、本という「外の世界につながる窓」がすぐそばにあるということは感覚的に理解しています。本を開けば、自分の知らない世界で繰り広げられる冒険、ミステリー、コメディに出会えることを知っているわけです。

一方で、本を読まなかったり、本棚を置かなかったりする親御さんもいるでしょう。そうしたご家庭であっても、本への入り口として一緒に音読しあったり、子供の年齢が低い場合は読み聞かせをしたりして、本の世界を楽しむことはできます。「どんな本を読ませたらいいんだろうか……」と悩んだときにおすすめなのは、少年少女文学集など児童を対象とした名作集です。昔から子供たちに愛され続けてきた名作が詰まっていますから、たくさんの質のいい言葉に触れることができます。

選りすぐられた言葉を多く知ることは、自分自身の世界を豊かにするためにとても大切です。こうした言葉の数々に触れながら、夢中になって物語に入り込んでいく体験は、学びとワクワクをともに楽しむよい機会になります。

笑い飛ばしたり、楽しんだりする姿勢を持つ

長期間、家族一緒に家のなかで過ごし続けることは、あまり経験のないことでした。先行きの見えない状況で、さまざまな不安があるかもしれません。しかし、そんな状況をも笑い飛ばしたり、楽しもうとしたりする姿勢を、親御さんには持ってほしいと思います。子供は親の背中に影響を受けるもの。コロナ禍において培われたたくましさは、今後の人生においても大きな財産となることは間違いありません。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。「一家にひとり、一課にひとりのコミュニティ・カウンセラー」を育てることを目標としている。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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