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「21世紀型スキル」とは? 中高の学校教育はどのように対応している?

2018年5月02日 朝倉浩之

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最近、子供たちを取り巻く環境が目まぐるしく変わってきています。なかでも情報化の波は、社会の変化のスピードをどんどん加速させていっています。この情報化社会のなかで生きるためのスキルとして「21世紀型スキル」が今注目を集めています。

21世紀型スキルとは?

「21世紀型スキル」というのは、高度に情報化された社会、そして広がりを続けている国際社会で活躍することができる人材となるために必要なスキルの総称のことです。この「21世紀型スキル」を伸ばすための教育を「21世紀型教育」といいます。

国際団体の「21世紀型効果測定プロジェクト(ACT21s)は「21世紀型スキル」の定義を次の4つのカテゴリーに分類しています。

[1]思考の方法

創造性と革新性、批判的思考・問題解決・意思決定、学習能力・メタ認知(自分自身を客観視すること)

[2]仕事の方法

コミュニケーション、コラボレーション(チームワーク)

[3]学習ツール

情報リテラシー、ICT(情報通信技術)リテラシー

[4]社会生活

市民性(地域および地球規模)、生活と職業、個人的責任および社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む)

中高の学校教育はどのように対応しているのか?

従来の学校教育では教師が生徒に説明をしていく、いわゆる講義形式が中心でした。しかしこのような講義形式では生徒は受け身の姿勢になってしまい、なかなか集中力を保っていくのは難しいものです。そこで、学校現場ではさまざまな工夫を凝らして授業が展開されています。とくに今、多くの学校で取り入れ始められているのが「グループ形式の授業」です。

たとえば英語の授業であれば、今まで教師が一方的に説明をしていた部分を生徒同士で話し合いをさせていく形式です。「重要な構文でどの部分が主語になり、どこの部分を修飾するから、こういう意味になる」などというようなことを話し合う時間をとります。そして各グループの代表が自分たちのグループの意見をみんなの前で発表します。

ほかのグループはそれを聞いて、自分たちのグループとの比較をするため生徒同時の交流や意見交換が盛んになっていきます。これにより生徒たちが卒業してからも必要な上記「21世紀型スキル」の[1]思考の方法、[2]仕事の方法、[4]社会生活の能力を養っていくことができます。

また、[3]の学習ツールの情報リテラシーについても実践している例をご紹介します。

東京都立両国高校の2017年度文化祭では「スマートフォンの使い方と勉強時間」という内容で1年生が展示発表を行っていました。そのなかでも特に印象的だったのが「スマートフォンを使った時間以上に必ず勉強する」「夜10時以降は利用を控える」という内容です。

インターネットには感覚を麻痺させてしまう巧妙な罠がたくさん仕掛けられています。ついSNSやゲーム、動画視聴など、時間を忘れて夢中になりがちです。そのことを生徒たちが自分たちで理解し、実践するようにしている様子が伝わってくる素晴らしい展示発表でした。

同様にほかの都立高校の生徒からも「勉強に集中するためにスマートフォンにロックをかけている」といった声もありました。つい動画サイトを見過ぎてしまったりすることを防止するなど、生徒自身での工夫もなされています。

そのほか、中学校では多くの学校で「職場体験」が実施されています。この「職場体験」では主に「21世紀型スキル」のカテゴリー[4]の内容を実践的に学ぶことができます。希薄になりがちな地域社会とのかかわりを持つことにより「市民性」を、将来の仕事を実際に体験するなかで「生活と職業」を、仕事上の判断を通して「個人的責任および社会的責任」を。この3つの観点でそれぞれ学びを得ることができるはずです。生徒自身が仕事場での体験を通し、将来の進路を考えていくことにもつながり、「21世紀型スキル」を高めることが狙いとされています。

※記事の内容は執筆時点のものです

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