連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

優秀な子ほど「ガリ勉」ではない理由 ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年5月17日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

「勉強をとにかく頑張れば成績が上がる」
「難関校を目指す子は遊びの時間を捨てて勉強している」

こうした固定観念を持っていませんか? これらの特徴を持つ子は典型的な「ガリ勉」タイプですが、彼らの多くはがんばっても中位程度の成績止まり。一方で成績が良い子ほど、実はガリ勉タイプではありません。

勉強以外の時間を大切にしている

私はよく、塾(進学個別桜学舎)に通う子どもたちに「勉強のできる友達ほどガリ勉じゃないよね?」と聞きます。このときほとんどの子がうなずきますが、これは私自身の経験からも実感していることです。事実、塾に通いながら水泳や野球に打ち込んでいたり、自宅でYouTubeばかり見ているのに偏差値が70近かったりする子もいるなど、優秀な子ほど勉強以外の時間を楽しく過ごしています。

彼ら・彼女らの多くは、どうすれば泳ぎが速くなるか、どうすればバットを力強く振れるか考えたり、YouTubeを見ながらも色々な知識に触れたりして“夢中になれるひととき”を大事にしています。こうした時間を小さいうちから大切にしておくと、「できないことをできるようにするにはどうしたらいいか」「新しい知識を手に入れるにはどうすべきか」といった感覚や習慣が身につきます。そして、そうした“コツ”を自然と勉強に活かせていることで、ほかの子よりも勉強の成績が良いのです。

一方でガリ勉の子は、「少しでも上を目指すために勉強しなさい!」「勉強しないからこんなにひどい点数をとるのよ」といったように、親からプレッシャーをかけられていることが少なくありません。この場合、叱られた子は親に怒られないためだけに勉強をするようになります。言われたことをやっていればいい、テストで丸がつけばいい ――。もちろん、こうした低い志で勉強していても成績は伸びません。これが、どれだけ勉強していてもガリ勉の子の成績が上がっていかない理由です。

「土壌づくり」がポイント

繰り返しにはなりますが、成績が伸びている子は“勉強以外”の時間を大切にしています。そしてこうした子の親御さんは、学びの基礎を身につけさせる意味でも「遊びの時間」を意識的に与えていることが多いですね。

これは、農家が土壌づくりに時間をかけることに似ています。土を掘り起こし、柔らかくした上で種をまき、そこに栄養や水をたっぷりと与えていく ――。土壌の大切さを知っているからこそ、そこに時間をたっぷりかけています。一方で子どもをガリ勉にしてしまう親御さんの多くは、「遊び」という名の土壌づくりには目もくれず、カチカチの土の上にいきなり種をまいてしまっていることがほとんど。「早く成長してほしい」と祈っても芽が出ないのは、ある意味当然ですよね。

今からでも遅くない

ここまで読んで「うちの子を勉強だけに縛りつけてしまっているかもしれない……」と思った方もいるかもしれません。でも、今からでも大丈夫。具体的には、次のようなことに取り組んでみてください。

  • 「社会科見学」に出掛ける
  • 勉強内容に変化をつける

「社会科見学」に出掛ける

まずおすすめなのが、家族で「社会科見学」に出かけること。実際に自分の目で確かめると、知識と情景がリンクして勉強内容が定着しやすくなるだけでなく、勉強以外で学びを深める機会をつくると「学ぶ楽しさ」に子ども自身が気づけるからです。たとえば鎌倉まで足を運んでみると“気づき”がたくさん手に入ります。鶴岡八幡宮はどうして建てられたのか、材木座(ざいもくざ)海岸はどんな形なのか ――。こうした好奇心が育まれるのも社会科見学のメリットです。

ただし、コロナ禍では旅行は難しいかもしれません。この場合には、「実際に見てみることの大切さ」だけでも繰り返し子どもに伝えてあげてほしいと思います。

勉強内容に変化をつける

学ぶ楽しさを子どもが感じるためには、勉強のなかに変化を持たせてあげることも大切です。たとえば算数が苦手な子に計算問題だけをやらせ続けても、おそらくほんの少し点数が上がるだけ。計算が多少早くなったとしても、どんな場面でその計算を使うかわからなければ問題を解く力は上がっていきません。このように、同じ勉強を延々と続けて気持ちがマンネリ化してしまうのも、ガリ勉の子が陥りがちなパターンのひとつ。言葉を選ばずにいうと、苦手なことを延々とやらされ続けるのは「罰ゲーム」ともいえます。

このとき大事なのは、勉強内容に変化をつけること。算数でいえば、計算問題と文章題を子どもにバランスよく取り組ませるのも良いですね。「文章題を解くときに計算練習がこうやって役立つ」という実感、つまり「これとこれがつながるんだ!」といった感覚は、まさに勉強の楽しさに直結するものです。そして多くの優秀な子は、こうした感覚を自分で身につけ、あらゆるものに“接点”を見出していきます。

これは、遊びでも一緒。日常のちょっとしたことが勉強につながり、逆に勉強で学んだことが生活のなかでどう生かされているのかを知っていく ――。こうした思考が自然と磨かれているからこそ、ガリ勉のように勉強に時間をひたすらかけなくても効率的に勉強に臨むことができ、いわゆる「できる子」になっていくのです。

広い視点で成長を捉えよう

私は、中学受験がその子の一生を決めるとは思っていません。ただし、ガリ勉の子が大人になって青春を振り返ったときに「勉強しかしてこなかったな……」と後悔してしまうのであれば、それはとても悲しいことだと思うのです。もちろん、受験突破には人並み以上の勉強量は必要ですが、親がただ闇雲に勉強させたからといって成績は伸びるものではありません。むしろ子どもにとって勉強が苦痛なものになってしまえば、それは子どもの成長にとって逆効果になってしまいます。

私が長いこと塾で教えていて思うのは、子どもは本当にありとあらゆるものから知識を吸収し、そこに「学びの楽しさ」を見出していくということ。マンガでも、スポーツでも、習い事でも、YouTubeでも、その世界に夢中になり、没頭するなかで「自分で考える力」も生まれていきます。それは、傍から見れば「遊び」に思えるかもしれません。しかしそれが、後々の勉強に大きくつながることは珍しくないのです。無意味な「ガリ勉」ではなく、意味のある勉強をする子に育てるためにも、親御さんとしてはもう少し広い目線で子どもの成長を捉えてあげられると良いですね。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。