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[社会・公民]直接請求権とは? 内容を整理・分類してスッキリと理解しよう!

2022年6月10日 ゆずぱ

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社会で学ぶ公民分野は、地理や歴史に比べて学習期間が短い傾向にあります。法律用語をベースとした“硬いイメージ”の用語も多く、苦手意識をもつ子は少なくないでしょう。特に地方自治法という法律の学習で出てくる「直接請求権」が理解できず、困っている子は多いのではないでしょうか。小学校の教科書にも直接請求権の手続き方法などは書かれていますが、お世辞にもわかりやすいとはいえませんよね……。

そもそも法律は、すべてを暗記しようとすると苦痛に感じてしまいます。しかし、どんなに難しい言葉で書かれている法律も、同じ人間が議論したことをまとめたものに過ぎません。一から丁寧に理解していけば意外と頭に入ってきます。この記事でも、まずは直接請求権について理解しておきたいポイントを紹介しつつ、少し複雑な「成立条件」、そして「直接民主制と間接民主制の違い」などについて丁寧に解説していきます。

直接請求権のポイント

直接請求権とは、住民が政治に直接参加できる仕組みのことです。選挙に当選していなくても、政治に“口を出せる”制度ともいえますね。

中学受験のテキストでは直接請求権について簡単な表や文章でまとめられていることが多いですが、図解にするとさらに理解しやすくなります。重要なポイントを1枚の図にまとめると、次のとおりです。

※署名数などに関しては一部例外あり

直接請求権を理解するためには、次の3つのポイントを押さえておくことが欠かせません。では、ひとつずつ見ていきましょう!

直接請求権のポイント

  1. 住民が参加できる3つのこと
  2. 住民の声を実現する3つのステップ
  3. 内容の“重さ”で手続きが決まる

ポイント[1]住民が参加できる3つのこと

直接請求権は、住民が政治に直接参加できる仕組みのことです。具体的には次のようなことに参加できます。

住民が参加できること

  • 何かについて調べてもらうこと
  • きまりをつくってもらうこと
  • 誰かをクビにしたりすること

何かについて調べてもらうこと

住民は、何かについて調べてもらうことができます。「住民としてあたりまえの権利」という位置づけではありますが、自分たちが納めた税金がどんな使われ方をしているかなどについて、住民は徹底的に調べてもらうことができるんですね。硬い言葉では「監査(かんさ)」と呼ばれます。

きまりをつくってもらうこと

住民は「こんなきまりをつくってほしい!」ということを考え、その地域の首長に提出できます。そもそもきまりをつくるのは政治家の仕事ですが、住民も考えることができるんですね。ちなみに、地方のきまりは「条例」と呼ばれます。また、すでに存在する条例を改正したり、廃止したり、といったことにも住民は関わることができます。

誰かをクビにしたりすること

住民は、市長や町長、議員などをクビにしたり、選挙で選ばれた議員が集まる「議会」そのものを解散させたり、といったこともできます。たとえば住民が選挙で選んだものの、実際に公務を任せてみたらこの人は信頼できない……という場合に、その人をクビにするように求めることができるんですね。

ポイント[2]住民の声を実現する3つのステップ

政治家ではない住民も、政治に参加できる ――。これが直接請求権の本質ですが、もちろん住民の声がいきなり政治に反映されるわけではありません。単なる思いつきだけで政治が動かないようにするために、特に条例の制定や改廃、解職を求めるときなどは、次の3つのステップを踏まないと住民の声は反映されない仕組みになっています

住民の声を実現するステップ

  1. 発議
  2. 署名を集める
  3. 決定する

ステップ1:発議

直接請求権は、「発議」からはじまります。そもそも政治に参加するためには、それなりの根拠が必要です。きまりをつくりたいのであれば、その内容についての根拠、誰かをクビにしたいのであれば辞めさせたい理由、などが必要なんですね。

ステップ2:署名を集める

ひとりの住民の思いつきできまりがつくられたり、誰かをクビにできたりしたら、政治や、住民の生活は大変なことになります。そこで必要になるのが「署名を集める」というステップです。署名(署名運動)とは、意見に賛同してくれる人(氏名)を集める行動のことです。

ステップ3:決定する

署名を集めて終わりではなく、最後に大きな関門が待ち受けています。それは「本当に政治に反映させて良いのか?」について審査するステップです。重大な施策については住民投票を実施したり、議員投票をしたりした後に、ようやく住民の声が政治に反映されます。

ポイント[3]内容の“重さ”で手続きが決まる

直接請求権は、内容の“重さ”によって手続きが変わります。理解するのが少し難しいポイントなので、順を追ってお伝えしていきますね。

まず住民は、大きく次の3つに参加できましたね。

住民が参加できること

  • 何かについて調べてもらうこと
  • きまりをつくってもらうこと
  • 誰かをクビにしたりすること

調べてもらうだけであれば、政治に大きな影響はありません。つまりこれは“軽い要求”といえます。一方で、選挙で選ばれた人をクビにするのはかなり“重い要求”です。

このように、要求の重さには違いがあるため、それぞれの要求を実現するための手続きにも次のような違いがあります

↑要求が軽い

■何かについて調べてもらうこと
……「有権者の50分の1以上の署名」が必要

■きまりをつくってもらうこと
……「有権者の50分の1以上の署名」と「議員の過半数の合意」が必要

■誰かをクビにしたりすること
……「有権者の3分の1以上の署名」と「住民投票で過半数の合意」が必要

↓要求が重い

ここまでお伝えした内容について、改めて以下の図で復習しておきましょう。

※署名数などに関しては一部例外あり

直接請求権の3つの知識

直接請求権について理解は深まりましたか? では次に、中学受験に対応する力をつけるうえで大切な、直接請求権に関わる3つの知識を押さえていきましょう。

直接請求権の3つの知識

  • 地方自治の用語
  • 直接民主制と間接民主制
  • 具体的な事例

関連知識[1]地方自治の用語

直接請求権は、地方自治の実現のために認められている権利です。地方自治とは、都道府県や市町村など、住民に“近い場所”でおこなわれる政治を示す言葉です。

地方自治に関しては、次の5つの用語をしっかり押さえておきましょう。

地方自治体(地方公共団体)

地方自治体とは、主に都道府県市町村のことです。東京都や北海道、大阪府や千葉県、横浜市や阿武(あぶ)町、檜原(ひのはら)村などのことですね。「地方公共団体」と言われることもありますが意味は同じです。

条例

守らなくてはいけないルールは「法」と呼ばれますが、国全体のルールは「法律」、特定の地方自治体だけに適用されるルールは「条例」と呼ばれます。たとえば、鹿児島県の奄美(あまみ)市には「ヤギを放し飼いにしてはけない」という条例があります。これは生態系や環境を守るためにつくられた、その地域だけに通用するルールです。

ちなみに法律に反する条例はつくることができませんが、これは言い換えると、国が決めたルールの範囲内であれば条例をつくれる、ということを意味します。

首長

首長とは、そこに住む住民によって選挙で選ばれた、地方自治体の代表者のことです。

<豆知識>
首長は「しゅちょう」と読みますが、「くびちょう」と読む人をテレビなどで見かけたことがあるかもしれません。「くびちょう」は正式な読み方ではありませんが、視聴者が「市長(しちょう)」と聞き間違えないようにするために、あえてそう読んでいることがあります。

リコール

リコールとは、首長や議員をクビにしたり、議会を解散したりすることを求める行動のことです。難しい言葉では「解職請求」といいます。

ちなみに企業が販売した製品に欠陥が見つかった場合に、それを回収して無償で直すこともリコールと呼ばれます。混同しないように注意しましょう。

有権者

有権者とは、政治に参加する権利をもつ人のことです。多くの国では選挙で代表者を選び、その代表者が政治をおこなう方式を採用していることもあり、「選挙権をもつ人」を示す際にも使われます。

選挙権とは、代表者を選ぶ選挙に参加できる権利のことです。日本では「満18歳以上の日本国民」であることが投票の条件ですが、年齢と国籍以外に特に条件は定められていません。

関連知識[2]直接民主制と間接民主制

直接請求権の本質ともいえるのが、民主主義です。ここでは、混同しやすい「直接民主制」と「間接民主制」について、それぞれの違いを理解していきましょう。

直接民主制

“直接”という名前がついているように、直接民主制は「国民全員が政治に直接参加する」という方法です。国民であれば誰でも発議でき、全員で議論して、全員で決めるという仕組みですね。ひとことで言うと「全員参加の政治」です。

直接民主制のポイント
国民が発議することは「イニシアチブ(イニシアティブ)」と呼ばれます。そして、国民全員でおこなう国民投票は「レファレンダム」と言います。このふたつは、直接民主制を理解するうえで特に重要な言葉です。

間接民主制

間接民主制とは、代表者が政治をおこなう方式のこと。ひとことで言うと「選挙で選ばれた代表者による政治」です。

先ほど紹介した「直接民主制」は国民全員の意見を反映できることがメリットですが、たとえば日本には1億2000万人以上が暮らしています。さすがにこの人口だと、すべての人の声を集めることはできません。そこで、日本を含めた多くの国では「間接民主制」を採用しています

ところで、直接請求権は住民であればだれでも発議でき、場合によっては住民投票で何かを決めることができる制度でしたよね。これは、まぎれもなく「直接民主制」です。しかし、日本では「間接民主制」を採用しています……。

直接民主制と、間接民主制。ふたつの言葉が出てきて混乱してしまう場合には、次のように理解しておくことをおすすめします。

直接請求権とは?
間接民主制のなかに位置する、部分的な直接民主制のこと

日本では、国の政治も、地方の政治も、基本的には間接民主制でおこなわれています。しかし「ここぞ!」というときには住民の声を直接聞く直接民主制も認めている、というイメージをもっておくと良いでしょう。

関連知識[3]具体的な事例

具体例をもとに、直接請求権の知識を定着させていきましょう。

人口が10万人で、有権者が8万4000人の町をイメージしてみてください。

まず、有権者であればだれでも発議できます。そして市のなかに原子力発電所(原発)をつくる計画が持ちあがり、とある住民が発議したとしましょう。

住民からの発議
「原発をつくるかどうかは、住民全員の意見を聞くべきだ! だから『原発をつくるべきかは住民投票で決める』という条例をつくろう!」

これは「条例をつくる」という直接請求にあたるので、発議の次に必要なのは有権者の50分の1以上の署名です。この町の有権者は8万4千人なので、1680人以上の署名が必要ですね。

署名が集まると、議会で多数決が取られ、その条例をつくるべきか最終審議がおこなわれます。そして議会で過半数の賛成が得られれば、この条例は成立します

同様の事例としては、次のようなものも挙げられます。

そのほかの事例

  • 市町村を合併するか住民投票で決める
  • 米軍基地の移転を住民投票で決める
  • 川に可動堰(かどうせき)をつくるか住民投票で決める
    ※可動堰:水の流れを調整するために河川や水路などにつくられる、可動式の構造物のこと

まとめ

公民分野には“硬い”法律用語が出てくるため、苦手意識をもつ子は少なくないでしょう。ですが、法律が成立した根拠なども一緒に学習することで理解しやすくなります。特に直接請求権は「手続きの条件」がわかりにくいかもしれませんが、情報を整理しつつ押さえていけば心配いりません。今回お伝えした内容を振り返りつつ、理解を深めていきましょう!

※記事の内容は執筆時点のものです

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この記事の著者

小学生の息子と娘をもつ2児の父親。外資系IT企業でシステムエンジニアの仕事をしながら、2人の子供の中学受験を経験。親としての受験活動のなかでの気づきや実践している工夫に加え、自らの失敗談からの役に立つ情報をブログでも発信しています。著書に『中学受験 偏差値に効く究極サポート10の実践』(エール出版社)。

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