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中高一貫校は大学受験に有利? 大学受験予備校で見た中高一貫生のリアル

2021年4月13日 清水まちこ

「いま勉強を頑張らせれば、大学受験で有利になるはず」こうした理由で中学受験を検討する家庭は多いと思います。たしかに、これはひとつの考え方です。しかし、本当に有利に働くのでしょうか? 大学受験予備校で中学受験経験者に進路指導をおこなってきた私の経験をもとに、中高一貫校に進学した生徒と大学受験のリアルをお伝えします。

中高一貫生に予備校は不要?

中高一貫校に入学したら予備校に通う必要はないのでは、と思う方もいるかもしれません。中学受験での塾代や、中学入学後の高額な学費をはじめ、受験をしていない家庭と比べて経済的負担が大きいぶん、「大学受験だけは学校の授業だけで乗り越えてほしい……」と考える親御さんも多いことでしょう。しかし実際には、難関大学への進学率が高い学校も含め、大学受験予備校には中高一貫生も一定数在籍しています。では、どのような理由で予備校に通っているのでしょうか。

授業のスピードに追いつけなくなったから

そもそも「中高一貫校が大学受験に有利」といわれている理由のひとつが、大学入試対策を前提としたカリキュラムを組んでいることです。特に難関大学への合格実績を“売り”にしている学校では、公立高校が高3の12月末までに終了させる範囲を高2終了時までに終わらせていることも一般的。高3からは、大学受験を意識した演習中心の授業を1年かけておこないます。

もちろん、こうした実践演習の場を多く経験できることは中高一貫校のメリットのひとつです。しかし途中で授業について行けなくなったり、苦手科目でつまずいてしまったりしたときは、その進度の速さが逆効果になってしまうことも。そのため授業のスピードに追いつけなくなった生徒のなかには、予備校を利用し、授業で理解できなかった部分を補っている生徒が少なくないのです。

浪人してでも行きたい大学があるから

中高一貫生は中学受験を経験しているぶん、基本的には学習意欲が高いこともあり、現役で合格した大学に進学するよりも「浪人してでも行きたい大学」への進学を優先させる傾向があります。なかには中高6年間は部活や学校行事に全力を注ぎ、「大学受験の勉強は卒業後に専念する」と決めている生徒も。そしてこうした生徒の多くは、浪人時代の1年間をひとりで集中して勉強するのは難しいと判断し、より良い勉強環境を求めて予備校を利用しているのです。

希望進路と校風にミスマッチを感じたから

高校に入って志望する大学を考え始めたとき、通っている高校がその大学を目指す校風ではなかったことに後から気づくケースもあります。たとえば次のようなケースです。

  • 自分の高校からその大学に進学した先輩がいないので、学校の先生に指導経験がない
  • 一般選抜で難関大学に進学したいが、通っている高校は「指定校推薦」で大学に進学する生徒が多い。そのため定期テストの後も勉強を続ける自分は浮いた存在になってしまった

こうした校風や雰囲気に入学してから気づき、指導経験が豊富な講師や、同じ志を持った受験仲間を求めて予備校に通う生徒も少なくありません。

中高一貫校の生徒はここが強い

これまでお伝えしてきた理由を見てもわかるように、中高一貫生が予備校に通うことは珍しいことではありません。一方で、中高一貫生が大学受験で強いのも事実。大学受験予備校の現場で指導に携わってきた私の経験から、中高一貫生のふたつの強みをお伝えします。

受験に対する自発的な姿勢

中高一貫生は、中学受験ですでに“競争”を経験しています。そのため良い意味でプライドが高い生徒が多く、「絶対にこの大学に行きたい」「最低でもこのレベルの大学には行きたい」といった自分のラインを持っている生徒が多い印象です。こうした自発的な意識や姿勢は中高一貫生ならではの強みといえます。

大学受験の情報が多く手に入る

中高一貫校は進学指導の回数が多いこともあり、「共通テストとは何か」「受験科目は文系と理系でどのように違うか」といった大学受験の基礎知識をしっかりと身につけている生徒が多い印象もあります。そのほかにも「〇〇大学に合格した先輩はこうやって成績を上げたらしい」「□□大学は難関だけど、この学部だけ偏差値が低くて狙い目」など、大学受験を実際に経験した先輩の体験談や、一般的にはあまり知られていない情報に校内の会話のなかで触れる機会も多いようです。

中高一貫生の「落とし穴」

しかし中高一貫生には強みがある一方で、陥りやすい「落とし穴」もいくつか存在します。対策も合わせて紹介しますので、参考にしてみてください。

「校風=自分の進路」と思い込んでしまう

通っている学校の校風に自分の進路が影響されてしまう中高一貫生は少なくありません。たとえば医学部への進学実績が高い中高一貫校に入学した生徒のなかには、「自分も医学部を目指さなくてはいけない」と強く思い込んでしまう生徒も。「学校で成績の良い人が目指している大学だから」という理由だけで進路を決めてしまったことで、自分の学力と合わずに途中で伸び悩み、運よく合格しても「自分が本当に行きたかった大学ではなかったかも……」と後になって思い悩んでしまう生徒もいます。

中高一貫校は生徒の意識が高く、大学受験の情報も多く入ってきます。だからこそ周りに流されず、「自分が本当に進みたい道はどこなのか」と冷静に考えることが欠かせません。その意味で、保護者を含む周りの大人のサポートが必要となる場面も出てくるでしょう。

一方で自分の目標をしっかりと決めることができれば、その中高一貫校に通う多くの生徒が目指す進路とは違ったとしても、自信を持って勉強に打ち込めます。そして志高く勉強を一緒にがんばる仲間は、大きな心の支えとなるはずです。

自己管理に自信がない

中学受験では「さぼらないように見張る」「ストレス発散に付き合う」といったことをはじめ、保護者が手助けしてあげることは多いものです。しかし大学受験では、保護者がつきっきりで勉強を見てあげることはできません。

ここで気をつけたいのが、「受験勉強の管理は誰かにやってもらうのが当たり前」「自己管理は自分にはムリ」と子供が思い込んでしまうこと。こうした子は、大学受験の勉強期間をムダに過ごしてしまうこともあります。一方で「中学受験では親に助けてもらったけど、大学受験では自己管理も勉強だと思って取り組もう」と子供自身が考えることができれば、もともとの学習意欲も相まって、受験勉強の期間を有意義に過ごすことができるでしょう。

まとめ

中高一貫校の生徒が大学受験で有利、と言い切ることはできません。しかし「周りの環境」、そして「自分自身の経験」の両輪がうまくかみ合えば、大学受験を乗り越える大きな力が生まれるのも事実です。今回お伝えした中高一貫校のリアルをもとに、中学入学後のイメージを膨らませていきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

この記事の著者

大学受験予備校でこれまで約1000人の生徒の進路指導を担当。私立文系から国立理系、医学部、難関国立など担当生徒の幅は多岐にわたる。現場の経験を生かし「生徒、保護者、教育関係者を助ける情報をわかりやすく提供すること」をモットーに発信活動をおこなっている。