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天皇の仕事とは? 中学入試で問われやすい「国事行為」の内容をスッキリと理解しよう

2022年7月07日 ゆずぱ

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日本国憲法では、天皇の地位は「日本国の象徴」や「日本国民統合の象徴」とされています。象徴とは「目に見えないものを“見えるもの”で表すこと」という意味ですが、象徴だからといってただ存在するだけでなく、実は天皇は多くの仕事を抱えています。

中学入試でもガッツリと出題されている分野ですが、その仕事内容が多岐にわたることから覚えにくく、苦手な子も多いでしょう。そこでまずは天皇の仕事を分類しつつ、一つひとつの事柄をわかりやすく解説していきます。では、さっそく見ていきましょう!

天皇の仕事

天皇はあくまでも“象徴”のため、国の政治に直接は関与できません。国をあげておこなわれる行事では大切な仕事を担っていますが、その仕事も内閣の助言と承認がなければ実施できません。つまり、天皇自らの権限でできることはほぼないのです。

そのなかでも、天皇がおこなう仕事は「国事行為」と呼ばれます。宮内庁のホームページを見ると13種類もの仕事がリストアップされていますが、これだけだと仕事のイメージは少し湧きづらいですよね……。

仕事を分類してみよう

天皇の仕事内容を効率よく覚えるには、まずは中学入試によく出題されているものをしぼり込むのがおすすめです。そのうえで、次のように分類するとすっきりと覚えられますよ。

※国事行為の一部を抜粋

1、「任命系」の仕事

任命とは「その役職に就くことを命じる」という行為のこと。内閣トップの内閣総理大臣や、裁判所トップの最高裁判所長官の任命は天皇の重要な仕事のひとつです。ただし、あくまでも“任命する”という行為のみ。天皇には誰を役職に就かせるか決める権限はなく、意見を述べることもできません。

2、「知らせる系」の仕事

憲法や法律といった「国の決まり」の公布も天皇の仕事です。公布とは「広く知らせる」という行為のこと。総選挙の公示も仕事のひとつです。ちなみに公示も「広く知らせる」という意味の言葉です。

先ほど紹介した任命系の仕事と同じく、公布・公示に関しても仕事内容としては“知らせる”のみで、法律をつくることや、議員を選ぶ選挙などに直接関与することはできません。

3、「召集・解散系」の仕事

召集とは、国会議員を集めて議会を開くように命じること。解散とは、簡単に言うと国会議員全員を“クビ”にすることです。いわゆる「国会の召集」と「衆議院の解散」を指します。どちらも国家にとって重要なイベントですが、天皇が担当するのは形式的・儀礼的な行為のみです。

一歩踏み込んで理解しよう

仕事内容を3つに分類したことで、天皇の仕事についてのモヤモヤは晴れましたか? それでは、それぞれの仕事内容についてもう少し深いところまで理解しつつ、中学入試にも役立つ知識を覚えていきましょう!

「任命系」の仕事

天皇ができるのは、あくまで「任命」のみです。つまりその職につくことを命じる、という形式的・儀礼的な行為だけなのです。実際には内閣総理大臣(内閣のトップ)は国会が指名し、最高裁判所長官(裁判所のトップ)は内閣が指名しています。

ちなみに内閣も裁判所も、自らの組織のトップを自分たちで選ぶことはできません。なぜなら、そこには「三権分立」という仕組みが存在するからです。

三権分立
国会、内閣、裁判所がそれぞれ監視し合い、特定の場所に大きな権力が集中し過ぎないようにする仕組みのこと。内閣のトップ、そして裁判所のトップを指名する際も、権力が分散するように工夫されている。

「知らせる系」の仕事

公布・公示という、似たような言葉を先ほど紹介しましたが、実は「告示」という言葉も存在します。公布・公示・告示ともに「知らせる」という意味を指す言葉ですが、使い方で混乱する場合には次の図を使って整理しましょう。

法律や条例が施行されるまで

法律や条例などが成立した場合は、法律で定められた期間内に、天皇による「公布」によってその旨が国民に知らされます。そしてその後、法律が実際に効力を持ち始めることを「施行(しこう)」といいます。

総選挙が行われるまで

衆議院の解散が決まったり、衆議院や参議院の任期が近づいてきたりしたら、天皇が選挙の「公示」をおこない、国民に広く知らせます。そしてその後、それぞれの選挙が実施されます。ちなみに天皇が公示をおこなうのは、全国規模でおこなわれる衆院選や、参院選の選挙のみです。

地方選挙が行われるまで

地方議会の選挙(地方選挙)に関しては、各自治体の選挙管理委員会による「告示」によって住民に知らせます。告示も「広く知らせる」という点では公示・公告と同じ意味ですが、告示は主に地方選挙の際に使われる言葉で、対象とする選挙によって使い分けがされています。

「召集・解散系」の仕事

天皇の国事行為は「形式的・儀礼的なもの」と説明してきましたが、召集・解散系の仕事はまさにその代表的な仕事です。たとえば国会に関しては、どの国会も天皇が召集をおこないます

国会の種類に関しては、次の3つを押さえておきましょう。

国会の種類

<通常国会>
毎年1回、1月に召集される国会。主に予算についての話し合いがおこなわれる

<臨時国会>
内閣が必要と認めたとき、または衆議院か参議院の総議員の4分の1以上の要求があったときに召集される国会

<特別国会>
衆議院を解散した後、衆議院議員総選挙から30日以内に召集される国会。内閣総理大臣の指名などをおこなう

ちなみに参議院には解散がなく、衆議院にだけ解散があります。では、衆議院を解散させる権限は誰が持っているのでしょうか?

天皇はあくまでも形式的・儀礼的に衆議院を解散させるに過ぎないため、実際に解散させる決定権を持っているのは内閣です。一方の国会は、内閣に対して「内閣不信任決議」をすることでその職を辞めさせる権限を持っています。

つまり、内閣・国会ともに“最終兵器”を持っていて、お互いの権力が暴走しないように抑止関係が成り立っているのです。こちらも「三権分立」の観点で押さえておきましょう。

中学入試のポイント

天皇の仕事は多岐にわたりますが、その全ての仕事に共通することは、天皇には何かを決定する権限はなく、あくまで形式的・儀礼的な行為のみを担っているという点です。そしてその仕事には、元(もと)となるイベントや、実際に権限を持つ組織が存在します。

たとえば内閣総理大臣の任命は天皇の仕事ですが、その元となるイベントは「国会による内閣総理大臣の指名」です。衆議院の解散は天皇の仕事ですが、その元となるイベントは「内閣による衆議院の解散」です。

中学入試では、国事行為と、その元となるイベント・権限はセットでよく出題されているので、下の表を使って整理しておきましょう。

まとめ

天皇はさまざまな仕事をしているため、うまく整理できずに混乱してしまう子も多いかもしれません。そこでおすすめなのが、今回紹介したように、まずは似たような仕事をまとめたうえで全体像を押さえておくことです。

国事行為は形式的かつ儀礼的な行為で、その行為の背景には元となるイベントや、実際に権限を持つ組織が存在します。中学入試でも問われやすい箇所のため、それぞれをセットで押さえていきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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この記事の著者

小学生の息子と娘をもつ2児の父親。外資系IT企業でシステムエンジニアの仕事をしながら、2人の子供の中学受験を経験。親としての受験活動のなかでの気づきや実践している工夫に加え、自らの失敗談からの役に立つ情報をブログでも発信しています。著書に『中学受験 偏差値に効く究極サポート10の実践』(エール出版社)。

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