連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験 家庭でできる「思考力型問題」対策|親子のための、「探究」する中学受験

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2020年7月02日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

近年増えている「思考力型入試」。注目されているのはわかっているけど、思考力を伸ばすにはどうすればいいの? そんなギモンを抱える方も多いでしょう。今回は家庭でできる思考力型問題の対策を中心に、知窓学舎の矢萩先生にうかがいました。

世相の変化が「思考力型問題」を求めている

適性検査型、問題解決型、アクティブラーラング入試など、いわゆる思考力型入試と呼ばれるような試験は年々増加しています。この傾向は、教育改革の指針に基づいているのはもちろん、Withコロナ時代でさらに後押しされる様相があります。コロナウイルスの影響で、オンライン入試の可能性が語られるようになったからです。

オンライン入試になると暗記した知識を問うような問題は、言ってしまえば簡単にカンニングできます。調べれば正解を書けてしまいますからね。その観点でみると、一問一答のような従来のやり方ではオンライン試験は難しいだろうと容易に想像できます。

一方、思考力型の試験、たとえば「何を調べてもいいから、自分の意見を書いてね」といった試験では、その場でみな平等に解答の定まっていない問いに立ち向かうので、公平性を保ちやすいだろうと考える学校が増えているのです。今後、より論述的な問題にしたり、口頭試問や面接を重視したり、定性的な評価をする方向にシフトしていくだろうと思います。

「答えのない問い」を考える練習をしよう

こうした世相もふまえると、中学受験シーンで今まで以上に思考力型問題に対応できる力、すなわち「答えのない問い」に向き合う力は重要になってきます。とすれば当然「答えのない問いを考える」という練習が必要です。しかしこれは、教科書ではなかなか学べないのが現状です。

そこで私がよく使うモデルに未来予測があります。たとえば、「来年のオリンピックはどうなってると思う?」「コロナ禍の影響は3カ月後はどんなふうになると思う?」など一緒に考えるんです。

未来のことは誰にもわからないですから、正解がわからない、答えのない問いになります。それを真剣に考えて、論理的に人に伝わるように話してみる。なぜ自分はそう思うのか、どんなことを根拠にしたのかなど、説得力を持って相手に伝えられるように取り組んでもらいます。

「なるほどキミはそういうことを前提に、こう考えるんだね」と、相手が納得するように説明できることが非常に大事です。継続していくと、論理的思考力を鍛えることができます。

家庭でできることは「論理的な対話」

思考力型問題のような「答えのない問い」には、自分なりに考えて相手に伝わるように表現することが練習になる。それを家庭で実践するには論理的に対話することです。

時事問題でも、私が知窓学舎でしているような未来予測でも、なんでもいいので、知らないものや、わからないものをみたときに、自分はそれをどう考えるかを子どもに話させるのです。家族でテレビをみながらでも、ごはんを食べながらでもいいです。

ここで重要なのは、「論理的に語れているか」という点です。論理的というと、「科学的根拠を示さなくてはいけないのでは?」と考える方も多いのですが、そうではありません。専門的知識はなくても大丈夫。

「前提はこう」→「だからこう考える」というつながりがあるとことが大事です。

以下の会話例を見てください。


例)

――さっき、空を飛ぶ人を見たんだよ! なんでだと思う?

返答A「……それは、山奥にまだ発見されていない翼を持った人類がいて、環境破壊の影響で里に出てくるしかなかったのかもしれない……」

返答B「うーん。なんとなく飛んで見えたんじゃないのかな」


極端な例ではありますが(笑)、返答Aは「発見されていない人類がいた」という前提を示したうえで、「環境破壊の影響で出てくるしかなかった」と推測しています。科学的ではないかもしれませんが、前提をふまえれば十分に論理的なのです。

一方で、返答Bには根拠がありませんから、論理的に思考していないといえます。「見間違いだ」という結論自体は共感しやすいのですが、よく考えれば人が飛んでいるように見えるのは、すごい見間違いです。曖昧なうえに飛躍が大きいんですね。共感している側も論理的に考えられていません。

簡単に言うと、話のつながりに曖昧さや矛盾がなく、違和感を覚えなければOK。そう意識するのが論理的思考のポイントです。

普段から親子で論理的な話ができると、どう話せば人に納得してもらえるか、どんな言い方だと伝わらないのかがわかってきます。もちろんそれは論述試験にも活きてくることです。

日々親子で対話することをぜひ楽しんでみてください。そうすれば「答えのない問い」に対して自分の考えを述べることは難しくなくなり、思考することを楽しめるようになると思います。それが、思考力問題対策になるのです。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

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