
【算数】中学入試頻出の「計算の工夫」を紹介! まずはこの5つをマスターしよう
中学受験生と接していると、「計算問題は確実に正解したいけど、間違えてしまう……」といった声をよく耳にします。計算間違いの原因はさまざまですが、その原因のひとつとして挙げられるのは、問題をそのまま計算してしまっていることです。これを解決するには、「計算の工夫」が必要です。
5つの工夫
計算の工夫といっても色々な種類があるので、何から習得していけば良いかわからない子も多いかもしれません。そこで、中学入試の算数を長年指導してきた経験から、中学入試で頻出の計算問題、そしてそれらを解くときに役立つ工夫を紹介します。
中学受験生が押さえておきたい計算の工夫
①結合法則
②分配法則
③小数と分数の変換
④キセル算
⑤等差数列の和
(おまけ)ケタ数が多い場合の工夫
工夫を覚える前に意識したいこと
この先で色々な計算の工夫を紹介していきますが、工夫を覚える前にぜひやっておいてほしいことがあります。それは「数に慣れる」ことです。
たとえば、「6」という数字を見たときに何を思い浮かべますか?
「1+2+3=6」や「2×3=6」など、さまざまな計算式は思いついたでしょうか。このように「6」といっても色々な形に表現できるんですね。
大切なのは、数字をそのまま見るのではなく、「色々な表現ができないかな?」と考えてみることです。遊び感覚で良いので、違った角度から数字を見る練習を積んでいきましょう。すると計算に強くなるだけでなく、計算の工夫も理解しやすくなります。
①結合法則
結合法則は、簡単にいうと「“まとめる”ための計算手法」です。少し難しく言うと、「計算する順番が違っても、計算結果は同じになる」という法則のことです。
では次の問題を例に、結合法則の考え方を説明します。
3.14×7.5+3.14×5.4-3.14×2.9=?
こうした問題を見たとき、何も考えずにかけ算をしてしまうとケタが多くなって、計算間違いをしがちです。そこでこの問題の場合には、まずは「3.14」でまとめるとすっきり計算できます。
3.14×(7.5+5.4-2.9)
=3.14×10
=31.4(答え)
バラバラに計算するよりも、まとめられる部分はまとめてから計算したほうが早く正確に解けます。日頃から「同じ数字がないかな?」と意識しつつ、問題を見ていきましょう。
②分配法則
分配法則は、ザックリ言うと「結合法則とは“逆“の法則」のことです。たとえば、次のような計算問題を解く場面でその力を発揮します。
999×234=?
この式は筆算をしても解けるかもしれませんが、ケタが大きいので、できればやりたくないですよね。こうしたときに分配法則を使えないかを考えます。
この問題の場合、まずは「999」に注目してみます。999は、あと「1」を足せば「1000」になる数字ですよね。そこで「999=1000-1」と置いて、上の計算式を次のように書き換えてみます。
(1000-1)×234=?
すると、1000と1に「234」をそれぞれかけるだけの、単純なひき算にすることができました。
234000-234 = 233766(答え)
中学受験の算数で分配法則を使う場面は多くはありませんが、覚えておいて損はありません。知っておくと、いざという時に役立つこともあるでしょう。
③小数と分数の変換
小数と分数が混じった計算は、見るだけでイヤになってしまう子も多いです。しかし、こうした計算も「小数を分数に直す」ひと工夫をするだけでラクラク解けるようになります。
では、次の問題を解いてみましょう。
0.25×\(\frac{4}{7}\)+\(\frac{8}{9}\)×0.375-\(\frac{4}{15}\)÷1.4=?
この問題を解く際に、「0.25を\(\frac{25}{100}\)に、0.375を\(\frac{375}{1000}\) に……」と直していくと、計算や約分が面倒になってしまいます。そこでおすすめなのが、0.25や0.375、1.4など、中学受験で頻出の小数を分数に変換したものを先に覚えておくことです。
ちなみに、0.25=\(\frac{1}{4}\)、0.375=\(\frac{3}{8}\)、1.4=\(\frac{5}{7}\)です。上の計算式に当てはめてみると、次のように分数だけの式ができあがります。
\(\frac{1}{4}\)×\(\frac{4}{7}\)+\(\frac{8}{9}\)×\(\frac{3}{8}\)-\(\frac{4}{15}\)÷\(\frac{5}{7}\)
=\(\frac{1}{7}\)+\(\frac{1}{3}\)-\(\frac{4}{21}\)
=\(\frac{6}{21}\)
=\(\frac{2}{7}\)(答え)
中学受験で頻出の分数を、以下に挙げておきます。これらはできる限り覚えて、使いこなせるようにしておきましょう。
④キセル算
キセル算とは、次のような計算式のことを指します。
\(\frac{1}{(2×3)}\)+\(\frac{1}{(3×4)}\)+\(\frac{1}{(4×5)}\)+\(\frac{1}{(5×6)}\)+\(\frac{1}{(6×7)}\)=?
この問題は通分して解くこともできますが、少し面倒です。しかし、次の性質を使うと簡単に計算できます。
キセル算の性質(例)
\(\frac{1}{(2×3)}\)=\(\frac{1}{2}\)-\(\frac{1}{3}\)
この性質を使うと、はじめの式を次のように変換できます。
\(\frac{1}{2}\)-\(\frac{1}{3}\)+\(\frac{1}{3}\)-\(\frac{1}{4}\)+\(\frac{1}{4}\)-\(\frac{1}{5}\)+\(\frac{1}{5}\)-\(\frac{1}{6}\)+\(\frac{1}{6}\)-\(\frac{1}{7}\)=?
この式をよく見てみると、同じ数の分数の足し引きがあることに気が付きますね。それらを計算すると0になり、次の式だけが残ります。
\(\frac{1}{2}\)-\(\frac{1}{7}\) = \(\frac{5}{14}\)(答え)
キセル算の性質を使うことで、はじめと終わりの分数だけを計算するだけで答えを求めることができました。
「キセル」って何?
キセルとは、「タバコを吸うために使う道具」のこと。葉っぱを入れる“頭の部分”と、吸い口の“おしりの部分”が金属のつくりになっている道具で、昔は日常的に使われていました。そして「キセル算」でも、“最初”と“最後”に注目します、そのため、この計算方法に「キセル」という名前が付けられたんですね。
▼キセル(イメージ)
⑤等差数列の和
単純なたし算の問題であっても、計算の工夫で早く簡単に解けることがあります。たとえば、次の式を計算してみましょう。
8+15+22+29+36+43+50+57+64=?
このたし算をよく見ると、7ずつ増えていることがわかりますよね。こうした場合には、「等差数列の和」を使うのがおすすめです。
等差数列の和
=(はじめの数+終わりの数)✕数字の個数÷2
等差数列の和を使うと、先ほどの式を次のようにすっきりできます。
(8+64)×9÷2 = 324(答え)
このように一見すると面倒なたし算の計算に思えても、少しの工夫をするだけで早く解くことができます。同様の問題に出くわしたときは、まずは注意深く問題を見て、数字に「規則性」がないかを確かめるようにしましょう。
【おまけ】ケタ数が多い場合の工夫
最後におまけとして、ケタ数が多い計算を解くときに使える工夫を紹介します。
たとえば、次のようにケタ数が多くなりそうな計算は、丁寧に解いたとしても間違えてしまいそうですよね。
2022×2022-2021×2021=?
もちろん、それぞれ丁寧に筆算していくのも手ですが、実は下の図のように「四角形の面積」で考えると解きやすくなります。
この計算の答えは、上の図形の斜線の部分です。そして、斜線の部分をふたつに分解してみると次のように計算できます。
1×2022+(2022-1)×1 = 4043(答え)
図形に表すことで、筆算よりも簡単に計算できました。このように、ケタの多いかけ算をするときは「四角形の面積」で考えてみると簡単に解けることがありますよ。
計算の工夫を意識して練習していこう
計算の工夫は、覚えるだけでは役に立ちません。普段から計算練習をするときに、「何か工夫はできないかな?」と考えてみて、そして実際に使っていくなかで役に立っていくものです。はじめは時間がかかっても構いません。毎回の計算練習の際にしっかり意識していけば、いずれ自分のものになります。ぜひ頑張って、習得してみてくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
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