中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

塾の役割 家庭の役割|親子のための、「探究」する中学受験

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変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を25年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

中学受験をしようとなったら、たいていの家庭では子どもを入塾させます。入塾後、親としては「塾に任せよう」と思いたくなりますが、そこから先こそ、家庭に重要な役割があるといいます。大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に聞きました。

塾の役割

私は進学塾の大きな役割は次の3つだと考えています。

  • 豊富な入試情報を持っている
  • 模擬テストを実施して偏差値を出せる
  • 入試までの期間をふまえたカリキュラムのペース配分をする

極論を言えばこの3点以外に進学塾に求められる役割はほとんどありません。塾のカリキュラムや教材や授業は、受験合格ラインに合わせていることが多く、そもそも子ども達ひとり一人に向き合うような個別最適なシステムにはなっていません。

もちろん、競争が好きだったり、能動的に取り組むような子にとっては進学塾のシステムで成長することが期待できます。講師との相性が良く、授業が楽しければ尚更です。しかし、経験上、そういう生徒はほんの一握りです。

家庭の役割

塾と子どものミスマッチがありえる以上、家庭には大事な役割があります。子どもの様子を注視することです。子どもがどんな状態かを把握せずに、「伸びない」「偏差値が下がった」などと判断するのはナンセンスです。

塾に通う子ども達の様子で、一番気にかけて観てほしいポイントは「楽しそうに通っているか」です。直接的に「塾、楽しい?」と聞いても、子どもは親に遠慮したり、プライドがあったりすると口では「楽しい」と言うことがあります。

子どもは楽しければダイレクトに態度に出ます。にこにこしながら帰ってきたり、聞いていないのに、塾でどんなことを学んだか、どんなことが印象的だったかなどを家族に話してくるようなら、楽しめていると考えてよいでしょう。

しかし、一向に話題にのぼらず「成績が伸びない」「下のクラスのままだ」「塾に行きたがらない」といった状態であれば、ちゃんと子どもと話をしてみることや、授業中の様子をこっそり見学することをおすすめします。嫌な気持ちを持ったまま我慢して塾に行き続けても、子どもにとっていいことはありません。

子どものためには「いったん降りる勇気」も大切

大人は中学受験という舟に一度乗りかかってしまうと、最後まで乗り切ってほしいと思いがちです。「せっかくここまでやってきたんだから」「あきらめ癖がつくのでは?」など考えますが、こうした損得思考はやめましょう。子ども一人ひとりの最適化を図れるのは、塾ではなく、家庭なのです。今の子どもの状態に沿って、その子が一番伸びる道を一緒に模索することこそ、成長につながります。

「行き詰っているかも」と思ったら、一度受験をするかどうかを含め、家庭で対話することが重要です。本当にわが子を成長させたいと思うならば、いったん舟を降りる勇気も大切だということを、いつも心に置いていただきたいです。学びを人生に活かせる人間になれるかどうかは、成績や合否よりも、今の自分をどう乗り越えるかを探究できるかにかかっているのだと思います。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

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