連載 親子のための、「探究」する中学受験

オンライン授業のメリット・デメリット|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2020年9月09日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

コロナ禍を受けて、学校や塾では動画授業などが行われました。教える側も教わる側もまだまだ不慣れで、不安・疑問を感じたかもしれません。また、オンライン教材も選択肢がどんどん増えている現状です。こうしたオンライン学習が今後さらに普及することが想像に難くない中、我々はどのように向き合うべきなのでしょうか。大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に聞きました。

オンライン授業のメリットと注目ポイント

オンライン授業のメリットは一般的に、通塾が不要になったり、オンデマンドであれば自分の好きなタイミングで何度も授業を視聴できたりということがあげられますが、探究的視点で私が注目しているのは、授業中の子どもの様子と授業内容を、自宅にいながら保護者が確認できるという点です。

通塾しているときは、授業中の様子などはなかなか確認できないものです。しかし、自宅でのオンライン授業であれば、先生がどんなやり方で授業を進めているのか、それを受けて子どもがどんな反応をしているのかをリアルタイムで見ることができます。

授業を確認する際に注目すべきポイントは、子どもたちの間に「対話」があるかです。教室での授業に比べて一人ひとりの様子を確認しにくくなる状況をふまえ、先生がどれだけ授業の準備を整えてきたか。画面の向こうの生徒たちのことをどれだけ考えているか。そうした先生の姿勢を確認するには、どの程度対話が行われ、ちゃんと成り立っているかをチェックする必要があります。一方的に情報を伝えるだけの授業だったり、一問一答だけのやりとりで終わるようだと、思考力は高めづらいものです。不自然だったり、強引過ぎたり、という場合も良い影響は期待できません。

子どもの反応で注目すべきは、自分なりに面白さや新たな気づきを得ているかです。これらを確認するためのポイントは「きれいにノートをとっているか」や「正答できているか」ではありません。私がおすすめする方法は、授業後に親子で対話する時間を取ることです。「あの場面はどう思った?」とか、「先生はこう言ってたけれど、あなたはどう考える?」など、授業を一緒に見ると対話を深めることができます。

そうすることで、子どもの思考も活性化し、授業内容も定着しやすくなります。子どもの考えや状態を確認できるので、今の塾や学習方法が本当に最適かどうかを検討するよい機会にもできます。「オンライン授業のあとは親子で対話」。標語にしたいくらいおすすめのアクションです。

受験勉強というとカリキュラムをこなし、偏差値を上げることに注意が向きがちですが、知識をどれだけ詰め込んだかではなく、いかに思考する機会を作れているか、という見方を忘れないでいただきたいと思います。もちろん、毎回親子で授業に参加しなくてはいけないということではありませんが、オンライン授業を「ベストな学習スタイル模索」の機会にしていただければよいと思います。

オンライン授業のデメリット

オンライン授業のデメリットとしては以下の4点が挙げられます。

1.視神経が疲れる

一定時間画面を見続けることの身体的なデメリットは避けて通れないと思います。一カ所を集中して見ることになるので、疲れを感じやすくなる子もいるでしょう。目を休める時間を作るように家族で意識するのが大事です。

2.気持ちの切り替えができない

自宅は普段の生活環境と変わらないため、学習モードへの切り替えがうまくできない子もいます。授業の場合、カメラに映らないところでサボることもできてしまい、集中力が途切れがちということもあります。

3.先生の目が届きにくい

オンライン授業の場合、同じ教室にいるときに比べて先生が一人ひとりの様子を細やかに見ることは難しくなります。教室であれば気づいてフォローしてもらえそうなことも、オンラインの場合見過ごされることもあるかもしれません。とはいえ、目が届きにくくなっていることは先生側も承知なので、そのうえでどんな準備や工夫をして授業をしているかで先生や塾のスタンスが測れます。

4.質問しづらい

画面越しだと質問・発言がしづらいという声も多いです。対面で同じ空間を共有している雰囲気とは勝手が変わり、オンラインのコミュニケーションに戸惑いを覚えるのは大人でもあることですから、不思議ではありません。先生側からの声がけや、オンラインへの“慣れ”で解消していくことは可能です。

ここまで上げてきたデメリットは比較的多くの子どもが感じることですが、2~4のデメリットについては、一転してメリットになるタイプの子もいます。たとえば、教室で他人の言動や周囲の環境に気を取られがちな子にとっては在宅で画面に集中できることはメリットになります。

一般的な見解は把握しつつも、メリット・デメリットは子どもによってさまざまだという点も忘れてはいけません。また、2~4のデメリットは複数回経験すると慣れて解消されることも多々ありますから、1回の様子だけで判断せず1カ月程度は様子をみて、合う・合わないの判断をすればよいと思います。合わないと判断した場合は、授業のスタイルや使用するデバイス選びなど、よりその子に合った環境を探る必要があるでしょう。

オンライン学習時代の注意点

これからの時代、オンライン学習の機会はますます増えていきます。そのなかで親子で意識してほしいことを2点お伝えしたいと思います。

1.手書きをする

授業や教材がオンライン化すると、キーボードで入力することが増えたり、画面上で文字をタッチ(選択)するなど自分で手書きすることが減るかもしれませんが、メモやノートは意識して手書きすることをおすすめします。

入力やタッチと違って手書きは、抽象的な見方の訓練になるからです。教育改革でも話題になる「答えのない問い」に挑む力、今の時代で求められている能力、それを得るには思考力が不可欠です。

思考力を高めるには、具体的な点だけをみるのではなく、より全体をとらえた抽象的な考え方、ものの見方が必要です。手書き体験を重視することは、その一助になると考えます。

2.リアルな体験、偶然の出合いを重視する

オンライン情報の多くは、個人のユーザーの嗜好に合わせて最適と思われるものを表示するレコメンド(おすすめ)機能が働いています。便利な反面、自分の嗜好に関連しない新しい情報とは出会いにくいとも言えます。それは今後オンライン学習に多く触れていく子どもにも言えることです。オンライン以外の情報の選択や、偶発的な出合い・体験を意識的に大切にする必要があると思います。簡単なことからいえば、電子辞書だけでなく紙の辞典も使う、ネット書店だけでなく街の書店や図書館に行くなどです。機械的におすすめされた情報以外に、自力でいつでも情報にアクセスできる感覚を持ってください。

メリット、デメリット、注意点、いろいろと述べてきましたが、オンラインを不信も過信もしないことが重要です。メリット部分はしっかり活用し、デメリットを理解して、より子どもの成長につながる付き合い方をしていきたいものですね。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

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