中学受験 家庭でできる「思考力型問題」対策|親子のための、「探究」する中学受験
近年増えている「思考力型入試」。注目されているのはわかっているけど、思考力を伸ばすにはどうすればいいの? そんなギモンを抱える方も多いでしょう。今回は家庭でできる思考力型問題の対策を中心に、知窓学舎の矢萩先生にうかがいました。
世相の変化が「思考力型問題」を求めている
適性検査型、問題解決型、アクティブラーラング入試など、いわゆる思考力型入試と呼ばれるような試験は年々増加しています。この傾向は、教育改革の指針に基づいているのはもちろん、Withコロナ時代でさらに後押しされる様相があります。コロナウイルスの影響で、オンライン入試の可能性が語られるようになったからです。
オンライン入試になると暗記した知識を問うような問題は、言ってしまえば簡単にカンニングできます。調べれば正解を書けてしまいますからね。その観点でみると、一問一答のような従来のやり方ではオンライン試験は難しいだろうと容易に想像できます。
一方、思考力型の試験、たとえば「何を調べてもいいから、自分の意見を書いてね」といった試験では、その場でみな平等に解答の定まっていない問いに立ち向かうので、公平性を保ちやすいだろうと考える学校が増えているのです。今後、より論述的な問題にしたり、口頭試問や面接を重視したり、定性的な評価をする方向にシフトしていくだろうと思います。
「答えのない問い」を考える練習をしよう
こうした世相もふまえると、中学受験シーンで今まで以上に思考力型問題に対応できる力、すなわち「答えのない問い」に向き合う力は重要になってきます。とすれば当然「答えのない問いを考える」という練習が必要です。しかしこれは、教科書ではなかなか学べないのが現状です。
そこで私がよく使うモデルに未来予測があります。たとえば、「来年のオリンピックはどうなってると思う?」「コロナ禍の影響は3カ月後はどんなふうになると思う?」など一緒に考えるんです。
未来のことは誰にもわからないですから、正解がわからない、答えのない問いになります。それを真剣に考えて、論理的に人に伝わるように話してみる。なぜ自分はそう思うのか、どんなことを根拠にしたのかなど、説得力を持って相手に伝えられるように取り組んでもらいます。
「なるほどキミはそういうことを前提に、こう考えるんだね」と、相手が納得するように説明できることが非常に大事です。継続していくと、論理的思考力を鍛えることができます。
家庭でできることは「論理的な対話」
思考力型問題のような「答えのない問い」には、自分なりに考えて相手に伝わるように表現することが練習になる。それを家庭で実践するには論理的に対話することです。
時事問題でも、私が知窓学舎でしているような未来予測でも、なんでもいいので、知らないものや、わからないものをみたときに、自分はそれをどう考えるかを子どもに話させるのです。家族でテレビをみながらでも、ごはんを食べながらでもいいです。
ここで重要なのは、「論理的に語れているか」という点です。論理的というと、「科学的根拠を示さなくてはいけないのでは?」と考える方も多いのですが、そうではありません。専門的知識はなくても大丈夫。
「前提はこう」→「だからこう考える」というつながりがあるとことが大事です。
以下の会話例を見てください。
例)
――さっき、空を飛ぶ人を見たんだよ! なんでだと思う?
返答A「……それは、山奥にまだ発見されていない翼を持った人類がいて、環境破壊の影響で里に出てくるしかなかったのかもしれない……」
返答B「うーん。なんとなく飛んで見えたんじゃないのかな」
極端な例ではありますが(笑)、返答Aは「発見されていない人類がいた」という前提を示したうえで、「環境破壊の影響で出てくるしかなかった」と推測しています。科学的ではないかもしれませんが、前提をふまえれば十分に論理的なのです。
一方で、返答Bには根拠がありませんから、論理的に思考していないといえます。「見間違いだ」という結論自体は共感しやすいのですが、よく考えれば人が飛んでいるように見えるのは、すごい見間違いです。曖昧なうえに飛躍が大きいんですね。共感している側も論理的に考えられていません。
簡単に言うと、話のつながりに曖昧さや矛盾がなく、違和感を覚えなければOK。そう意識するのが論理的思考のポイントです。
普段から親子で論理的な話ができると、どう話せば人に納得してもらえるか、どんな言い方だと伝わらないのかがわかってきます。もちろんそれは論述試験にも活きてくることです。
日々親子で対話することをぜひ楽しんでみてください。そうすれば「答えのない問い」に対して自分の考えを述べることは難しくなくなり、思考することを楽しめるようになると思います。それが、思考力問題対策になるのです。
これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験』
※記事の内容は執筆時点のものです
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