理科の植物の蒸散作用の計算はどうやって解く?【例題つき】
中学受験の理科の問題には、植物の仕組みについて出題されることがあります。その中でも「蒸散作用」は、計算問題として出題されることが多い単元の一つです。そのため、蒸散作用の問題の解き方について確認しておく必要があります。
蒸散作用の問題は、植物の仕組みを知らないと簡単にひっかけ問題にひっかかってしまいます。まずは蒸散作用についてよく整理してから、問題にチャレンジしていくといいでしょう。
Contents
計算問題の前に知っておきたい植物の蒸散問題の知識
植物の蒸散作用の具体的な問題を解く前に、蒸散作用について間違いやすいポイントを確認しておきましょう。
蒸散作用とはどんなものか
植物の蒸散作用とは「植物の根から吸収された水が道管を通って葉まで運ばれ、気孔から水蒸気となって出て行く現象」です。植物は葉に存在している「気孔」と呼ばれる部分から水蒸気を発散します。
また、気孔は葉の裏側に多くあることから、葉の表と裏では水蒸気の発散量が違ってきます。これが蒸散の計算問題のポイントになります。蒸散にかかわる部位をふさいだり何かしらの作用を加えたりすることで蒸散の量を変化させ、そのときの水の量の変化の差から、実際に蒸散作用で放出されている水蒸気の量を導き出すのです。つまり、蒸散作用の計算問題は、蒸散作用の仕組みを理解している前提で出題されます。
葉以外からも蒸散している? 葉がないのに水分量が減っている理由
一般的に植物は、葉の気孔からしか蒸散しません。ですが、中学受験の理科では、葉がないのに水の量が減っているという条件の問題が出題されることがあります。実は植物によっては、茎からも微量ながら蒸散するものがあるのです。
また、水は水面からも蒸発していきます。水面からの蒸発を考慮しない問題の場合は「水面には油を浮かせておきます」といった条件があるはずです。こういった条件がない場合は、水面から蒸発する量も考慮に入れなければなりません。
蒸散作用の計算では、このようなちょっとした落とし穴があります。必ず、葉からの蒸散以外の作用で減っている水の量を確認して、誤差の訂正をしましょう。
ワセリンを塗るとは? ワセリンで気孔をふさぐ問題の考え方
蒸散作用の問題に、よく「ワセリンを塗る」という文言が出てきます。これは、ワセリンが植物の気孔をふさぎ、蒸散作用を止める働きがあることを利用した問題です。
葉にワセリンを塗ると葉からの蒸散作用が止まり、蒸散の量に変化が生まれます。また、根にワセリンを塗れば水の吸い上げを防げるので、これもやはり蒸散作用を止めるということにつながるのです。
蒸散作用の具体的な問題にチャレンジ!
それでは、ひっかけ問題に惑わされないように気をつけながら、例題を解いていきましょう。蒸散の計算問題はそれほどバリエーションがあるわけではないので、何度か似たような問題を繰り返すことで、注意するべきポイントがわかるようになりますよ。
植物の蒸散作用による蒸散量を求める例題
<問題>
葉の太さや大きさがほぼ等しい植物の枝を、次の条件で日光のよく当たる窓ぎわに25時間置き、減った水の量を調べた。
A=葉はそのまま、何もしない
B=葉の表にワセリンを塗る
C=葉の裏にワセリンを塗る
D=葉をすべて切り取り、切り口にワセリンを塗る
この実験でB、C、Dの水の減った量は、次の通りであった。
B:12.6cm³
C:6.0cm³
D:1.2cm³
この実験における、葉の表と裏からの蒸散量およびAの水の減った量をそれぞれ求めなさい。
どうやって解いたらいい? まずは考え方を整理してみよう
蒸散問題を解くとき、本来ポイントとなるのはAです。Aはどこにもワセリンを塗っていないので、自然な蒸散作用を行っているということがわかるでしょう。自然な蒸散が行われているときに減る水の量がわかれば、BとCはそれぞれ葉のワセリンを塗っている側での蒸散を止めたことになるので、AとBの比較で葉の裏から蒸散された水分量が、AとCの比較で葉の裏から蒸散された水分量が、それぞれ求められます。
ここにひっかかる! くせものは蒸散しないはずのDの水分量
ですが、この問題の例では、Aの値が与えられていません。では、Bでは葉の表での蒸散を止めているのだからBの水の減少量が葉の裏での蒸散の量、Cも同様に葉の表での蒸散の量……と考えてよいのでしょうか?
ここに落とし穴があります。注目すべきはDです。Dは葉をすべて切り取り、切り口にワセリンを塗っているため、葉からの蒸散ができません。ですが、実際には1.2cm³の水の量が減っています。つまりこの1.2cm³は、茎からの蒸散や水面からの蒸発で減った水分量となります。つまり、葉からの蒸散が作用しない状態でも、茎を水に挿して置いておくだけで水の量が1.2cm³減るということ。BとCで減った水の量には、この1.2cm³も含まれているのです。
実際の計算方法を確認しよう
これを踏まえて、それぞれの計算をしてみましょう。 葉の表からの蒸散量は、「Cの減少量-Dの減少量」で求めることができます。 そして葉の裏からの蒸散量は、「Bの減少量-Dの減少量」で求めること可能です。よって、葉の表・裏それぞれからの蒸散量は以下のようになります。
・葉の表からの蒸発量
「Cの減少量-Dの減少量」で計算
6.0-1.2=4.8
・葉の裏からの蒸散量
「Bの減少量-Dの減少量」で計算
12.6-1.2=11.4
葉の表からの蒸散量は4.8cm³、葉の裏からの蒸散量は11.4cm³となります。そしてAの水の減少量は、「葉の表からの蒸散量」+「葉の裏からの蒸散量」+「葉からの蒸散以外の減少量」(Dの減少量)ですから、
4.8+11.4+1.2=17.4
となり、17.4cm³と求められます。
まとめ
蒸散作用の問題は、それほど難しい計算があるわけではなりません。ただし中学受験では、葉からの蒸散以外の作用でも水が減るということを押さえていないと間違えてしまう問題が出題されることもあるので、惑わされないように整理しながら解いていきましょう。また、どこの部分をふさがれると蒸散ができないのかという点も、同時に把握しておく必要があるので、蒸散の仕組みから理解するようにしておくことが大切です。
※記事の内容は執筆時点のものです
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