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子どもに記述力を身に着けさせるにはどうしたらいいの?|低学年のための中学受験レッスン#14

専門家・プロ
2023年5月15日 宮本毅

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「記述力」

多くの受験生とその保護者の方を悩ませる言葉ですね。

  • いったいどうしたら記述力が身につくのか。
  • 中学受験やそれ以降の人生において、記述力ってどんなときに役立つのか。
  • 低学年のうちから家庭でできる記述力のトレーニング法とは。

今回は、「記述力」をテーマに詳しくお話していきたいと思います。

記述力とは作文力!

まず「記述力」とは何なのか、ということなのですが、これは読んで字のごとく「文を作る力」となります。

何はともあれ語彙力がモノをいう

ここでいう「文」とは、主語述語が1組の短文から原稿用紙何枚分にもわたる超長文まで、その長短にかかわらず、日本語で構成されたすべての文章を指します。

そのため「記述力」を身につけるには、たくさんの日本語(言葉)を知っていないといけません。

たとえば「かわいい」という言葉がありますね。よくJKたちが「なにこれか~わ~い~い~」「ばちくそかわいい」などと言っているあれです。

この「かわいい」という言葉にもさまざまな言いかえがあります。

「可憐」「愛おしい」「愛くるしい」「愛愛しい(あいあいしい)」「麗しい」「佳麗」「見目好い」「眉目良い」「チャーミング」などなど。多種多様な「かわいい」が存在します。

こうしたたくさんの言葉を知り、使い分けて書くことで、文章に深みが増します。

普段の会話でも主語・述語を意識すること

主語述語の対応をきちんと理解することも大切です。

国語の苦手な小学生に、記述問題を解かせると、よく主語と述語がねじれた文章を書いてきます。

たとえば「受粉のために虫たちに密を吸わせる行為」という解答が模範解答である記述問題があったとします。

これを「受粉のために虫たちが密を吸わせる行為」と書いてしまう生徒は非常に多い。本来は省略されている「花」ないし「植物」が主語なのに、誤って「虫たち」を主語にした構造の文章を書いてしまうのです。

日本語というのは「主語を省略できる言語」なので、普段の生活の中で主語を使用して話すことがあまりないんですね。

そのため、主語と述語がどう照応するのかの訓練が足りず、受け身をうまく使えなかったり、必要な主語を飛ばした文章を書いてしまったりするのです。

対策としては、日々の会話の中でも、主語が明示された日本語を子ども達に使わせることが重要でしょう。

一生付いて回る「記述力」というスキル

ではそもそも、「記述力」はどういった場面で役立つのでしょう。

中学受験に限らず、最近は高校受験でも大学受験でも「記述問題」が数多く出題されるようになってきました。それも国語のみならず理科や社会でも、答えを文章で解答させるタイプのものが増えています。

大学生になったら課題論文をたくさん提出しなくてはいけませんし、就活をするにも作文が必要です。社会人になっても企画書作成など、人生ありとあらゆる場面で「文章を書く」というシーンが出てきます。

「記述力」は絶対に身につけておかねばならないスキルです。

記述力アップに向けたトレーニング法

では具体的にどのようにすれば「記述力」は身につくのでしょう。

この問いに関しては、私がもう40年以上も訴え続けていることがあります。

それはズバリ「書写」です。すなわち「文章を写すこと」です。

「書写」で国語のセンスを鍛えよう

私は小学生のころ、母から「書写」を毎日の課題として出されていました。日々一定量の「書写」をやらないと、夕ご飯にありつけませんでした。

その内容は主に学校の教科書1ページの書き写しでしたが、これが子どもにとってはなかなかにハードで、毎日悶絶しながら書写を続けていました。

「主語述語のきちんと整った美しい文章を真似して書き写す」

たったこれだけの行為を続けた結果、私は主語述語のねじれなどに敏感になり、常に美しい文章を書こうとするようになりました。

主語述語がねじれていたら、パジャマを後ろ前に着てしまったときのように「気持ち悪い」感覚に襲われるようになりました。

そして何より、国語の成績は常によかったと記憶しています。国語は特別な勉強をすることなく、好成績を維持できていました。社会や理科の記述問題でも苦労したことはありません。

おかげさまで、中学受験では国語も理科も社会もほぼ記述問題のみの私立武蔵中学に合格でき、大学受験では当時後期試験であった論述試験で一橋大学に合格し、大学3年に上がるときには論文試験で社会学部への転学部を果たしました。現在ではこうして文章を書いて、収入を得ています。

すべて私に「書写」という過酷な課題を与え続けてくれた母のおかげです。今となっては感謝しかありません。

書写をはじめるなら、美しく正しい文章を選んで

じゃあ具体的に何を書写したらよいのか。

それほど長い文章でなく毎日続けられるものといって真っ先に思いつくのは、朝日新聞の「天声人語」ですね。程よい長さで毎日続けられて、しかも新聞掲載なので日本語は美しく主語述語にねじれなどない正しい文章です。これに勝る書写の課題はありません。

しかし、低学年のお子さんに、「天声人語」は少々難しく感じられるかもしれません。朝日小学生新聞には「天声こども語」が掲載されています。もちろん、こちらでもいいでしょう。

もちろん、かつての私のように、教科書を書き写すのでもいいでしょう。これなら、学年に応じた難易度なので、内容が難しすぎるということも決してありません。

これらを書写する専用のノートも1冊200円程度で手に入りますので、スタートするのにも負担はほぼありません。

ひとつ騙されたと思って「書写」にチャレンジしてみませんか?

まとめ

寺子屋でも松下村塾でも、学習は基本講義に加えて「写本」すなわち本を書き写すことだったそうですので、やはり「書写」というのは重要な学習法のひとつだと考えられます。

先達たちの例に倣うという意味からも、書写を学びに取り入れて、記述力を鍛えていただくことを強くおススメしたいと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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