連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中堅校志望の悩み[4]大手塾に面倒見の良さを求めて大丈夫? ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年4月27日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

中堅校受験で抱えがちな悩みを取り上げ、解決策を紹介していきます。今回は次のふたつのケースについて見ていきましょう。

・大手塾に面倒見の良さを求めて大丈夫?
・子どもがスマホばかりいじっていて……

大手塾に面倒見の良さを求めて大丈夫?

【ケース1】大手塾に通う小5の親御さん
小4から大手塾に1年間通わせてきましたが、塾で受ける模試の偏差値はいつも35前後。先生の授業やクラスメイトとのやり取りが楽しいらしく、子どもは不満なく塾に通っていますが、授業の内容を全く理解できていません。教室長に何度か相談しているのですが、状況は改善せず、自宅で勉強する様子もありません。そもそも、大手塾で子どもに細かなケアを求めるのは間違いなのでしょうか?

正直、面倒見の良さは期待できない

結論からお伝えすると、大手塾に面倒見の良さを求めるのは正直難しいと思います。多くの大手塾は基本的には難関校合格に向けたカリキュラムが組まれているので、そもそも授業に全くついていけない子を想定していないからです。そうした子が大手塾で見違えるように成績がアップする、というのもあまり聞かない話ですね。

ただし今回のケースの子のように「偏差値35」とはいっても、大手塾が実施する模試は問題が難しい上に、優秀な生徒が多く受験しますから本来の実力よりも偏差値が低く出やすい傾向があります。一方で首都圏模試を受験すれば、偏差値45くらいを出せる実力をすでに持っているようにも見受けられます。そのためこのまま大手塾に通い続けていても、偏差値45~50くらいの学校に合格できる可能性はあるでしょう。どこのレベルの学校を受験するかにもよりますが、偏差値45~50くらいの学校で後悔しないのであれば、このまま大手塾に通い続けるのもひとつの手といえます。それでも面倒見の良さを第一に考えたいのであれば、個人塾などへの転塾も視野に入れてみてください。

チェーン店と個人店

私自身、個人塾(進学個別桜学舎)を経営していますが、大手塾と個人塾の違いは「チェーン店」と「個人店」に例えるとわかりやすいかなと思います。

大手塾は、一定水準の美味しい料理がどこでも味わえるチェーン店。ただしマニュアル以外の臨機応変な対応はできないので、ステーキが硬くて噛み切れないときに「この肉をミンチにしてハンバーグにしてくれませんか?」とお願いしてみても、それは無理な話。

一方で個人店の場合には、その場でステーキを細かく切って「特別メニュー」をつくってくれるようなところも少なくありません。その場所でしか料理を食べられなかったり、なかには「うちのステーキが気に食わないなら出ていってくれ!」と怒り出すオーナーに出くわしたりするかもしれませんが……、基本的にはお客さんの要望に合わせた対応が可能な点が個人店のメリットです。

塾選びの「選球眼」を磨く

大手塾から個人塾に転塾させる場合には、たくさんの個人塾を訪れてみてください。大手塾よりはたしかに面倒見は良いですが、一方で個人塾といってもその中身は千差万別。転塾後に後悔しないためにも、塾選びの“選球眼”を親御さんが磨いておく必要があります。

個人塾は大手塾と比べると広告を出していなかったり、塾長の顔が見えなかったりするところもあるため、まずはホームページを調べたり、ママ友から情報収集をしたりするなど、できるだけたくさんの塾をリストアップしてみてください。そのうえで、一つひとつの塾に足を運び、「塾長」と面談してみましょう。

個人塾に転塾を考える場合、まず面談で感じ取ってほしいのは塾長の理念です。塾の理念に共感できるかどうかは、塾との相性を図るうえでかなり大切なポイントです。たとえば、親御さんのなかには「絶対に100点を取るまで帰さない!」という塾の理念を「面倒見のいい塾だ」と考える方もいれば、「それは厳しすぎる……」と心配になる方もいるかもしれません。

このように塾の理念、そして塾長の考えに合うかどうかは人それぞれです。「面度見が良いから個人塾」とは安易に考えず、まずはわが子に合うか、安心して子どもを預けられるか、といった判断軸をもとに個人塾の“面談回り”をしてみましょう。たくさんの塾を調べていくうちに、塾との相性の良し悪しが見えてくるはずです。

子どもがスマホばかりいじっていて……

【ケース2】「勉強よりスマホ」の小6の子をもつ親御さん
子どもがスマホばかりいじっていて心配です。しょっちゅうネットを見ていたり、アプリで遊んでいたりして自宅学習に身が入っていない気がします。「勉強ちゃんとやってるの?」と聞いても「やってる」の一点張り。しかし、成績はあまりよくありません。スマホを解約したら成績が伸びるかな、と少し考えたりもするのですが……。中学受験勉強を続けながら、スマホと上手に付き合う方法があれば教えてください。

スマホ解約は、かなりの悪手

親からスマホを強制的に取り上げられた場合、その子どもがそのあと勉強にやる気を出すことはまずありません。子どもからすると「親がまた怒った」と考えるだけで、結局は自分のなかで何が悪いのかを考えないので状況は改善しないからです。むしろ親子の関係が悪化するだけなので、スマホ解約は「最後の手段」として取っておくべきです。

もちろん家庭の方針により、「教育的な視点からどうしてもスマホを取り上げる必要がある」と考えた場合には、解約は仕方のないこと。ただしスマホを没収する場合でも、まずはいくつかのステップを踏んでほしいのです。

親は、子どもの一歩先を行く

この記事を読んでいる親御さんも、子どもだった頃に親の目を盗んで友達と遊びに行ったりしたことはないですか? 親にウソをつくことも、ある種の子どもらしさ。親としては「子どもってそういうもんだよね」と開き直ることも大切です。その上で子どもがウソをつくことを見越して“ワナ”を張り、「すべてお見通しだよ」と考える余裕を持ってみてください。

たとえば今回のスマホの話であれば、次のようにスマホを没収するまでの「ストーリー」を考えてみても良いでしょう。

1、スマホを触る時間を制限
2、「1」が守れなければ親がスマホを預かり、再び時間を制限
3、「2」も守れなければ没収(スマホを隠す)

なかにはスマホの隠し場所を突き止め、親に隠れてスマホを触ってしまう子もいるかもしれません。そうしたときはスマホを解約するのもOK。子どもからすれば、「自分が約束を守らなかった」という気持ち、「ウソをついて親をだました」という後悔を感じているので、いきなり没収するよりも大きく反省します。

リビング学習もひとつの手

ちなみに親が子どものそばにいれば、子どもがこっそりとスマホを触るのは難しいものです。そこでおすすめなのは、リビングで勉強させること。その上で勉強の合間にスマホを触っても良い時間を設けるのも、気分転換につながるのでおすすめです。たとえば親がスマホを預かって「50分勉強 → 10分休憩」という学習サイクルをつくってみても良いかもしれませんね。どうしても勉強中にスマホを渡すのが不安な場合には、ゲームアプリの入っていないパソコンやタブレットなどを渡すことも考えてみましょう。この場合、休み時間になったら子どもにスマホを渡してリフレッシュさせるという習慣をつくり、メリハリのある家庭学習をするのも効果的です。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。